TEAM MUGENの野尻智紀は、スーパーフォーミュラ第8戦鈴鹿の予選で14番手に沈んだ。決勝ではオーバーテイクを連発し追い上げたが、5位止まり。この結果、今シーズンのチャンピオン獲得の可能性は潰えた。
野尻はこの結果について「勝つためにここに来たのに、怒りの気持ちは大きい」として、日曜日(11月10日)に予定されている最終戦での巻き返しを誓った。
■波乱のレースも圧倒的強さ。太田格之進が今季初優勝、タイトル争いは坪井vs牧野の一騎討ちに|スーパーフォーミュラ第8戦鈴鹿
予選Q1ではB組で出走した野尻。しかしアタックに入ったところで木村偉織(San-Ei Gen with B-Max)がコースオフしたため、赤旗中断。残り3分というところからやり直しとなった。
野尻はすでにアタックに入り、スプーン付近まで差し掛かっていたが、アタックを中断させられることになった。そのため、スクラブ済みのタイヤを履いてやり直しアタックに向かうことになった。しかしタイヤを温めきることができず……セクター3とセクター4こそ全体ベストのペースで走ったものの、セクター1とセクター2の遅れを取り戻すことができず、Q1敗退となった。
「セクター1と2はタイヤが温まり切っていませんでした。(温度が)あるところまで差し掛かるかどうかが大事な局面だったと思いますが、残念ながらそこまでタイヤの温度を持っていけなかった……外的な要因があったとはいえ、そうなってしまったのは我々の弱さと捉えて、またひとつずつ頑張るしかないです」
そう野尻は語った。
「(予選再開時に履いたタイヤは)赤旗が出た時に使うという想定をして、内圧は完全に準備してありました。ちょっと低いかなくらいです。もうちょっと温度が上がれば最適になったと思います」
「(赤旗の原因となった木村に対しては)めちゃくちゃ良いアタックだったのに、ふざけんなよと思いました(笑)。赤旗が出てしまうと、用意していたスクラブを使わなくちゃいけなくなってしまう……Q2でも同じ状況が起こりうるので、やっぱり後手を踏んでしまうんですよね。勘弁してくれとは思いましたが、でもみんな限界までプッシュしているという証でもありますからね」
野尻が予選Q1でタイヤを温め切れなかったのは、アウトラップの逆バンクで太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)に抜かれ、その太田がペースを大きく落としたことも原因のひとつだった。この時の様子について、野尻は次のように語った。
「逆バンクでは、別に抜いていくだろうなとは思っていました。でもその後、彼はあからさまにペースを落としたんです。事を荒立てない程度のギリギリの線を突きながらやってきたんです。その時は『なんなの?』と思いました」
「ヘアピンを抜けて、僕もバックオフして前との距離を空けたんですが、彼は全然加速していかなかった。シケインでも、誰かに詰まる可能性はないのに、彼はかなりゆっくり走っていました。そんなにゆっくり走るんなら、おとなしく後ろにいけばいいじゃんと思いましたよ。なんで人に迷惑をかけようとしているのか……そのマインドが気に入らないというだけです」
「そんな中で、タイヤを温めようと自分なりを努力はしたんですけどね」
しかし14番グリッドからスタートした決勝では速さを見せ、オーバーテイクに次ぐオーバーテイク。最終的には5位でフィニッシュした。
「少なくともここに来るまでに色々と準備してきて、このレースを勝つためにやってきました。だからこそ、やっぱり怒りの気持ちは大きいし、その気持ちを明日のレースにぶつけたいと思います」
レースを終えた野尻は無線で、かなり強い言葉でその気持ちをあらわにした。後にその言葉については「ごめん、強く言いすぎた」とチームに謝罪したが、そんな素の気持ちを表すことも、モータースポーツらしいのではないかと、野尻は語った。
「無線では語気が強すぎたというか、だいぶ言葉が悪かったところも多かったかなと思います。でもそれも、レーシングドライバーらしくていいのかなと、自分で言い訳しています」
「でも決勝レースに関しては、しっかりタイトル争いをしているひとりなんだぞというレースは少なくとも見せられたかなと思います。自分の気持ちと、自分の速さと強さを示すことはできたと思う」
「ただ、足りない部分もありました。チャンピオンシップについては今日だけの話では当然ないですからね」
「でも今日は自分たちが準備してきたモノを出せなかったという憤りがものすごく大きいというところがあります」
「明日のレースを勝ったからといって、この気持ちが晴れることは確実にないんですが、少なくとも今まで頑張ってきて、みんなの力を合わせてやってきていたんで……負けても、声をかけてくれるお客さんも本当にたくさんいたので、そういう方たちのためにも、最後少しでも笑って終われるように、もう一回気を引き締め直して頑張りたいと思います」
野尻は今回のレースについて、それぞれのドライバーの”是が非でも勝ちたい”という想いが滲み出ていたと感じているようだ。
「このチャンピオンシップ、そしてこのひとつのレースを、みんながそれだけ勝ちたいという想いが強いレースだったというのは、間違いなく言えると思います」
「そういうことは、これからのスーパーフォーミュラだったり、モータースポーツの発展というか人気拡大・向上には欠かせないモノだと思っています。だから、それはそれでいいことですよね!」
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