賛否両論の70マイル制限
1965年12月、英国の高速道路に初めて時速70マイル(約113km/h)の制限速度が定められた。インターネットもない時代、英国では多くの論争を巻き起こし、今日に至るまで賛否が分かれている。
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当時、本誌の英国編集部は半ばため息をつくようにして、次のように書いている。「1958年に英国初の高速道路が開通するはるか以前から、高速道路での制限速度を求める声は憂鬱なほど定期的に聞かれ続けてきた」
「そして今回、(政府機関の)全国交通安全協議会が、日没後の制限速度を時速50マイル(80km/h)から時速70マイルにすることを提案したと報じられている」
「霧の中(M6)で起きた複数台を巻き込む一連の悲惨な交通事故から、どうしてこのようなことになったのか、理解しがたい」
実際、地元の警察署長はテレビ番組で、この事故が起きたときの車速は時速30マイル(48km/h)以下だったと認めている。
「英国の高速道路をよく利用する人なら知っているように、制限速度は必要ない」と本誌は主張し、ドライバーたちがスピードメーターを凝視することの危険性を指摘した。
労働党のトム・フレイザー運輸大臣が「断固として」取り組み、標準の制限速度を時速70マイルに、霧の発生時には時速30マイルに定め、4か月間の実地試験を開始したとき、我々は愕然とした。
「なぜこのようなことが行われたのか? その答えの1つは、このような制限速度が事故の数や深刻さを減らせるかどうか、何年も議論や実験が重ねられてきたにもかかわらず、誰も確かなことを知らないからである。この試験により、貴重な情報が得られるかもしれない」
「もう1つの答えは、これまでのところ、道路建設を遅らせることを主な主張としてきた政府が、何らかの劇的な動きをせざるを得なくなったということかもしれない」
「間違いなく、運転経験がほとんどなく、長期的な影響も理解していない、過半数の誠実な一般市民が、この決定に拍手喝采を送るだろう」
その影響には、「外側の車線を時速60マイルで巡航するのが好きで、追い越すものが何もないときでさえ、速いクルマに道を譲ることをまったく拒否する、あの異常な人物」の増殖も含まれるだろうと、本誌は予見していた。
「最初の数か月を過ぎれば、この規制がすぐに軽蔑の対象となることは目に見えている。速度に関する自動車運転法が公然と無視されていた時代に逆戻りするのは残念なことだ」
延期を繰り返す「試験導入」
眉をひそめ、悲観的になったのは我々だけではなかった。
「これは敗北主義的な政策だ。何の効果もないと確信している」と保守党の影の運輸大臣、マーティン・レッドメイン卿は一蹴した。
AA(英国自動車協会)も「我々は、(この政策が)交通安全の有意義な改善を達成するというエビデンスにについて、まだ確信が持てない」と言う。
慈善団体IAMのテストディレクター、ジョージ・アイルズ氏は「米国では制限はあまり効果がない。昨年1年間に4万7500人が路上で死亡したが、その数は朝鮮戦争(3年間)での戦死者を上回っている」と述べた。
ジャガーの創設者であるウィリアム・ライオンズ卿は「教育、効果的な警告標識、警察の取締りなどによって安全性を高める努力をしなければならない」とした。
4か月の試験終了後、フレイザー運輸大臣の後任であるバーバラ・キャッスル(彼女は運転ができなかった)は、道路調査研究所にデータを集計・分析する時間を与えるため、試験期間を2か月延長すると突然発表した。
何か胡散臭い……統計学者が何か企んでいるのではないか? 驚くべきことに、キャッスル大臣は「ケースが未証明」として、試験期間をさらに15か月延長した。
1967年7月、同研究所が最終的に調査結果を発表した際、RAC(王立自動車クラブ)の副会長であるチェシャム男爵はこう総括した。「これほど多くの統計が、これほど多くの変数で比較されたことはない。この報告書には、グリムスビーのトロール漁船の船倉をいっぱいにするほどのレッド・ヘリング(燻製ニシンの虚偽:相手の注意を逸らすという意味)がある」
以下はその調査結果の抜粋である。
「(M1での)全死傷者数に占める死者・重傷者数の割合は、1960年から1965年の間に38%から57%の間で変動し、試験期間中の値(53%)はこの範囲内に収まった」
数日後、キャッスル大臣はこの制限を恒久化すると述べた。
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みんなのコメント
本邦でも追越車線を延々と通行帯違反してるバカが割と居るけど、イギリスでもまんまそれが生息していると知ってある意味で安心した。人間の性格なんてどこでも変わらんのな。
高速道路の追越車線限定でパッシングとクラクション限定で煽り解禁したらいいのに。