年間全8戦中、前週開催の第7戦で2023年の雌雄が決したETRCヨーロピアン・トラック・レーシング・チャンピオンシップは、今季最終戦が9月30日~10月1日にスペインのハラマで開催された。すでに連覇で自身5度目のチャンピオン獲得を決めている王者ノルベルト・キス(レベス・レーシング/マン)が、土日双方で実施される予選の年間全セッションを制覇する偉業を達成。週末3勝を挙げ、今季勝利数を“22”まで伸ばす圧巻の強さを維持した。
シリーズ中盤の8月末からタイトな連戦のスケジュールで進んできたFIA ETRCの終盤戦は、このスペイン戦でフィナーレの週末を迎えた。すでにタイトルを決めたキスが「年間予選の全セッションを手中に収めるか」にやはり注目が集まるなか、まず土曜最初の計時予選ではプロモーターズ・カップ登録のルイス・レクエンコ(同名チーム/イベコ)が奮闘。
2名の総合初優勝者誕生の週末は、年間予選全制覇記録樹立のキスが5度目の王座を獲得/ETRC第7戦
前戦よりチーム・ハーン・レーシングからトラックをレンタルしての参戦となったが、その当事者である選手権6冠の“帝王”ことヨッヘン・ハーン(チーム・ハーン・レーシング/イベコ)にわずか0.2秒差、地元戦で気合の入るアントニオ・アルバセテ(Tスポーツ・ベルナウ/マン)に0.02秒差の3番手を記録するなど、総合勢に劣らぬスピードを見せる。
しかしスーパーポールに入ると状況は一転し、トップドライバーたちがさすがのポジションアップを披露するなかレクエンコは7番グリッドに後退。FP2でフロントを大破し、そこからのトラック再構築で5番手を獲得したサッシャ・レンツ(SLトラックスポーツ30/マン)や、4番手にハーンを従え3番手に飛び込んだカップ登録ジェイミー・アンダーソン(アンダーソン・レーシング/マン)、そして2番手アルバセテらを抑え切ったチャンピオンが、まずは第一関門をクリアしてみせた。
迎えたレース1はスタート直後の3つのコーナーで、都合2回のインシデントが発生。再三の仕切り直しが入る荒れたスタートとなるなか、キスは先頭走者の優位性も活かして独走状態へ。2015年に自身が記録していた年間最多記録の“19”を更新する、シーズン20勝の大台に乗せる初戦となった。
また、このヒートではカップ登録の選手権争いにも終止符が打たれ、今季は序盤戦から強さを見せてきたホセ・エドゥアルド・ロドリゲス(ロボコノーテ・レーシング・トラックチーム/マン)が、ライバルの10秒加算ペナルティにも助けられタイトルを獲得している。
■手がつけられない強さとスピード。王者キスが年間予選ポールポジション完全制覇を達成
そしてリバースグリッド採用のレース2でもシリーズチャンピオンの独壇場が続き、スタートからわずか2周目にはレクエンコと首位争いを展開するアンドレ・クルシム(ドント・タッチ・レーシング/イベコ)のリヤバンパーに、チャンピオンが操る真紅のマンが迫る。
そこから必死のディフェンスでなんとか1周を持ちこたえたクルシムだったが、メインストレートからのラインスイッチで鮮やかにポジションを奪ったキスが2番手に浮上。そのままレクエンコの追撃態勢に入る。
コース幅を可能な限りワイドに使い、総合王者の猛攻を凌ぐドライブを見せ、キスが仕掛けるあらゆる試みを阻止したレクエンコだったが、集中力が途切れたか6周目のわずかなミスで終戦。これでキスが年間21勝目を手にした。
明けた日曜。今季総仕上げとなる予選もほぼ全ドライバーがクリーンな計時ラップを得る展開のなか、帝王ハーンを0.8秒も突き放す圧巻のタイムを記録したキスが、すでに実り多き2023年シーズンに華を添える『年間予選ポールポジション完全制覇』の記録を打ち立てた。
これで今季最終日も波に乗ったチャンピオンは、シュティフィ・ハルム(チーム・シュバーベントラック/イベコ)がターン11でエンジントラブルからオイルを撒き、後続2台が巻き添えのクラッシュを喫する展開のなか、先頭で静かなレースを続けてトップチェッカー。これでシーズン22勝目に到達した。
迎えた今季最終ヒートのレース4は、前日の雪辱とばかりに燃えたクルシムがリバースグリッドをうまく機能させ、念願の今季初勝利を達成。レンツとキスが表彰台の脇を固める結果となり、キスの勝利数更新は22で止まるフィナーレとなった。
一方、レース3のトラブルでエンジン換装を強いられたハルムは、わずか1時間のインターバルでクルーが懸命の作業を続けたものの、交換完了間近あと一歩のところでフォーメーションラップが開始され万事休す。加えてクルシムの勝利により、彼女は総合順位で7ポイント差のランキング5位に後退する結果となった。
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