ブレンボの「偽造品」「準偽造品」「スーパー偽造品」をあなたは見分けられる?
世界中にますます広がるブレンボ製ブレーキの偽造品。本物の正規品との見分け方を、偽造品、準偽造品、そしてスーパー偽造品に分けて紹介していこう。偽造の形こそ違えど、どれも危険なものばかり……。ブレーキだけに、事態はとても深刻だ。
●文/写真/外部リンク:ブレンボ
生命を危険にさらす可能性がある偽物パーツ
質の高い走りやレースのシンボルとして、大勢のバイク&カーマニアから絶大な人気を集めるイタリアのブレンボ製ブレーキ。その魅力がカスタマーだけでなく偽造業者も引き寄せている。ハンドバッグや時計、サングラスや衣料品などをコピーしてきた彼らは、ブレンボに目をつけ、ブレンボ製をかたる偽物のブレーキを作るようになったのだ。
クルマやバイクのスペアパーツのコピー品が出回るのことは決して珍しいことではない。ただ、ブレンボ製パーツの場合、招く結果の深刻度が特に大きくなる。ブレーキは自動車のアクティブセーフティーを担うパーツで、偽造パーツを装着すると、ライダーやドライバーはもちろん、同乗者の安全性と生命が危険に晒されるということになる。
例えば旅先の外国で買った偽物の腕時計の時間がズレることがあるかもしれない。偽物のハンドバッグに使われている素材が粗悪なために壊れることもあるだろう。しかし、ブレーキシステムの場合は、話がまったく違う。品質が悪いとその代償が高くつくことがあり、ブレーキシステムの偽造品は時計やバッグよりはるかに危険なものなのだ。
偽物には、『偽造品』『準偽造品』『スーパー偽造品』の3タイプがある
―― オークションサイトでブレンボ製品を購入……そんな安易な選択は危険をもたらす可能性がとても高い。
クルマやバイクのブレーキの偽造品を選ぶと、クルマやバイクそのものはもちろん、乗った人の安全までを重大な危険に晒すことになる。そんな浅はかなものを選んだ結果、カーブでブレーキの効きが遅れて道路外へはみ出したり、重要な部品が壊れて事故を招いたりすることになりかねない。
偽物はしょせん偽物だ。これは疑いようのない事実。にもかかわらずブレンボの偽造品は、コピーの程度を様々に変えて、膨大な種類の商品が大量に市場に溢れている。そこで皆さんにわかりやすいように、本物かどうかのテストで不合格とされるブレーキパーツを、3つのタイプに分けて示してみよう。それは偽造品、準偽造品、スーパー偽造品の3タイプに分けられる。
それぞれ違いはあるものの、ここに挙げる3タイプの偽造品にはすべて、非常に重要な共通点が1つある。それはブレンボが徹底して強調したい点でもあるが、どれもがライダーやドライバーの生命、同乗者の生命、そして同じ道路を走行している人の生命を危険にさらすものである、という共通点だ。
まずは『偽造品』を見てみよう
ブレンボ製パーツの偽物としてはもっともわかりやすく、古くから存在するものがこのタイプ。キャリパーやディスク、ブレーキパッドなど、ブレンボの正規品をほぼコピーした物がこれに相当する。
このタイプの偽造品は、たいていは作りが雑なコピー品で、目の肥えた人なら一目で見抜ける物だ。しかし、外観をそっくり真似することで非常に見分けにくくなっている場合もある。しかしブレンボの正規品のように見せかけたところで、当然のことながら内部の技術まで再現できるわけでも同じ性能基準を満たせるわけでもない。
ブレンボ製のキャリパーやディスク、ブレーキパッドを購入する場合、それが正規品でないと製造基準を満たしている保証も、性能の保証も一切ない。正規品ではないブレーキパーツは、重要な性能が発揮される上限の条件がまったく異なる場合があり、単に何度か使用しただけで性能のレベルが大幅に低下してしまうものもある。
残念なことに(常にスペアパーツは認証取得品と決めている方々には当たり前のことだが)ブレンボ製品の偽造品の購入者は、自分が買おうとしている製品がブレンボの正規品と同じ高い性能基準を満たしているかどうか、また正規品と同様に長持ちするか、性能が持続するかを、購入前に知るすべがない。
さらに重要なのは、買った偽造品の性能が低かったりすぐに摩耗したり割れたりしても、そのことで賠償請求できる相手はいない、ということだ。
偽造品を検証すると効力低下だけでなく、最悪パーツが落ちるケースも……
―― なかには見た目だけでは見分けがつかないほど精巧なものがあるので注意したい。
例えば、ブレーキ動作1回だけでは、偽物のパーツがブレンボの正規品とほぼ同等の性能を発揮しているように感じるかもしれない。しかし、カーブの続く下り坂で何度もブレーキ操作を繰り返すうち、偽造品はブレーキペダルの踏み込みと実際のブレーキの効きが大きくずれていく可能性がある。
