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「ホンダの時代が来た」 CEOが語るEVの未来 世界で存在感を示せるか

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「ホンダの時代が来た」 CEOが語るEVの未来 世界で存在感を示せるか

ホンダ:大胆だが難解な自動車会社

ホンダほどわかりにくく、難解な自動車会社があるだろうか。驚異的な野心と技術革新を持ちながら、業界のトレンドに乗り遅れ、刺激に欠ける無名のモデルを生産することもある。

【画像】「0」から始まるホンダのEV開発【ホンダ・サルーン・コンセプトを写真で見る】 全14枚

初の四輪車を発売してわずか1年でF1に参戦し、NSXでフェラーリに挑み、シビック・タイプRでホットハッチの限界を押し広げ、高級ジェット機まで作ってしまう大胆な会社だ。

しかし、ジャズ(日本名:フィット)やe:Ny1のような明らかに平凡なクルマを生産し、ディーゼルエンジンやSUVに出遅れ、ハイブリッド車やEVでも初期の技術的優位性を無駄にした。

英国と欧州では、2000年代半ばの年間販売台数10万台以上のピークから遠く離れており、野心的なライバルに追い抜かれ、ゼロ・エミッション車が義務化されるような時代に必要なEVのラインナップも足りない。

EVに躊躇しているのは日本の自動車会社の中でホンダだけではないが、トヨタのようなライバルが持つ、真に市場を喜ばせる内燃機関モデルが欠けている。

「EVで遅れをとっているとは思わない」

そのもどかしいほど不均一なアプローチを例証しているのが、最近のEVへの取り組みだ。2020年に発売された「ホンダe」は、個性的なデザインで高い評価を得たが、航続距離の短さと価格の高さが災いし、すでに生産を終了している。

続いて、コンパクトSUVのe:Ny1が登場したが、ほとんどすべての面で輝きを放つことができなかった。米国では、唯一のEVとしてプロローグがあるが、ゼネラルモーターズ(GM)との提携の一環として米国企業のプラットフォームで生産されている。

しかし、充実したEVラインナップを持つ数多くのライバルが野心的な目標を後退させている今、ホンダは2040年までにバッテリーEVか水素燃料電池車のみを販売することを約束している。

計画では、新開発のバッテリー、小型電気モーター、効率重視の専用プラットフォームを採用した、少なくとも7車種の新ラインナップを中心に展開される。

このラインナップは今年初め、先鋭的な「サルーン(Saloon)」コンセプトで予告された。ホンダの原点に立ち返り、ゼロから新しいEVを創造するという意思を込めて「0シリーズ」と呼ばれている。

しかし、ゼロからEV開発をスタートさせ、この分野で大きくリードしているライバルを1世代で追い抜くことが現実的に可能なのだろうか?

その疑問を、ホンダの長年の研究開発部門トップであり、2021年にCEOに就任した三部敏宏氏にぶつけてみた。

「EVに関して遅れをとっているとは思わない」と三部氏は主張する。「(EVの)技術には長い間取り組んできたが、市場が利益を上げておらず、充電ステーションなどのインフラも整っていない時期に台数を増やすのはよくないと考えている」

「社会がアーリーステージから普及ステージに入りつつある今、EV戦略に投資する時期が来ている。EVを生産する技術がないわけではないし、他の自動車メーカーと世界で競争することもできる」

新しい生産方式に栃木で挑戦

基本的に、0シリーズはEV開発アプローチのリセットを意味するものかもしれないが、これまで培った自動車製造の知識をすべて捨て去るわけではない。

ホンダの電動事業開発本部長である井上勝史氏は、「我々がEVのトップランナーではないことは認識している。しかし、まったく別のものを作るのではなく、自動車における当社の基本的な強みをEV生産にも生かすことができると考えている」と語った。

新時代のEVに向けた土台作りの多くは、栃木県にあるホンダの四輪R&Dセンターで行われており、0シリーズに導入する新しい生産技術やアプローチを磨いている。

ここでのモットーは「薄く、軽く、賢く」である。具体的には、バッテリーを薄くすることで車高を低くしながらも広い室内空間を確保し、軽量化することで「スポーティ」なハンドリングと効率の向上を実現し、ソフトウェアベースのプラットフォームを採用することでコネクテッド技術と半自動運転を実現するというものだ。

ホンダの新しいアプローチを実際に目で見ることができるのが、現在広い作業スペースを占めている6000トンの巨大なメガキャストマシンである。

メガキャストは、1枚のアルミニウム材から大きな部品を一体成型する技術だ。

ホンダは当初、これをバッテリーパックに使用し、必要な部品点数を60点以上からわずか5点に減らすことで、車両重量を低減するとともに、生産にかかる時間と手間も節約する。さらに、大幅なコスト削減も可能になる。

メガキャストマシンは複雑で、ボバ・フェット(映画『スターウォーズ』シリーズに登場する賞金稼ぎ)が賞金首を捕まえて凍結させるために使うような分厚い金型プレス機と、ぐるぐる回転するロボットアームが一体化している。そのため、改良にはかなりの労力を要した。

栃木の開発ユニットが稼動したことで、0シリーズモデルの生産が行われる米オハイオ州の工場に6台のメガキャストを設置する作業がまもなく始まる。

「お家芸」のエンジンも諦めない

メガキャストを開発しているのはホンダだけではない。すでにテスラでも採用されており、トヨタとボルボも間もなく量産車に導入する予定だ。そのためか、記者が栃木を見学した際にホンダは、摩擦攪拌接合やCDC接合など他の技術にも力を入れていた。これらは剛性と効率性を高めるためのもので、マージナル・ゲインのマントラに当てはまる姿勢だ。

