新開発BEV(バッテリーEV)車両による次世代の電動ツーリングカー・チャンピオンシップとして新たな時代を迎えるSTCCスカンジナビアン・ツーリングカー選手権は、開幕ダブルヘッダーを予定するヨーテボリ市街地での開幕戦(6月8~9日)を前に、5月21日と22日にユンビヘッドパーク、そして翌日の23日にはクヌットストープに移動して最後の公式テストを実施。3日間、都合10セッションの走行機会では、初日こそフォルクスワーゲンID.3がわずか0.001秒差でトップに立ったものの、その後はブリンク・モータースポーツが走らせるテスラ・モデル3がワン・ツー・スリーを独占するなど優位性を感じさせる結果となった。
電動パワートレイン“Kit”の開発を担当したEPWR社が、各3台ずつ計4車種の新型EVツーリングカーを完成させ、チームへの納入とシェイクダウンを済ませたSTCCは、すでにマントープパークで実施したEV時代初の公式テスト2日間に続き、開幕前最後の集中セッションを敢行した。
盟主PWRが『クプラ・ボーン』披露と同時にEuroRX1王者起用を発表。エクシオンは異車種6台体制に/STCC
そのテスト期間にはまだ未定となっていたレースシートのいくつかも確定し、当初計画のBMW i4に加え、新たにフォルクスワーゲンID.3の3台も引き受けて異車種6台体制へと拡大したエクシオン・レーシングが、まずはグリッド上の最年少ドライバーとなる16歳のマンツ・タリンを起用するとアナウンスした。
「チャンピオンシップが電動化する年に、こうしてエクシオン・レーシングからSTCCデビューするのはすごく楽しいだろうね。だって僕はすでに(STCC電動ジュニアシリーズの)NXT Gen Cupを経験しているから」と、昨季はそのNXT Gen Cupで年間11位、最高5位の戦績を残し、新たにBMW i4のステアリングを握ることが決まったタリン。
「これまでレースに出場したワンメイク車両(ミニ・クーパーE)と比べると本当に大きな違いがあり、BMWはドライブするのは本当に楽しい。コントロールしやすいと同時に、やりがいがある。他のドライバーが話しているように、ストリートタイヤは特別な感覚だけどそれは誰にとっても同じで、グリップレベルが限られ、制動距離が長く、パワーがたっぷりあるから良い勝負ができると思っているよ」
すでにチームはBMW i4のドライバーとして、2022年のSTCCデビューイヤーで総合12位を記録したカッレ・バーグマンと、同じくフォルクスワーゲンID.3の最初のシートには2022年KZカート世界チャンピオンの20歳、ヴィクトル・グスタフソンを抜擢しているが、さらに2022年にNASCARユーロシリーズで総合2位に入ったアレクサンダー・グラフとの契約も続けて発表した。
■盟主PWRレーシングが走らせるクプラは中段より後方に沈む意外な結果に
「電動レースカーへの歴史的な転換を成し遂げる今、こうしてSTCCに戻ってこられてとてもうれしいよ」と、自身2013年以来となるシリーズ復帰を決めた37歳のグラフ。
そのベテランはテスト初日にチームのBMWをドライブし、総合3番手を記録するなど電動モデルへの高い順応性も見せた。
「まだテスト段階だが、最初の走行後の感触は良いね。セッティングで正しい方向を見つけるための基礎を作り始めたが、新しいEVレースカーは思ったとおり運転するのが楽しい。チームにはライバルほどの経験がないかもしれないが、ここで貢献し、彼らと目的を持って協力してトップに上り詰めたい」
こうしてユンビヘッドで始まったテスト初日は、30分×2回のセッションを経てジミー・エリクソン(ブリンク・モータースポーツ/テスラ・モデル3)をわずか0.001秒差で破ったヴィクトル・グスタフソン(エクシオン・レーシング/フォルクスワーゲンID.3)が首位に立つ。
しかし明けた30分×3回のテスト2日目以降はテスラが猛威を振るう展開となり、電動化以降でのユンビヘッド最速タイムを記録したトビアス・ブリンク(ブリンク・モータースポーツ/テスラ・モデル3)が、僚友エリクソンとミカエル・カールソンを従えトップ3を独占する結果とした。
そのままスウェーデン南部クヌットストープへ場所を移したテスト最終日でもテスラを駆るブリンクがふたたびトップに立ち、チームメイトのエリクソンを0.058秒上回るタイムを記録。この日の5回のセッションのうち、ほとんどのドライバーは予選シュートアウト・シミュレーションを実施した4回目の走行でベストを計時し、まだ正式確定前ながら引き続きBMWをドライブしたオリバー・セーデルシュトレーム(エクシオン・レーシング/BMW i4)が総合3番手に喰い込んでいる。
テストを通じてシリーズの盟主たるPWRレーシングが運営するPWR・クプラ・スウェーデンは、不動のエースであるロバート・ダールグレンとアクセル・ベングトソン、そして鳴り物入りでSTCC挑戦を決めたラリークロスの欧州選手権2冠のEuroRX1王者アントン・マルクランドの3台ともに、平均して中盤以降に沈む意外な結果に。
レース・オブ・チャンピオンズ方式の“ヘッド2ヘッド”フォーマットが採用されるヨーテボリ市街の新生STCC開幕戦は、来月8~9日に幕を開ける。
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