日本では’17年モデルを最後にラインアップから消えていたが、’21年型で3代目に生まれ変わったスズキ ハヤブサ。最高出力は下がったものの実質的には新型が速いという話は本当なのか、超高速域での性能も比較してみたいところ。そこで舞台をJARI(日本自動車研究所)テストコースに移して、新旧の実力を検証した。
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―― 【テスター:丸山浩(左)】長年にわたり本誌メインテスターを担当する丸山浩氏。元全日本レーサーとしても知られているが、実は2輪旅の経験も超豊富。今回は、まとめ役として同行したライターの田宮徹氏(右)とともに、公道ではあくまでも”日本のツーリングシーン”を前提に新旧ハヤブサを比較試乗した。
180km/hの弾丸巡航も中間加速も新型の勝ちだ!
まずは50~150km/hまで、2速/4速/6速での中間加速を測定。
丸山「既にエンジン回転が上がっている2速はもちろん、2000回転以下からのスタートとなる6速でも、トルクのある新型が出だしから前に出ていく。最初こそじんわり離していく感じだったが、5000回転を超えたあたりから新型はパワーがモリモリ盛り上がり、そこでグングンと差をつけて前に出ていく。2速で約0.1秒/4速で約0.3秒/6速で約0.4秒の差と、いずれも明らかに新型の勝ちだ」
次に高速周回路を180km/hで15分間連続巡航。体感性能を調査した。
丸山「あらためて旧ハヤブサも素晴らしいなと感じさせた。そんなに伏せなくても高いスクリーンと大柄なカウルで快適に高速巡航ができる。一方、新型のスクリーンは旧型より低く、超高速域で風を避けるにはより伏せる必要があった。ただスッポリとマシンに身体を収めたときの決まり具合は抜群。風切り音についてはカウルも大柄な旧型より少なく、ミラーも180km/h付近では旧型は次第にブレて見えにくくなるのに対し、新型はしっかりしていて視認性は良好なまま。下半身に受ける風圧も新型はうまく逃がしていた。新型はスポーツ寄りに狙った方向をちょっと変えた感じか。全体的には新型の方が洗練された印象を受けた。新型は高さのあるオプションスクリーンに代えてあげると長距離では疲れないかも。エンジンの静粛性もゴリゴリした感じの旧型に比べて新型が上だ」
ついでに1周全開で測った新型の最高速は297.34km/h。300km/hマシンとしての実力も健在だった。目的地までバビューンと一気に飛ばす究極の弾丸性能では、進化に磨きのかかった新型が際立っていたという結論だ。
◆低中速域の違いが数字に表れる結果に
中間加速とゼロヨンにおける実測データは下のとおり。今回の旧型は国内仕様のため、途中で180km/hリミッターが作動し11秒006に終わったが、50-150km/hの結果を見るかぎり、いずれにせよ新型の方が低中速域から車速を乗せて一気に旧型を突き放す結果となっただろう。ちなみに旧型のヤングマシン最高記録は’11年輸出仕様の10秒390だった。
―― 加速&最高速度計測結果
―― 50~150km/h中間加速測定結果
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―― 【テストコース:日本自動車研究所(JARI)】JARIの城里テストセンター(茨城県)を使用して新旧ハヤブサの実力を比較。全長5.5kmを誇るオーバル高速周回路とストレート長1.5kmの総合試験路で、最高速と180km/h連続巡航および50-150km/hと0-200m&400mの加速性能をテストした。
―― 【GPSロガー デジスパイス3】実測データの計測にはおなじみマルチGPSロガーのデジスパイス3を使用。今回は0-400m加速、中間加速、最高速の測定を行った。 https://dig-spice.com/jp/
ゼロヨン勝負もプリセットのAモードで本誌歴代最高記録だ!