栃木で行われているのは、新しい生産方式の開発だけではない。ホンダは、内燃機関モデルと0シリーズを同じ工場で生産できるようにするため、新しい「フレックスセル」という方式で生産ラインを見直すことも検討している。

フレックスセルは、基本的に自動車の生産工程を1つの長いラインではなく、いくつかのセルに分割することで、需要が変動した場合に異なる車種間で生産能力を柔軟にシフトできるようにするものだ。

そのためには、部品や組み立てられた自動車を工場内でどのように運ぶか、高度なAIの知恵も必要となる。

0シリーズの一番槍となるのが、2026年に登場するサルーン(1月に開催されるCESでさらなる情報公開が期待できる)の量産モデルで、エントリーグレードの航続距離は480km以上で、「スポーティ」なハンドリングの実現を目指している。

ハードウェアと同様に重要なのが、新しいソフトウェア・プラットフォームだ。多くの自動車会社がそうであるように、ホンダも新機能や特性をアップデートできるソフトウェア定義型自動車に焦点を当てている。

ホンダの発想は大胆だ。例えば、ユーザーがVRヘッドセットを装着し、友人と一緒にバーチャル同乗走行できるようなシステムを構想している。

もちろん、自身のルーツを忘れたわけではない。さまざまな事業を抱えるホンダは、世界最大の内燃機関メーカーなのだ。

三部氏は、現在のハイブリッド車ラインナップが「好調」だとして、「2030年まで、これが当社の主要事業になると考えている」と述べた。

新開発のeアクスルは、一部の0シリーズとハイブリッド車で共有される。ホンダはすでに、プレリュードをハイブリッド専用クーペとして欧州で復活させることを決定している。

鍵を握る他社との提携関係

ホンダの将来計画でもう1つ重要な側面は、他メーカーとの提携である。現在は破談となった米GMとの提携のほか、ソニーと折半出資のEV合弁会社アフィーラがある。

同社が生産するクルマは0シリーズと同じプラットフォームを使用すると言われているが、ホンダはクロスオーバーを否定している。

「インテリアのユーザー・インターフェースはソニーの技術を使って開発されており、位置づけは異なる」と井上氏は言う。また、「価格は高くなると思う」としながらも、まだ何も確定しておらず正式なものではないと付け加えた。

しかし、最も注目すべき提携は、国内のライバルである日産と三菱との提携だ。詳細はまだ調整中だが、三部氏によればすでにソフトウェアの共同開発が始まっており、「その他のさまざまな分野」での協力についても話が進んでいるという。

ホンダは基本的に独自の道を歩んできたが、その歴史において数々の提携関係を築いてきた。最近の動きは、新技術の開発を加速させるという同社の本気度を示している。

もちろん、多くの自動車会社とは異なり、単一の分野で電動化に取り組んでいるわけではない。世界有数のバイクメーカーでもあり、パワープロダクツ、発電機、芝刈り機、ロボット、さらには高級ジェット機も手がける。

計画には、電動バイクや「ミニEV」(軽自動車に該当する四輪車を指すと思われる)で使用するためのモバイル・パワーパック(交換可能バッテリー)の開発も含まれる。

「2050年までに企業としてカーボンニュートラルを目指しているので、自動車だけでなく、バイクやパワープロダクツにもカーボンニュートラルの技術を導入していく」と三部氏は言う。

よくあることだが、中国は話が違う。ホンダは中国で2035年までにEVのみの販売を目指しており、2027年までに10車種のEV(そのほとんどが中国専用車)を発売する予定だ。

欧州で再び輝けるか

ホンダのブランド力は、本拠地である日本と米国では依然として強い。電動化を除いて、今後数年間の大きな課題は欧州市場での足場を回復させることだろう。

ここ数年、ホンダは為替レートの変動(英国とトルコにある欧州工場の閉鎖の要因)、米国と日本に重点を置いたラインナップ、欧州のディーゼル車離れなどの苦境に立たされてきた。

しかし、欧州での生産拠点がなくなったにもかかわらず、三部氏は「欧州では自動車文化が盛んであり、販売から撤退することはない」と主張している。

0シリーズはパワートレインだけでなく、欧州を視野に入れて開発されたという。

計画されている7車種すべてを各市場で展開するつもりはないため、欧州の嗜好に沿ったモデルも投入する余地が生まれるかもしれない。

「欧州で競争できるクルマをリリースしたい。市場の変化により欧州での生産は中止したが、今後もチャンスはあると信じている。将来的には、欧州で再び輝くことを目指す」と三部氏は語る。

ホンダはEVの世界で追い上げを図っており、これまでよりもはるかに厳しく多様な競争に直面している。

では、ホンダは再び存在感を発揮できるのだろうか? 確かに簡単ではないだろうが、決して不可能な夢ではない。

結局のところ、ホンダは自動車を作っていなかった状態からわずか2年でF1グランプリで優勝するまでになった会社であり、真に先駆的なゲームチェンジャーを開発してきた歴史がある。

おそらくホンダは、イノベーションを強いられたときに最高のパフォーマンスを発揮するのだろう。

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