今回取材したのは、平成生まれのクルマ好きの姿を世に発信するため、「平成カーラバーズ」という団体を立ち上げ、2019年7月12日に団体の名を同じ本を発売した加藤祐馬氏。
取材を行った日、加藤氏は代々木公園ケヤキ並木(東京都渋谷区)で開催されたファッション・アートイベント「BE Vint-Age 2019」に愛車のワーゲンバスを展示していた。「芸術」をテーマにした一見クルマとは関係のなさそうなこのイベントに、なぜ加藤氏は愛車を展示していたのだろか。
平成生まれの20代のクルマ好きから見た、令和時代の日本のクルマ事情とは?
その背景には、物静かで落ち着いた雰囲気に隠された「クルマ好きを増やしたい」という熱い想いと、クルマ好きを増やすための彼の戦略があった。
クルマ好きになったきっかけとは?
長尾:加藤さん、本日はよろしくお願いいたします。
加藤:こちらこそ、よろしくお願いします。
長尾:早速ですが、加藤さんがクルマを好きになったきっかけを教えてください。
加藤:もともと親がクルマ好きで、父もよく家で雑誌を読んでいたので、自然と影響を受ましたね。僕も元々動くものが好きでしたし、触れる機会の多かったクルマに興味をもつようになってましたね。
長尾:やっぱり親御さんの影響は大きいですよね(笑)。そのとき、周りにクルマ好きの友人はいたんですか?
加藤:そういう友達ができたのは大学生のときでした。運転免許も、4月に大学入ってから、教習の予定をガンガン詰め込んで、5月に取得しました。
長尾:それはかなりきついですね(笑)。そんなハードスケジュールをこなせるほどクルマが好きだったのですね。
加藤:高校まではクルマ好きの友達がいなくて「一人で悶々と好きな状態」だったので、大学で急に活発になった感じですね。2年生になってからは、親父のステーションワゴン・ステップワゴン・ビート・自分のフィットのどれかを気分で選んで通学してました(笑) 。
長尾:それはますますのめりこみますね(笑)。
加藤:あとは、ドイツ語の女性の先生がクルマ好きで、青色の鬼キャンの180SXで通勤されてました(笑)。クルマ好きの友人2人と、私、先生の4人でよくクルマの話しをしましたね。
なぜ平成カーラバーズを立ち上げたのか?
長尾:平成カーラバーズを立ち上げたきっかけについてお聞きしたいです。
加藤:去年が平成最後の年だったじゃないですか。「クルマ好きって、元号が移り変わるように、過去に忘れ去られてしまうのかな…」とふと思ったんです。そこで、まだまだ若いクルマ好きはたくさんいるということを伝えたいと思ったことがきっかけですね。
長尾:クルマ好きの存在を世間にアピールしていきたいという発想、大変素晴らしいなと思います。もともとそういった課題意識があったんですか?
加藤:たぶん潜在意識としてはあったと思うんですけど、自覚はなかったですね。「#平成最後の夏」ってハッシュタグがツイッターで流行ったじゃないですか。そのタグがついてる呟きって、「自分は主人公じゃない」「皆は楽しそうだな」っていう気持ちが見え隠れしてて、それで「クルマ好きが主人公になる本を作ろう」と思いました。それで平成カーラバーズを結成して、「令和になる前に出したい」と思い、1ヶ月後にはクラウドファンデクラウドファンディングにチャレンジしました。
長尾:相当なエネルギー量ですね。失礼かもしれないですけど、加藤さんよりもクルマ好きでありながらも、ここまで行動できる人って多分少ないと思うんですよね。なぜ、実行してみようと思ったのか、そこが気になります。
加藤:ただ単に思いつきですね。明確に目的や行動指針があったわけでも、長期的な計画があったわけでもない。将来、経営者になりたいとかもなく「そのタイミングで、やったら面白いんじゃね」みたいな素直な気持ちでやりましたね。
長尾:本当に純粋な気持ちで、気が付いたらやってしまったんですね!本心からクルマが好きな気持ちがあるんだろうなって思いました。
加藤:あとは知的好奇心ですかね。リアルとインターネットの間には境界線ができちゃってるように見えて。クルマ系SNSとかでクルマ好きのコミュニティって割と発達していてネットでは知られているけど、リアルでは人には知られていない。それをミックスさせたらどうなるんだろうなって。
長尾:たしかに、それもとても興味深いですね。デジタルとアナログの両方のコンビネーションによって、両方の良いところを取り入れてより良いものができそうですね。
「平成カーラバーズ」を発売して感じた変化とは?
長尾:では、ネットのものをリアルに持ち出して、化学反応を起こした結果としては、どんな反応があったのでしょうか?
加藤:たとえば女の子のロードスター乗りとかダートラをやってる子を取材したのですが、あまりネットを見ない大人の方々から「こんな子が案外いるんだ」っていう感想を多くもらいましたね。若いクルマ好きの存在感が広まった気がします。
長尾:それは素晴らしい結果ですね!加藤さんの期待していた効果がありましたね。
加藤:若いクルマ好きのプレゼンスが高まって、イベントとかも若者が主体的に開催するようになりつつあると思ってますね。本を読んでくれて、自分もここまでやりたいと思っていましたと言ってくれた若い子もいました。エネルギーが伝播してムーブメントが起きているような実感がしますね。
長尾:とても嬉しいですね!この動きがどんどん伝わって、クルマ業界全体を盛りあげていきたいですね。
今後、クルマ文化を遺していくためには?