2本目の相手はNinja H2だ。
丸山「1本目は6000回転がバーンナウトの際に切れてしまっていたので、今回は8000回転にセット。でも、スタートの際にちょっと早めにつないでしまったのか、スタートはまだ完璧とはいえない。電子制御をしっかり操るテクニックも必要だね。それでも10秒1とタイム更新。そもそも旧型ハヤブサでは10秒台前半がヤングマシンでテストした最高記録。2本目にしてこのタイムはかなりスゴイ。ということで、見事にH2を下してしまった。相手はビックリしただろうなあ」
そして最後の3本目。
丸山「どうしても自分の感覚に頼りがちになるので、電子制御の設定はマシン任せのスズキ標準Aモードで行っちゃいましたよ。そうしたら、なんと10 秒017で最高タイム! 街乗りテストではAモードが一番といっていたのに、ゼロヨンでも一番とは驚いたね。実に新型の制御が優れているということを感じさせられた。クイックシフターは3本とも使ったけど、これがまた任せたまんまでOK。シフトアップするたびにカーンと後ろから叩かれるように前に出ていくのが最高だ」
ちなみに最終的なタイム=10秒017は、JARIでのヤングマシン歴代記録でCBR1000RR-Rを抑えてなんと1位をマーク。カタログスペック上では表せない真の最速性能を持ったマシン、それが新型ハヤブサの実力だった。やっぱりハヤブサ最強説はこれからも続くのだ。
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◆サーキット走行のポイント:SDMS-α〈Aモードで誰もがゼロヨン10秒台?!〉
新型で大きく進化した電子制御。ライディングモードであるSDMS-αは、電制スロットル&6軸IMUを採用し、プリセット3モード+ユーザー設定3モードを用意する。各制御の設定幅は広くトラコンとアンチリフトは各10段階+オフ、エンジンブレーキとシフターは各3段階。標準最強Aモードでも10秒台を記録だ。
―― [写真タップで拡大]
◆実測パワーチェック:それでも羊の皮を被ってる?!
下のグラフはトリックスターが計測した新型ハヤブサとNinja H2 SXのシャーシダイナモデータだ。どちらも4速3000回転から計測スタート。後軸計測なので約10%のロスがある。ハヤブサのピーク域は、まさに意図的にカットされたかのような台形カーブ。また低中域についてもH2SXはスーパーチャージャーが効いているとはいえ、ハヤブサが大きくロスしているのは、体感的にも加速しないのでまだ電子的に制御されている可能性が。
―― ※計測協力:トリックスター
トリックスター鶴田竜二氏のセカンドオピニオン:最速狙いに強力なライバル。無駄肉を削いだメガスポーツで、眠っている実力も高い
「今回、丸ちゃんと一緒に新型ハヤブサに乗ってみて、その確かな進化ぶりが感じられたね。2速から4速のフル加速では全然旧型よりトルクフルで良かったし、吹け上がりも軽かった。予想していた通りエンジンのスペックでは馬力こそ上げてないけど、それは制御である程度抑えているということもあらためて体感的にもハッキリと感じとれた。というのも、実はトリックスターでは、既に新型ハヤブサをシャーシダイナモにかけて、最高出力を測っていたんですよ。そこでも低中回転の立ち上がりは旧型を上回っていたし、上の方ではFIのバタフライが開ききっていないようなバッサリとパワーが切られている傾向がグラフに現れていた。
それに新型がスゴイなと思ったのは、その車体の完成度。車重によるものだけでない軽さが感じられた。カウルのフォルムもすごく空力を考えて、なおかつデザインもうまくまとめている。特に高速周回路のバンクから直線に抜けていくときは、キレイに風を裂いていくんですよね。無駄な肉がそぎ取られて車体のスタビリティ/ハンドリングが向上している。高速域ではスクリーンが低くなって、より伏せる必要性は出てきて、もはやメガツアラーという感じではなくなった気もするけど、僕はキライじゃない。よりライダーとマシンの一体感が高まったメガスポーツといった感じだ。このあたりはニンジャH2 SXの方がツアラーらしい性格になっているね。
エンジンのポテンシャルは相当眠っていると思うので、イジると相当速くなるだろう。でも、それも空力が優れていないと本当に速くはなれない。ボンネビルに行くとけっこうハヤブサは多いんですよ。やっぱり空力の良さと1300ccという排気量の余裕さで選ばれるんでしょうね」
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―― 【鶴田竜二氏】カワサキ ニンジャH2改でボンネビル最高速記録更新を狙うトリックスターの代表。張り合いがいのあるライバル登場に、さらなる闘志を燃やす。高速周回路でのテストでは、鶴田選手が丸山氏とともに新旧ハヤブサでアタックした。 [写真タップで拡大]
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