ブレンボでは多数の偽造品を対象に、正規品が出荷前に実施してきているものと同じ内容のテストを行って検証。その結果、多くは不良品で、ブレーキの効力が低下したり、ブレーキシステムの快適性が損なわれたりするほか、パーツが外れて落ちるケースまであった。
快適性で重要なのは不快な音や振動がないことだが、この点を偽造品メーカーはまったく無視している。ブレンボでは、騒音レベルを最小化するため、パーツの形状と構造に関する膨大な回数のテストを行っている。ブレンボ製パーツの設計・製造が目指すものは、顧客である世界最大手の自動車メーカーが求める最高レベルの品質基準を満たすことだからだ。
車両の重量、出力、機械的特性に関する信頼性、快適性、耐久性を、数々の異なるパーツをどのように組み合わせてブレーキとして最大限発揮できるかをシステム全体の視点で追求しているブレンボ。その取り組みの一環として、ブレーキシステムを車両に搭載した状態で改めてテストを繰り返し、問題がないかをチェックしている。
『準偽装品』も危険
前途した偽造品とともによく見かけるのは、部分的にブレンボのブレーキシステムを真似た偽造品だ。それらを我々は「準偽造品」と呼んでいるが、危険であることに相違はない。
準偽造品という言葉からは、偽造品なのか、偽造品ではないのかという矛盾を感じる人もいるかもしれない。では、準偽造品とはどんなものなのだろう。その答えは、ブレンボのブレーキシステムがディスクやキャリパー、パッド、可動部品などのさまざまなパーツで構成されているという事実にある。それらのパーツの出どころが異なる場合があるのだ。
準偽造品とは、いくつかの純正パーツ(たいていはブレーキキャリパー)をブレンボ製ではないパーツと組み合わせて、一つのブレンボのブレーキシステムとしてパッケージ販売しているものを指す。こうした試みに、ブレンボは一貫して反対している。ブレーキシステムの性能は、パーツ単体の品質だけでなく、パーツが完璧に一体化した形での品質によっても決まる、という確固たる信条があるからだ。
これに関してブレンボ製品の偽造業者が採った戦略は、一部だけ別のものに変えるという、危険であることには変わりのないやり方だった。
ほとんどの場合、仕入れるキャリパーは、ブレンボ製ブレーキを標準装備している車両用のスペアパーツとして販売されているブレンボ製キャリパーだ。ただ、そのキャリパーがどこ由来のものかに関しては話が別。新品ではなく、盗難車や事故車が装着していたもので、その履歴が分からない、というケースがあるのだ。
中古パーツを組み合わせて販売される『準偽装品』
そうしたキャリパーの多くにはフェラーリやポルシェ、ランボルギーニやBMWといった自動車メーカーのロゴがついていて、それを再塗装してブレンボのロゴに変え、怪しいブレーキディスクやブレーキパッドなどのパーツと組み合わせて、キットの形で売るのだ。
この場合、キャリパー自体は確かにブレンボで高性能に作られたものであり、問題ないように見えるかもしれないが、キットとなった場合は危険な場合がある。こうしたキットに注意していただきたい理由は3つある。
1 つめは、クルマへの適合性が疑わしいこと。ブレンボはキャリパーを製造する場合、対象のクルマやバイクに合わせて設計しているので、別のクルマで問題なく動作するとは考えにくい。(したがって製造もテストも、車両の重量や組み合わせるマスターシリンダーの種類、ABSなど、そのクルマの特性に基づいて実施)。
アップグレードキットも同様で、パワーが上がっているのだから純正品より高性能だろうと単純に考えてしまうのは大間違い。ある車種にもっとも適するように構成したブレーキパーツの組み合わせが別の車種ではパワー過剰になってしまい、ブレーキが効きすぎたり電子部品が常時動作状態になったりして、使い心地が悪くなる可能性がある。
―― 真贋を見極める知識はもちろんだが、ブレンボ製品を購入するためのショップ選びもとても大切。
2つめは、再塗装による危険。キャリパーの塗り直しを素人がやっているケースが多いのだ。キャリパーの塗装は、思わぬ危険が常につきまとうキャリアを要する作業。正しく作業できる職人がわれわれ以外にまったくいないとは言えないが、いい加減な塗装が原因でキャリパーが故障したという報告はどんどん増えている。
当然ながら、キャリパーが壊れる原因は、塗装そのものではなく、油圧関連部分の組み立て作業にある。ピストンの分解と再組立が正しく行われていないことが多く、場合によってはまったく行っていないケースさえある。そうした状態でキャリパーに焼き付け塗装を行うと、熱でピストンシールが損傷し、キャリパーの性能が損なわれてしまう可能性が高いのだ。
