CFD解析による空力シミュレーションまで駆使してエアロ製作!
エンジンは6.2LのV8ユニットを搭載!
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1982年に日本で発売された三菱スタリオン。北米では1983年からクライスラーに供給され、ダッジやプリムス、クライスラーの各ブランドから『コンクエスト』の車名で販売されていた。今回紹介するのは1988年式のクライスラー・コンクエスト。オーナーであるジョン・ラゾラック三世は、かなりユニークな経歴を持つ人物だ。
出身は東部だが、サンフランシスコの大学に学んだ後、デザイナーとしてGMに入社。当初はデトロイトの本社に勤めたが、現在はデザインセンターのあるロサンゼルス近郊に移り、自動車に限らない様々なプロダクトの先端的デザインを仕事としている。いわばアメリカ自動車業界のエリートとも呼べるジョンだが、趣味はゴルフでもヨットでもなく、クルマだ。
16歳のときに中古で手に入れたコンクエストを大事に所有しているだけでなく、ドリフトやジムカーナ、タイムアタックなどに適したレーシングマシンへと絶え間なくモディファイしてきた。しかも、ほとんど全てのカスタムやファブリケーションを自らの手で行っている。
当初、コンクエストに載せたエンジンは5代目コルベットなどに搭載されたLS1型5.7LのV8 OHVだった。2JZなど日本製のモーターも好みというが、少ない投資でモアパワーを得る上ではアメリカンV8が有利なため、現在はさらに排気量とパワーをアップした6.2LのLS3へと換装。
マネジメントにはPSI ConversionのLS3用スタンドアローンハーネスを使用。トランスミッションは現行カマロなどと同じ、トレメック製6速MTのTR6060を採用する。エンジンとともに吸排気にはK&Nのカスタムインテークやジョン自作のエキマニを装備。各部の熱対策としてDEI製のゴールドヒートシールディングも施工された。
そして、それらの載せ換え作業もジョン自らが自宅のガレージで実施。重量配分を考慮して、エンジンを通常より6インチ後方にマウントするため、バルクヘッドやフロアなどを加工し、シフターを後方へ移設するキットも自作した。カスタムメイドのプロペラシャフトも導入し、素人技とはとても思えない自然なインストールを実現している。
またある時、低速でのフロントのグリップ不足に悩まされていたジョンは、太いタイヤを履かせるためにワイドボディ化を決意。そのプロセスがまた独特だ。ゲームクリエイターの友人から譲り受けたデジタルスキャナーを使って車体の3Dデータをコンピュータに取り入れ、デジタルレンダリングでオリジナルのワイドフェンダーをデザイン。
なんとCFD解析による空力シミュレーションも行った上で、自らクレイモデルを作製した。それをもとに石膏で型を取ったあとファイバーグラスを積層したFRP製のワイドフェンダーを製作。量産性は別として、やっていることは完全にエアロメーカーと同じだ。本業が本業だけに、フィッティングも含めた完成度の高さはさすがと言うほかない。
インストールしたホイールはCCWの鍛造3ピース『Classic』で、サイズは18インチのフロント11.5J、リヤ13Jとなる。組み合わせるタイヤはアゼニスRT615Kで、前後ともに315/30-18と極太だ。コンクエストのステアリングはもともとボールナットだが、ラックアンドピニオンに交換した上、カスタムメイドのナックルも装備し、操縦性と信頼性を高めている。
インテリアも凄まじい。エンジンを車体中央寄りにマウントするため、ダッシュボードもアルミやカーボン、スエードなどの素材を使って完全に作り変えた。センターコンソールに収まるのはサムスンのタブレットPCで、『TORQUE』というアプリで各種走行データを表示する。油圧のハンドブレーキシステムもジョン自ら作製した。
ボディ剛性を引き上げる10点式のカスタムロールケージが覆い尽くす。じつは、このバーデザインにもデジタル技術が活用されているというから驚かされる。
ここ数年、ジョンが最も力を入れているのが、全米の各コースにおけるタイムアタックと、OPTIMAバッテリーが冠スポンサーを務めるストリートカーレース“Ultimate Street Car Association(USCA)”への参戦だ。
USCAはオートラリーやオートクロスなど複数のトラック競技における成績に加えて、車両のデザインやエンジニアリングの評価も加味して順位を競うユニークなレース。ジョンはカリフォルニア州フォンタナにあるAuto Club Speedwayで開催された今年の最終戦で見事3位に輝いた。汗とオイルにまみれながら、自らの才能と知見を活かし、クルマを作る側面と走らせる側面をともに追求するジョン。「まだまだやるべきことが山積みだよ(笑)」。彼の探求の旅は終わらない。
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