Maserati Ghibli Hybrid
マセラティ ギブリ ハイブリッド
新型マセラティ ギブリ、ハイブリッドになって登場! 次世代マセラティへの架け橋を渡辺慎太郎が考察
あのマセラティがハイブリッドを産み出す
マセラティは史上初となる電動化モデル、ギブリ ハイブリッドを発表した。“マセラティ”と“ハイブリッド”は、なんだか水と油のようで馴染まない気がしないでもないけれど、悠長にそんなことを言っている時代ではなくなってしまった。でも、「あのマセラティが用意するハイブリッドなのだから、フツーのハイブリッドではないんじゃないか??」とほのかな期待を抱いてしまう人も少なくないだろう。自分もそんなひとりだったが、蓋を開けてみればシステム自体に目新しさはなく、いわゆるマイルドハイブリッドであった。
実は発表会に先立ち、マセラティ本社は限られたメディアを対象にオンラインのグループインタビューを設けてくれた。ただし発表前ということもあり、非常にザックリとした概要説明のみで、「では質問をどーぞ」と言われても何を聞いたらいいのかわからないくらい情報が少なかった。グループインタビューというよりはむしろ「どうだった?元気だった?」みたいな近況報告会みたいで、メディアに対していつもアットホームな雰囲気で接してくれるマセラティらしい配慮だと思った。最近毎週のように何らかのオンラインミーティングが開催されている中において、マセラティのそれは個人的にとても好感と親しみが持てるものだった。
マセラティが2020年に出した答えとは
ひと口に“ハイブリッド”といっても、現状では様々な種類があるのはご存じの通り。マセラティは「内燃機関とともに歩んできたこれまでの歴史と電動化に向かう未来をつなぐモデルであり、燃費効率とハイパフォーマンスを両立させる」というコンセプトのもと開発を進めたという。そして彼らが辿り着いた答えがBSG仕様のマイルドハイブリッドだった。
BSGとは「ベルトドリブン・スターター・ジェネレーター」の略で、すでにメルセデスなどが採用している方式である。ベルトとは、ボンネットを開けて覗き込むとエンジンの前方に見えるあのベルト。通常はスターターとジェネレーター(=オルタネーター)が別々にあるが、BSGは簡単に言えば充電機能付きモーターをベルトにかけ、スターターとしても使えるし、減速時には回生ブレーキで発電してトランク内の48Vリチウムイオンバッテリーを充電し、さらに一定条件下ではモーターとして駆動力をサポートする。マセラティはこのBSGに加えて「eブースター」を備えた。ボルグワーナー社製のeブースターはすでにメルセデスなどにも採用されている機構で、電動モーターで吸気を圧縮してシリンダー内へ送り込むというもの。これにより、ターボが本格始動する前の低回転域でのトルク不足を補う。
直列4気筒ターボを積むギブリ
エンジンは2.0リッターの直列4気筒ターボ。これはアルファロメオなどにもすでに使われているフィアット系のユニットをベースにしたもので、ボッシュ製の最新のコントロールユニットを採用するほか、エンジンサイズとヘッドの一部を元々のエンジンと共有する以外は、ほとんどすべてマセラティが新たに設計し直している。生産はアルファ用エンジンなども手掛けるテルモリ工場が担当するが、マセラティはこれを「新たなマセラティエンジン」と胸を張る。
ご存じのように、ターボは低回転域での立ち上がりが若干遅い。この部分をBSGのモーターが補い、タイミングよくターボへたすきを渡すことで、低回転域から高回転域までスムーズにトルクを発生させるのである。また、スポーツモード選択時は(バッテリー残量によるものの)より積極的に駆動力をサポートすることで加速性能の向上を図る。
HVなれどサウンドは健在なり
最高出力は330ps/5750rpm、最大トルクは450Nm/4000rpmで、このパワースペックはV6ガソリン仕様とほぼ同等だが、車両重量はディーゼル仕様より80kgも軽く、後方にバッテリーを搭載することで前後重量配分はV6よりも50:50に近くなったそうだ。燃費もV6よりも20%以上向上し、CO2排出量は25%以上低減しているという。それでも0-100km/h加速は5.7秒、最高速度は255km/hを誇る。組み合わされるギヤボックスは、ZF製の8速オートマチックトランスミッションのみとなる。