危険を知らせる3つめの要素は、キャリパーが販売されているキット内の他のオリジン要素が疑わしいということ。 ブレンボが関与していないディスク、パッド、およびアダプターブラケットが候補として挙げられる。 ブレーキとは、システムという観点からすると各コンポーネントが完璧な役割を果たすことで初めて性能を発揮する。 ある部分が粗悪な品質になれば、システム全体のしかるべき機能が損なわれる可能性が十分にあるのだ。
だからこそ、準偽造品には注意していただきたい。インチキで危険なのは、各パーツそのものではなく、ブレンボの正規品を混入させたキットなのだ。たとえ偽物が一部分のみであっても、性能と安全の観点からは、そうしたキットが100%危険であり、信頼性に乏しいということに変わりはない。
ブレンボのブレーキシステムは、アップグレードキットを含めてすべて、クルマの重量、車輪周辺のパーツのレイアウト、電子部品、タイヤ、本来のマスターシリンダーなどのクルマの特性を徹底的に分析したうえで、対象の車両に適合するように設計している。
したがってブレンボのアップグレードキットは、設計もサイズ決定も製造もテストも、対象の車両での完璧な動作を目的としている。そのため、紛れ物のない完全なブレンボのブレーキシステムを、設計対象とは異なるクルマやバイクに装着して使う場合でも危険な可能性があるのだ。
こうしたことからも、われわれはブレンボ公認の有資格の取り扱い店をご利用になることを一貫してすすめている。ブレンボ公認の有資格の取り扱い店では、技術面でのアシストはもちろん、ブレンボキットは対象機種専用品のみを扱っている。正真正銘の正規品が確実に見つかるうえ、愛車に適した正規のブレンボのブレーキシステムを購入でき、見当はずれなものをむやみに取り付けてしまうことを防ぐことができる。
レトロフィットと「中途半端」の違い
クルマやバイクの趣味の世界では、愛車の独創性を上げるためのわずかなカスタムは当たり前のことで、他の車種用のパーツを本来の設計対象とは異なるクルマやバイクに採り入れることがある。これはレトロフィット、カスタマイズ、部品取り、チューニングなどさまざまな呼び方がありますが、われわれが「中途半端」と呼びたいものはそれらとはまったく違うものだ。
ブレンボでは、それぞれの車種専用に設計されたものではないブレーキパーツを各種組み合わせることは、理想的な解決策ではなく場合によっては危険であると考えている。したがって、そうしたことは避けるようブレンボは強く忠告している。とはいえ、出処や当初の設計対象の車種に関わらず、自分の愛車にベストだと思って購入したブレンボ製品を装着するのはその人の自由だ。
ブレンボの工場から出荷された新品のブレーキキャリパーで他の車種用に設計されたものを、特性や出処の異なるパーツと併用することがキャリパーの混用だと言いたいわけではない(ただ、上述のとおりブレンボはそれをしないよう忠告している)。
しかし、粗末で怪しげなものを組み合わせてそれを100%ブレンボ製システムの正規品だとして、あたかもブレンボで試験・承認済みのキットであるかのように偽って流通させ、ブレンボのキットが手に入るのだと心から信じているカスタマーの純真さと善意につけ込んで売ることは、違法だ。
われわれが「中途半端」と呼ぶのは、クルマやバイクの愛好家が愛車のブレーキをカスタマイズするために、その結果を十分に理解したうえで、出処の異なるパーツの組み合わせを購入しようと決心した、そのことではない。ブレンボが製造した純正品は一部分だけなのに、100%ブレンボの正規品だとしてブレーキシステムを流通させ販売する業者のことを指している。
この類の商品と対象車種専用に設計とテストを実施したブレンボのブレーキシステムのアップグレード製品との違いをはっきりと示すことは、われわれにとって責務だと考えている。
ブレンボのブレーキシステムを購入される方で、完璧に正規品のみで構成されたブレンボのキットを見分けられない方々がブレンボ製のパーツを含んではいても生産工学やテストを踏まえておらず正常な動作の保証が一切ない『粗末なキット』を買ってしまうことのないように、われわれは守らなければならないのだ。
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みんなのコメント
カバーだけ変えてるアホの存在は知ってたが
騙されて偽物っていうのは別の意味で痛々しいなw