長尾:活動を通して、この先に見えてきたものはなんでしょうか。
加藤:趣味全般にいえることかもしれないですが、クルマ趣味はメーカー発信じゃ消費者に伝わらないのかなと思っています。
長尾:それはなぜでしょうか。
加藤:やっぱりメーカーが発信すると、商売だから、となってしまうので。ユーザーならメーカーの伝えきれない良い所・悪い所を発信して、クルマのあるリアルな生活を想像させやすいんじゃないかなと思います。そうしないとクルマ文化・クルマ趣味は多分存続していかないだろうなと。クルマに興味をもつきっかけとして有効なのは、「身近なインフルエンサーの存在」なので。
長尾:なるほど。様々な領域でインフルエンサーマーケティング・コミュニティマーケティングは主流になりつつありますもんね。今日このイベントに出展されているのも、意図があるのでしょうか。
加藤:クルマ好きをどうやって増やせばいいのかな、と思ったときに、クルマ系のイベントに来る人は大体クルマが好きだから、「クルマ好きじゃない人がどうやったらイベントに来るか?」「クルマ好きがどうやってクルマ系じゃないイベントに関わるか」が大事だと思っています。今日のイベントはテーマが「芸術」なので、ワーゲンバスをデコレーションしてお洒落に芸術っぽくしてみました。それを見てくれた人が「なんか可愛い」とか些細な反応でもいいから少しでもクルマを見てくれて、そこから一人でもいいから興味をもってくれればいいなって。
長尾:クルマ系じゃないイベントに出ていくって、とても勇気が要るしすごいことですね。「クルマ好きを増やしたいから、クルマ好きじゃない層をターゲットにする」というパラドックスのような発想は、なかなか思いつくものではないと思います。やはりカーラバーズの活動を始めてからこういう視点をもつようになったのでしょうか。
加藤:元々のカーラバーズの活動って、クルマ好きの方からご支援をいただいてクルマ好きの本を出版したっていう形に近くて、今日のイベント出展はまったくクルマと関係ない人から声をかけてもらった活動なんです。結果的には、クルマ好きに向けた活動とクルマ好きじゃない人に向けた活動が並行してましたね。
長尾:じゃあ、少し異なる活動ではあっても、クルマ好きを増やしたいという想いや目的は加藤さんの中で明確なんですね。
加藤:やっぱりそうですね。平成カーラバーズで11月9日に行うイベントは、クルマ好きの人はもちろん、クルマ好きじゃない人にも目を向けて、休憩スペースにグランツーリスモのゲームとか女性雑誌を置いたり、ワーゲンバスの中は子供用のスペースとして開放したら面白いじゃん、という構想で考えてます。
長尾:それはとても面白いですね!クルマ好きじゃない人にも楽しんでほしいっていうおもてなしの心が、来てくれた人の心をつかむと思います。クルマ好きがちょっとでも増えたらいいですね。
加藤:やっぱりクルマ文化が存続してほしいからこそ、外側に向けて発信していかなきゃいけないなっていう使命感がありますね。この文化が無くなるのが嫌だから、自分が動かなきゃなっていう想いでやってます。
長尾:誰かがやらなきゃ、誰も動かないですもんね。加藤さんが起爆剤となって、今後もクルマ好きを増やすムーブメントが盛り上がると、クルマ好きの僕にとってもとても嬉しいです!今後とも応援しています!
加藤:ありがとうございます(笑)。
加藤氏の取材を終えて
物静かで柔和な性格の加藤氏だが、そんな雰囲気からは想像が難しいほどの、クルマ好きを増やす活動への熱い情熱がひしひしと伝わってきた。同世代のクルマ好きとして、仲間を増やそうと活動する者として、加藤氏の考え、発言、行動は全て一貫しており、非常に心強い存在だ。
今後彼がどのような新しいクルマ文化を切り拓いてゆくのか。この先も注目しておきたい。
※平成カーラーバーズが11月9日(土)行うイベント詳細については下記をご覧ください。
イベントのお知らせ:平成カーラバーズMTG 2ndについて
■平成カーラバーズMTG 2nd イベント詳細
日時:2019年11月9日(土)
場所:イエローハット新山下店 屋上駐車場
住所:〒231-0801 神奈川県横浜市中区新山下1-17-39
TEL:045-628-1234
営業時間:AM9:00~PM9:00
地図:http://sasp.mapion.co.jp/b/yhat/info/BA000820/
イベント詳細:https://heiseicarlovers.amebaownd.com/posts/7126111
お問い合わせ先:
TEL:09091526516(代表 加藤)
mail:heiseicarlovers@gmail.com
■平成カーラバーズ Website
https://heiseicarlovers.amebaownd.com
■平成カーラバーズ twitter
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[ライター・カメラ/長尾 孟大]
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