マセラティと言えば、「吠える」「奏でる」「歌い上げる」などの言葉で表現されるエンジン音が魅力のひとつ。ハイブリッドになって、この官能的サウンドが失われてしまうのではないかと心配するのはおそらく自分だけではないだろう。マセラティは特に排気ガスの流体力学的側面に注目し、増幅器などを使用することなく特徴的な排気音を作り出すことに成功したという。「マセラティである以上、ハイブリッドモデルであっても耳に響く音でなければならない」という想いが込められている。
ジウジアーロの名作の意匠がテールに蘇る
電動化モデルを表す“色”は、ブルーやグリーンや蛍光色など自動車メーカーによって様々だが、マセラティはその中からブルーを選び、ギブリのエクステリアのディテールでそれを示している。フロントフェンダーに設けられたマセラティの伝統的モチーフのひとつであるサイドエアベントのアウトラインやブレンボ製ブレーキのキャリパー、Cピラーに配置されているロゴなどにブルーを用いることで、他のギブリとの差別化を図っている。
欧州市場向けには“グリジオ・エヴォルツィオーネ”と呼ばれる新色のボディカラーが追加されるそうだ。これは青味を帯びたグレーのメタリックで、2層コーティングになっているという。ドアハンドルなどがボディと同色になるなど、太陽光の下ではより一層映えるカラーで、これがギブリ ハイブリッドのイメージカラーとなる模様。中国市場向けには“フェニーチェ(不死鳥)”という名のロッソ・マグマが提供される。また、テールランプの意匠も一新され、ジウジアーロ作の3200GTのテールランプのデザインをモチーフにしたブーメラン形となった。
イタリア国内で秋から生産をスタート
インテリアにもハイブリッド専用のしつらえが施される。ヘッドレストのトライデントのロゴやドアトリム/ダッシュボードのステッチなどにもブルーがあしらわれている。“グランスポーツ”と“グランルッソ”の2種類のトリムが用意されるのはこれまで通りとなる。リヤシートは60:40の分割可倒式。トランクルーム容量はリチウムイオンバッテリーを床下に搭載しても500リットルが確保されている。10.1インチのモニターや新世代のマルチメディアシステムとなる「マセラティ・インテリジェント・アシスタント(MIA)」は、ギブリ ハイブリッドのみならず2021年仕様のギブリ全車に採用される。
生産はこれまで通りイタリア国内となり、ギブリ ハイブリッドの生産開始は2020年9月、日本と韓国市場向け車両については2021年の第一四半期となる予定。
マセラティ史上初の電動化モデルの発表会は、これもまたマセラティ史上初となるオンライン・カンファレンスで行われた。マセラティ ギブリ ハイブリッドはまさに、彼らにとっての電動化への旅のスタートとなったのである。
REPORT/渡辺慎太郎(Shintaro WATANABE)
【SPECIFICATIONS】
マセラティ ギブリ ハイブリッド(欧州仕様)
ボディサイズ:全長4971 全幅1945 全高1461mm
ホイールベース:2998mm
車両重量:1878kg
エンジン:直列4気筒DOHC
総排気量:1998cc
ボア×ストローク:84.0×90.0mm
システム最高出力:246kW(300hp)/5750rpm
最大トルク:450Nm/4000rpm
トランスミッション:8速AT
サスペンション:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
駆動方式:RWD
タイヤサイズ:前後235/50R18
【問い合わせ】
マセラティ コールセンター
TEL 0120-965-120
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みんなのコメント
ギブリハイブリッドは興味がわかないですね〜
どんなサウンドなんでしょう?
テール ランプはカッコよくなったと思います。