現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 勝利の女神を微笑ませたマーク2の完成【フォード GT40はいかにして神話になったのか。Vol.3】

ここから本文です

勝利の女神を微笑ませたマーク2の完成【フォード GT40はいかにして神話になったのか。Vol.3】

掲載 更新 1
勝利の女神を微笑ませたマーク2の完成【フォード GT40はいかにして神話になったのか。Vol.3】

官僚的形式主義を突破せよ

1966年のレースシーズンに向けて、フォードはル・マン委員会を設立した。構成メンバーはエンジンや製造、一般パーツなどいくつもの部門のトップである。さらにモータースポーツ、スタイリング、エンジニアリングといったディアボーンのチームの任務を拡張した。そうすることで、それまで様々な計画を阻んできたお役所主義を一掃しようとしたのである。

勝利の女神を微笑ませたマーク2の完成【フォード GT40はいかにして神話になったのか。Vol.3】

さらにフォード モーター カンパニーは、シェルビー アメリカンに加えてNASCARのレーシングチームであるホルマン・ムーディーも引き込むことを決定。委員会は月例会議で広範囲な準備作業についてミーティングを行い、ジョン・カウリーがGTプログラムの日々の活動計画を監督する役目となった。シェルビー・アメリカンとホルマン・ムーディとの連絡係にはホーマー・ペリーが任命されている。

マーク2の完成

役者は揃った。フォード エンジニアリング、そしてレースに対する卓越した洞察眼をもつシェルビーとホルマン・ムーディが手を組み、427をミッドに積んだGT40の開発にあたった。フィル・ヒルとケン・マイルズはレースをしながら車両の修正を絶えず続けた。

1965年9月中旬までに、ボディ、サスペンション、燃料系システム、ブレーキにいたるまで十分な改良を施したマーク2が完成。ディアボーンの風洞実験棟へ運ばれたそれは、重量の嵩む金属を使いブレーキへの負担が増していた。ケン・マイルズはノーズを短縮したマシンでのテストを続けた。そちらの方が最高速度が8mph(約13km/h)速かったのだ。

ついにウィニングカーは完成した。チーム全員がそう感じた。最大の関心事はギヤボックスとブレーキであった。興味深いのはマーク2が4速MTを搭載していたという事実である。大排気量のエンジンから湧き出す膨大なトルクのおかげで5速は必要ないと考えられたようだ。

5チーム体制で臨んだデイトナ24時間

1966年2月5日、彼らは再びデイトナ インターナショナル スピードウェイへやってきた。その年のデイトナは、前年までの12時間から24時間の耐久へとレギュレーションを変更していた。フォードが送り込んだのは、シェルビーで3チーム、ホルマン・ムーディで2チームの合計5チーム。オートマティック トランスミッションを積んだテスト車両も含んでいた。

フェラーリは今回ファクトリーチームを送り込んでいなかった。スタートから1時間も経たないうちに主要なライバル勢は続々脱落してくなか、序盤からレースを率いていたケン・マイルズとロイド・ルビーはあっけなく1位を勝ち取っている。1~3位をGT40のマーク2が占める結果となった。フォード初の快挙である。

セブリングで明らかになったマーク2の実力

次に待ち受けていたのはセブリング12時間。さらなる機敏さと確かな操縦性が求められるコースには、重量がありパワフルなマーク2か、軽量な289仕様のいずれが相応しいかについて委員会で議論がなされた。最終的には、シェルビー・アメリカンとホルマン・ムーディーがマーク2で、アラン・マンレーシングが289で出場することになった。フェラーリのファクトリーチームは、1台の330 P3のステアリングを偉大なるドライバー、マイク・パークスに委ねている。

夜間のセッションで、289はフェラーリについていくだけのスピードを保持できないことが明らかになっていった。一方ケン・マイルズとダン・ガーニーがそれぞれに駆っていたマーク2は一向にペースを崩さない。そしてスタートから7時間、ついにフェラーリのトランスミッションが悲鳴をあげた。

リタイアを余儀なくされたフェラーリ勢とともに他の主要なライバルたちも脱落していくと、ガーニーとマイルズに対して「スローダウン」の指示が出された。

しかしマイルズは一向に減速しようとしなかった。ガーニーとの一騎打ちに負けまいと、攻めの姿勢を崩さなかったのである。ついには壁に登ってハンマーをぶんぶんと振り出したキャロル・シェルビーの姿に、マイルズはようやくスローダウン。これで何事もなくゴールまでマシンを持たせることができるだろう。皆そう考えたはずだ。

ダン・ガーニーに襲いかかった不運

ペースを落として先頭を走るガーニーと2位のマイルズには1ラップの差がついている。優勝までの道を着実にクルージングしていたガーニーだったが、しかし、考えられないような事件が起きた。フィニッシュラインまであと数百メートルという地点でエンジンからコンロッドが吹き飛んでしまい、スピンしたマシンは完全停止。

どうすべきか分からずにいたガーニーに、自ら車両を押してフィニッシュラインを越えれば良いと指示を出したオフィシャルはいささか未熟だったろう。ドライバーが自身の車両を押すことを許されるのは「安全のためにコース上から離れる必要があるとき」であり、ガーニーは失格を告知されてしまったのである。

結局2シーズン目となるケン・マイルズがセブリングの優勝をもぎとり、289も含めてポディウムの3段はすべてGT40が埋め尽くすこととなった。

(つづく)

