■「AT限定免許」と「普通免許」の取得比率は?
普通乗用車を運転するのに欠かせない運転免許には、MT車も運転できる「普通免許」とAT車のみ運転可能な「AT限定免許」がありますが、面白いのはこの2種類の取得比率が都道府県別や地域によって意外に違いがあることです。
そこで今回は普通免許の多い県、AT限定免許の多い県を調べるとともに、その傾向の理由に迫ります。
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まずは、警察庁が公表している運転免許統計(令和5年)によると、全国の免許保有者は8186万2728人。
そのうち運転免許試験の合格者数は199万9892人で、最近増えている免許返納(正式には運転経歴書交付)などで差し引きすると、前年(令和4年)比で2万2179人の微増となっております。
一方で日本国民の総数は1億2614万人(令和2年時点)だったことから、国民の約65%が免許を保有している計算になります。
そのなかで普通免許とAT限定免許の新規取得者の比率を見ると、116万4801人中78万9713人がAT限定免許に合格。
これ以外にも、AT限定免許からMTも運転できるように「限定解除」された人数なども含めての数字なので多少ズレは生じますが、約68%近くの人が「AT限定免許」を取得しています。
そこで「AT限定免許の取得割合が多い都道府県TOP3」と「(MT可能な)普通免許取得割合が多いTOP3」を抜粋してみると、AT限定免許の割合が一番高いのは奈良県で、続いて大阪府、東京都がランクイン。
一方で普通免許の割合が多いのは、1位は茨城県、2位は青森県、3位は秋田県という結果になりました。
全体の傾向としては、道路整備の遅れが目立つ奈良県(一般道の道路整備率は全国で第46位、一般国道における国管理国道は全国最下位)はともかく、大阪府や東京都といった渋滞の多い大都市でAT限定率が高まり、農業も盛んな茨城県や東北地方では普通免許の割合が多いことが分かります。
そんな免許取得状況について、東京都で教習指導員として勤務していた経歴を持つI氏に聞いたところ、東京ではAT限定取得コースの教習生が半数以上を占めていたといいます。
またAT限定取得コースの教習生が多い理由について、次のように述べていました。
「今や販売されている新車のほとんどがAT車の日本市場では、MT車のスポーツカーに乗りたいとか、免許で乗れる車種を限定されたくないと思う人以外はAT限定を選んでも問題ないと考える方が多いといえます。
またAT限定取得コースのほうが、実技教習時間の短縮もあり早く安く取得できること、そもそもMT車に乗る機会がないこと、いざとなれば限定解除で済むことも踏まえて、煩わしいクラッチ操作やギアチェンジの必要が少ないというAT車ならではの運転のしやすさが大きく影響しているのでしょう」
では、なぜこのように地域によって傾向が違ってくるのでしょうか。
大きな要因として、その土地ならではのクルマを取り巻く環境が大きく影響している可能性が考えられます。
茨城県・秋田県・青森県で普通免許取得率が高いのは、普通車以外のMT車(軽トラなどの商用車)の稼働率が高いことも影響があるかもしれません。
そもそも商用車は運搬手段であり、対費用効果を考慮し安いMT車が今でも用いられています。
また交通網が整備されてきたとはいえ厳しい気象状況なども踏まえると、故障しても修理しやすいMT車を駆使する商用車が多く、そういったクルマを運転する機会が多いことが予想されます。
もちろん各地域のクルマ事情による影響はありますが、AT車のMTモードも日々進化しており、EV化が進めばMT車自体が消滅する可能性もあります。
もしかしたら数年後にはAT限定という区分自体が不必要になるかもしれません。
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