カローラ=世界で一番生産された日本車
text:Kumiko Kato(加藤久美子)トヨタ・カローラという、まったく新しいクルマが発売されたのは1966年11月5日のことだった。
【画像】違いがわかる? カローラ中国/アメリカ仕様 全50枚
発売時のプレスリリースは冒頭に「トヨタ技術陣が数年の歳月を費やし、技術の粋を集めて世に送るわが国大衆車市場の本命ともいうべき5人乗り乗用車である」と記されている。
第二次世界大戦での敗戦から21年。後に世界を席巻する日本の「大衆車」はこの時に生まれたのである。
1970年には販売台数累計が125万台となり、その後わずか12年後の1983年に1000万台を突破。この年にフルモデルチェンジを受け5代目となっており、この代から4ドアセダン系はFFを初採用、レビンやトレノ(いわゆるAE85/86系)にはFRを残した。
また、大衆車として世界初の4速ATを採用し、FFの利点を生かした使いやすい快適なパッケージングによって、日本を含めグローバルでも高い評価を得ることになった。
モデルチェンジが功を奏したのか?
翌1984年には国内572万台、海外574万台とついに海外での累計販売台数が国内のそれを超え、その後、海外での販売台数は倍速で増加。4000万台を達成した2012年には国内1230万台、海外2825万台と海外での累計販売台数が日本の約2.3倍にも達している。
発売から約50年となる2016年9月にはグローバル累計販売台数約4410万台を記録。もちろん、「世界で一番多く生産された普通自動車」だ。
なお、2017年の世界販売台数はカローラが116万495台、2位はホンダ・シビック(83万3017台)、3位がフォルクスワーゲン・ゴルフ(78万8044台)と、2位以下に大差を付けての堂々1位となっている。
中国、日産シルフィと日本車トップ争い
日本では今日、新型カローラが発表となった。中国では2018年11月開催の広州モーターショーでお披露目され、2019年5月から販売が開始された。
中国において、トヨタ・カローラは製造会社(トヨタと中国メーカーの合弁会社)によって高級感を持たせた「カローラ」(一汽トヨタ)と、スポーティなイメージの「レビン」(広汽トヨタ)の2車種がある。
日本でいうところの、「カローラ」「スプリンター」や「レビン」「トレノ」と同様でヘッドライト周りなどの外観に多少の違いはあるが、中身はほぼ同じ仕様だ。
この新型カローラ。5月の発売から非常に良く売れている。どれくらい人気かというと、2019年8月の販売台数ではついに日本車トップ(全体では2位)となった。
実は中国市場では圧倒的人気を誇る日本車がある。日本では地味な存在の、日産シルフィ(軒逸)だ。
昨年は中国市場にて純電車(EV)も追加発売されており、今年4月の上海モーターショーではフルモデルチェンジを受け新型となった。
2018年の年間販売台数では約48万台を販売して堂々1位。ちなみにカローラはこの時37万6000台で5位となっている。
そして2019年春からはシルフィとカローラの日本車トップ争いが展開されている。最新(2019年7月)の販売台数データでは、カローラが2万6049台で1位フォルクスワーゲン・ラヴィダ、2位フォルクスワーゲン・ボーラに続く第3位、シルフィは2万5008台で6位、レビンが2万2811台で8位にランクインしている。
カローラ・レビン合計ではシルフィの2倍以上の販売台数となる。
ちなみに、2019年1月以来の販売台数ランキングではレビンが10位内に入ったのは2019年7月が初めてなので、新型カローラ・シリーズがいかに好調かわかる。
カローラ販売 アメリカは50年以上の歴史
海外への輸出はデビューした1966年に早くも始まっており、豪州の次に北米への輸出も開始されている。
アメリカで売れている乗用車と言えば、トヨタ・カムリがほぼ毎年トップ、これにカローラ、ホンダ・シビック、ホンダ・アコードが続く。
くわえてトヨタRAV4、ホンダCR-V、日産ローグなどの日本製SUVが入り乱れて上位争いを繰り広げている。
近年はRAV4人気が高く、2018年には42万7000台を販売し、SUV/乗用車部門で堂々1位となっている。
セダンボディの新型カローラは、アメリカでも中国と同時期となる2018年11月のLAショーで発表された。
2018年では乗用車としてはカムリ、シビックに続く3位だったのが、新型カローラの販売が本格化してきた2019年5~6月頃からぐいぐいと販売台数を伸ばし始めた。
7月には前年同月比+14.5%でついに3万台を突破し、シビックもカムリも抜いてセダン系車種の1位を獲得している。
「アメリカでカローラが人気なのは燃費によるところが大きい」とされているが、それだけではない。
確かに、1990年代後半には1ガロン=1ドル以下で、「水より安い」と言われていたガソリンが2000年に入ると4倍以上に高騰。ここ数年は1ガロン3ドル前後で落ち着いているが、それでもかつての3倍以上。
さすがのアメリカ人も燃費を気にするようになった事実はあるだろう。
くわえて、絶対的信頼度の高い品質、そしてパーツ供給の速さも特筆すべきものがある。米国トヨタでは全米のほぼすべてのエリアで、部品を注文するとアメリカ国内に在庫があれば2日以内に届く仕組みを2016年頃から確立している。
日本では当たり前のように思うかもしれないが、国土が日本の約25倍もあるアメリカではすごい事なのだ。
ちなみに20~30年前のカローラと言えば、アメリカでは低所得層の移民が乗るクルマとしてもおなじみらしい。
選ぶ理由はずばり「古くても壊れない。壊れても自分たちで直せる」ことだそう。
東南ア、カローラ=クルマ好きの贅沢車?
タイ、インドネシアではとくに日本車率が高く95%前後を維持している。中でも特にトヨタ車の人気が高い。
しかし、主流はトヨタ・アバンザに代表される3列シートの7人乗り小型ミニバンで、タイやインドネシアでは、国民車と言えるほど圧倒的な支持を受けている。
そのような中、5人乗りセダンに乗っている人たちは「お金持ち」と認識されており、代表的車種であるカローラセダンに憧れる若者も多い。
ちなみに、東南アジアではカローラ(セダン)=トヨタ・アルティスの車名で販売されている。
アルティスと言えば日本ではカムリのOEMでダイハツ・アルティスがあるが中身は別物である。
インドネシアでは「カロリスト」と名乗る、熱狂的なカローラオーナーによるクラブ活動も活発だ。
「ALTIC」というクラブがその筆頭。2010年にわずか4名のカローラオーナーからスタートした倶楽部は現在1000人近いメンバーが在籍している。
日本では「実用車」のイメージが強くセダンボディのカローラをチューニングしたりカスタムしたりして乗ろうという人は少数派だと思われるが、国が変われば事情も異なるのだろう。親子2世代で20年30年乗り継いでいるという人も多い。
そしてこのクラブのスローガンは「not just brotherhood, we are family (仲間というだけではない、わたしたちは『家族』だ)」
これだけでも「アツさ」が伝わってくる。
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