2月20日から、鈴鹿サーキットを舞台にスーパーGTのメーカーテストがスタートした。GT300クラスのマシンは6台が参加したが、2020年からポルシェ911 GT3 RにスイッチしたHOPPY team TSUCHIYAが本格的なテストに登場した。ただ、1日目からエンジン系のトラブルに見舞われてしまった。
長年土屋武士監督をサポートしてきたホッピービバレッジの石渡美奈社長のひと言から、2020年に向けた新たな武器として、ポルシェ911 GT3 RにマシンをスイッチしたHOPPY team TSUCHIYA。富士スピードウェイのスポーツ走行を経て、2月20日からスタートした鈴鹿メーカーテストに参加した。
スーパーGT:鈴鹿でメーカーテストがスタート。新車・ニューカラーリングも続々登場
9時45分からスタートしたセッション1では、コースインとともに連続周回に入り、富士でのシェイクダウンから変更したセットアップの確認を行いながらテストを重ねていたが、セッション1の途中からエキゾーストノートがおかしい。それでもコースインを繰り返していたが、14時30分からスタートしたセッション2では1周も走ることができなかった。
セッション2の後、土屋武士監督に何があったのか聞くと、「エンジンがバラついてしまって、だましだまし乗っていたのですが……」と症状を教えてくれた。ただ、現代のGT3カーは自動車メーカーが作り上げたマシンで、電子デバイスはもちろんエンジンの制御もコンピューターで行われている。
「コンピューターがないと走らないクルマですが、僕はデータロガーも使ってこなかったので。自分たちでは直せない状況です。手の施しようがないですね」
本来レースウイークであれば、ポルシェのカスタマーサポートがつきトラブル等にも対応してくれるが、今回は帯同していない。
「とにかく今の問題はコンピューター。できる人、ポルシェの人がいないとできない領域があるので、まさにいま“壁”がある状態です。“昭和のチーム”はピンチです」
■開幕までに山積する課題も……
また、ドライバーの表情もそれほど明るくない。JLOC在籍時代にランボルギーニ・ウラカンGT3をドライブした経験をもつ佐藤公哉は「ウラカンとはちょっと近い部分もあります。ひさびさにエンジンが自分のうしろにある車に乗ったので、『こんな感じだったな』と思い出しながら乗りました」という。
今回GT3カーにスイッチしたことで、そんな佐藤の経験が活きてくる。「気付いた部分は武士さんと松井選手と共有しながらできれば」と、タイヤの開発も含め佐藤のフィードバックを松井とも共有しようという考えだ。特に、開幕まで走行できる時間も少なく、佐藤の経験を活かすことは時間を有効活用するためのひとつの手段と言える。
一方、これまでGT300では86 MCに乗った経験しかない松井孝允は「MCから比べると“ハコ車になった印象”が強いですね。コーナーでももちろん稼いでいくんですが、MCと比べると稼げる部分が少ない印象です。もちろんまだ走りはじめたばかりでスピードは足りないのですが、少し慣れが必要です」という。
当然、これから短い時間のなかで、ドライビングのアジャストに加え、やることは山積みだ。この日のテストでも出たように、トラブルを潰していかなければならない。GTワールドチャレンジ・アジア等でもこの新型ポルシェは走っているが、アジア特有の気候、特に日本の気候ではヨーロッパ製のGT3カーでは思わぬトラブルが出ることもある。さらに、2020年がGT300デビューとなるために、タイヤもはじめから開発しなければならない。昨年まで走っていたポルシェとは“別物”だからだ。
「タイヤについては、まだ正直分からないところが多いです。少し時間がかかりそうな気もしています」と松井は語った。
「時間という面では、佐藤選手がGT3を知っているので、少しでも時間を有効に活かせると思いますが……とにかく今は、時間がないです」
そして佐藤も「松井選手も言うとおり、マジで時間がないです」と危機感をあらわにした。
「僕たちだけあと6日間くらいテストしたいくらいです(苦笑)。ポルシェのスタッフにも来てもらわないと……。JLOCのときも、スクアドラ・コルセのエンジニアが来てから一気に良くなったこともありましたしね」
これまでは、経験と創意工夫でライバルたちと互角の戦いを展開してきたHOPPY team TSUCHIYAだが、新たな船出は時間がない中でトラブルが起きる、思わぬ嵐に見舞われた。ただ、厳しい船出もここから先はもう上がっていくだけ。「時間はないですが、のんびりやるしかないですね。仕方がない」と土屋監督は前を向いた。
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