1980年代、「クロカン」ブームを支えた4WDが、各自動車メーカーから続々と発売された。この連載企画では、今でいうSUVとは、ひと味もふた味も異なる「泥臭さやワイルドさ」を前面に押し出したクロカン4WDを紹介する。第14弾は「メガクルーザー」だ。
自衛隊の高機動車をベースにしたメガクルーザー
1996年から2001年までの6年間で販売されたメガクルーザーの登録台数は、132台。同じ頃に販売されていたランドクルーザー80は約55万台。雲泥の差どころの話ではない。なぜトヨタはここまでしてこのクルマを作ったのだろうか。その答えは「数」ではなく、「災害時の救助」「復旧作業や厳しい条件下での学術調査」「既存の車両では走行困難な状況下での活躍」ができる車両が求められたからだ。
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1993年、トヨタは陸上自衛隊から要請された高機動車を開発した。高機動車とは、陸上自衛隊が使用する人員輸送車両のこと。陸上自衛隊には、この車両をベースにした派生車両として、通信要員の輸送や機材積載に使用される「通信用」や自走式「誘導弾システム」など、現在でも多くの高機動車が現役で使用されている。そのクルマを民生向けにリメイクし、1993年の東京モーターショーに参考出品のが「メガクルーザー」だ。そして3年後の1996年に発売された。
4WSの採用でランクル80より優れた取り回し性能
その大きさは全長5090mm、全幅2170mm、全高2075mm。ホイールベースは、現行型ジムニーの全長とまったく同じ3395mmと、名前のどおりメガトン級だ。特異の存在感を持つスタイルは、アメリカ軍から民間向けに販売されていた「ハマー」を彷彿とさせた。ちなみにハマー(H1)は全長4686mm、全幅2197mm、全高1956mm。メガクルーザーは「和製ハマー」と称されることもあり、完璧な好敵手だった。日常で使うにはスケールが違い過ぎるが、消防署や地方公共団体などで活躍した。
ケタ外れなのは見た目だけでなく、全幅2170mmが作り出す車内空間も非現実的だった。フロントシートはベンチタイプではなく運転席と助手席は独立したセパレートシートで、運転席に座ると大広間の隅っこに座る感じだった。また助手席との間に大きなコンソールボックスがある都合上、同乗者とは思った以上に離れてしまい、まるでソーシャルディスタンスをとっているようだった。目線が一段高くなるリアシートは3分割式で横並びに4人が座ることができた。
いざ運転をしてみると、「大きさ」を除けばいたって普通のドライビングフィールだった。メガクルーザーはトヨタが誇る多彩な先進技術を詰め込められていたのだ。その代表が全車輪に対して能動的に舵角を与える、逆位相4WSの採用。これにより、最小回転半径はランドクルーザー80よりも0.4mも小さい5.6mを実現した。4輪駆動システムは、センターデフを持つフルタイム4WDで、前後デフロックや、トルセンLSDを備えて悪路走破性を確実なものにした。
パワーユニットは4.1Lのディーゼルターボエンジンのみ
またハブリダクション機能付きアクスルと37インチの大径タイヤの採用により、最低地上高は驚きの420mmを確保。さらにアプローチアングル49度、デパーチャーアングル45度という驚異の角度に加え、スパンと切り落としたようなスクエアボディのおかげで見切りもよく、障害物の乗り越え性能も高かった。さらにバネ下重量を軽減するインポート式ベンチレーテッドディスクブレーキやラダーフレーム、4輪独立のダブルウィッシュボーンを採用するなど、機能性も充実していた。
パワーユニットは、トヨエースやダイナにも搭載されていた4104cc直4ディーゼルターボの15B-FT型(最高出力155ps/最大トルク39.0kgm)を搭載。車両重量2850kgの車体を無理なく走らせるトルクフルなパワーユニットだった。このエンジンは1999年に行われたマイナーチェンジでインタークーラーを備えた15B-FTE型(最高出力170ps/最大トルク43.0kgm)に換装され、パワフル&クリーン化を実現した。
異彩を放ち様々なシーンで活躍したメガクルーザーは2001年まで生産され、車両価格は初期型が962万円、後期型が980万円だった。
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