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

走りは爽快!! 中古で人気の4代目ルノー ルーテシアは新型フィットより魅力的!?【10年前の再録記事プレイバック】
走りは爽快!! 中古で人気の4代目ルノー ルーテシアは新型フィットより魅力的!?【10年前の再録記事プレイバック】
ベストカーWeb
自転車の「ながら運転」厳罰化! ドイツにはもっと厳しく複雑な自転車ルールがありました…逆走には要注意です【みどり独乙通信】
自転車の「ながら運転」厳罰化! ドイツにはもっと厳しく複雑な自転車ルールがありました…逆走には要注意です【みどり独乙通信】
Auto Messe Web
ジュリエッタ・ユーザーを呼び戻す? アルファ・ロメオ・ジュニア・エレットリカへ試乗 HVも登場!
ジュリエッタ・ユーザーを呼び戻す? アルファ・ロメオ・ジュニア・エレットリカへ試乗 HVも登場!
AUTOCAR JAPAN
160万円でガルウイングドアが買えた! トヨタ「セラ」はバブルが生んだマイクロスーパーカーでした…今見ても新鮮なデザインに再注目です
160万円でガルウイングドアが買えた! トヨタ「セラ」はバブルが生んだマイクロスーパーカーでした…今見ても新鮮なデザインに再注目です
Auto Messe Web
オコン&ガスリーの幼なじみペアがダブル表彰台に感無量「最終ラップ、カート時代に思いを馳せた」アルピーヌは6位に
オコン&ガスリーの幼なじみペアがダブル表彰台に感無量「最終ラップ、カート時代に思いを馳せた」アルピーヌは6位に
AUTOSPORT web
F1がまだ「めちゃくちゃ」だった頃の話 ひどいチームで溢れかえった80~90年代 歴史アーカイブ
F1がまだ「めちゃくちゃ」だった頃の話 ひどいチームで溢れかえった80~90年代 歴史アーカイブ
AUTOCAR JAPAN
ジャガー、英国で新車販売終了 ラインナップ総入れ替え 2026年まで中古車のみ
ジャガー、英国で新車販売終了 ラインナップ総入れ替え 2026年まで中古車のみ
AUTOCAR JAPAN
特別な青を纏ったベントレー「ベンテイガS」完成! 英国ファッションデザイナーとコラボした限定車は、電動化延期が影響していた…!?
特別な青を纏ったベントレー「ベンテイガS」完成! 英国ファッションデザイナーとコラボした限定車は、電動化延期が影響していた…!?
Auto Messe Web
ホンダ新型「スーパーカブ×ハローキティ」初公開! サイドカバーの「飛び出すキティ」が凄すぎ! 超人気の「2大巨頭」奇跡のコラボで発売へ!
ホンダ新型「スーパーカブ×ハローキティ」初公開! サイドカバーの「飛び出すキティ」が凄すぎ! 超人気の「2大巨頭」奇跡のコラボで発売へ!
くるまのニュース
スペックはディーゼルに見劣りするトヨタ「ランドクルーザー250」のガソリン車 “気になる街中での印象”は? 充実した装備類で“コスパは最強”
スペックはディーゼルに見劣りするトヨタ「ランドクルーザー250」のガソリン車 “気になる街中での印象”は? 充実した装備類で“コスパは最強”
VAGUE
真夏も真冬も車内で寝る必要があるトラックドライバー! アイドリングが御法度なイマドキの「冷暖房」事情
真夏も真冬も車内で寝る必要があるトラックドライバー! アイドリングが御法度なイマドキの「冷暖房」事情
WEB CARTOP
F1の新規ファンが増えない根本理由 75周年を機に開かれる未来への道筋とは?
F1の新規ファンが増えない根本理由 75周年を機に開かれる未来への道筋とは?
Merkmal
「僕よりも大変な人たちがいる」アロンソ、激痛襲われるもサンパウロ完走でマシン修復のチームや豪雨被害バレンシアに勇姿見せる
「僕よりも大変な人たちがいる」アロンソ、激痛襲われるもサンパウロ完走でマシン修復のチームや豪雨被害バレンシアに勇姿見せる
motorsport.com 日本版
【BMW 1シリーズ 新型】色々なボディカラーで楽しんで
【BMW 1シリーズ 新型】色々なボディカラーで楽しんで
レスポンス
PPのノリス、赤旗で後退しタイトル争いにも打撃「ライバルはラッキーだったが、僕は不運だった。戦略に誤りはない」
PPのノリス、赤旗で後退しタイトル争いにも打撃「ライバルはラッキーだったが、僕は不運だった。戦略に誤りはない」
AUTOSPORT web
「“暗い色”増えたなぁ…」 自動車カラーのトレンドが一気に“地味化”へ!? “とにかく明るい色”から一転のワケ
「“暗い色”増えたなぁ…」 自動車カラーのトレンドが一気に“地味化”へ!? “とにかく明るい色”から一転のワケ
乗りものニュース
「ヘッドライトが眩しいクルマ」なぜ増えた? 信号待ちで「ライト消さない人」が多数派になった理由とは? ヘッドライトの“新常識”ってどんなもの?
「ヘッドライトが眩しいクルマ」なぜ増えた? 信号待ちで「ライト消さない人」が多数派になった理由とは? ヘッドライトの“新常識”ってどんなもの?
くるまのニュース
小さいジープはいかが? ブランド最小のSUV「アベンジャー」がEVで登場! 【新車ニュース】
小さいジープはいかが? ブランド最小のSUV「アベンジャー」がEVで登場! 【新車ニュース】
くるくら

みんなのコメント

1件
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村