レッドブルの共同創設者であるディートリッヒ・マテシッツが亡くなってから丁度1年、彼のF1チームであるレッドブル・レーシングはその輝きを失う気配を全く見せていない。
2023年シーズンもレッドブルは3年連続でマックス・フェルスタッペンがドライバーズタイトルを獲得し、チームとしてもコンストラクターズタイトル2連覇を早々に決めており、その勢いは衰え知らずといった様子だ。
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その一方で、舞台裏では幹部レベルで大きな変化があった。新しい人事に関する変化は外部からの不安を煽るモノ……ここ最近で囁かれるF1チームトップによる権力闘争の可能性を煽る一因となった。
しかし、この憶測は事実に基づいているモノなのだろうか?
■新たなマネジメント
マテシッツのような絶対的影響力のある人物が亡くなったことで、レッドブル・グループはF1チームの運営方法や本社との連携に関して内部の変更を強いられた。
マテシッツの死後、レッドブル・グループの株式はマテシッツの息子であるマークが49%、もうひとりの共同創設者チャリアオ・ユーウィッタヤーの息子チャレームが過半数を握っている。
またレッドブル・グループの新CEOにはオリバー・ミンツラフが就任した。彼は以前、レッドブルのサッカープロジェクトに携わっていたが、F1の世界にも明るい人物だ。
この変更をキッカケにレッドブルのF1プロジェクトが見直された。結果として、将来に向けたF1における全面的なコミットメントが表明され、若手育成を目的とした姉妹チームであるスクーデリア・アルファタウリのあり方にメスを入れ、チーム刷新と改善が推し進められることとなった。
ただ、話はそれだけでは終わらない。第19戦アメリカGPを前に、レッドブルF1上層部の権力闘争に関する噂が浮上した。
ブラジルの日刊紙Globoは、レッドブル・レーシングのチーム代表を務めるクリスチャン・ホーナーが、レッドブル・グループでモータースポーツアドバイザーを務めてきたヘルムート・マルコを追い出そうと画策していると報じたのだ。
以前からホーナー代表とマルコの間には緊張関係があったとも言われている。チーム内部での御家騒動となればコース上でのパフォーマンスにも影響を及ぼしかねないが、ドライバーのフェルスタッペンはこうした噂をすぐに否定した。
「外から見た限りでは、みんな基本的にくだらない話をしようとしているだけだ。チームの雰囲気はとても良いと思うからね」
「誰もが自分の役割を正確に理解している」
フェルスタッペンはそう語るが、火のないところに煙は立たないというのも事実。この噂に関してマルコが興味をそそるコメントを残したことで、チーム首脳間の関係性に関する憶測にさらなる拍車がかかった。
「私には2024年末まで契約があるし、最終的に決めるのはクリスチャン・ホーナーではなく株主と私だ」
マルコはmotorsport.comの姉妹サイトであるMotorsport-Total.comにそう語った。
この発言は、ふたりの間に潜在的な緊張関係があると認めたと解釈されてもおかしくない。しかしホーナー代表曰く、これは実際に起きていることを映したモノではないという。
企業の宝
マテシッツの死後、レッドブル内でのマルコの役割は変わったかもしれないが、ホーナー代表はふたりの仕事のやり方にほぼ変わりはないと明言する。
「多くの勝利を挙げることの弊害のひとつには、その年のある時点になると、みんなの書くことがあまり無くなってしまうことがあると思う」
ホーナー代表はレッドブル内での権力闘争の噂についてそう語った。
「我々が他のチームと争っていない時に、他人が石を投げるのはとても簡単なことだ。ソーシャルメディアという新しい世界で、こういった噂がこれほど広まるとは驚きだね」
「しかし何も変わっていない。知っての通り、ヘルムートは友人であり仕事仲間のディートリッヒを失ったが、彼はいつも通りアクティブだ。私は彼の意見を大切にしている」
「F1のビジネスで起きるどんな大きな問題についても、我々はほぼ毎日話をしている」
「我々は強い協力関係を常に享受してきたし、強い関係を築いてきた。それは何も変わっていない」
しかしホーナー代表とマルコの間には明確な食い違いが見られる。成績不振にあえぐセルジオ・ペレスに関する最近の発言に聞かれる通り、しばしばマルコが率直な意見を口にすることで“炎上”し、レッドブル内部で軋轢を生むことがある。
そうした場合、火消しに回るのはホーナー代表の役目だが、彼は率直なマルコに価値を見出している。そしてレッドブルがF1のトップに君臨し続けるためには、レーシングチームとして迅速な対応が必要であり、マルコが今後も重要な役割を担っていくと語った。
「ヘルムートと一緒にいてひとつ思うのは、彼が残酷なほど正直だということだ」とホーナー代表は言う。
「そしてヘルムートと共に仕事をしていて思う素晴らしいことのひとつは、自分の立ち位置を正確に把握できることだ。我々は常に強力かつ密接な協力関係を享受してきた」
「ディートリッヒとの関係を通じて、我々、そして私は自由にビジネスを運営することができるようになった。そのおかげで、自由にビジネスへ取り組むことができた」
「迅速かつ果断に決断を下すというレースチームとしての本質を維持することができた。それはこれからも続けていくが、少し違ったやり方にはなる」
「ひとりの人物を介して会長に伝えられるのではなく、今では株主を巻き込んだより広範な話し合いが行なわれるようになった」
株主のサポート
マテシッツの死後、報告体制が変わったとはいえ、取締役会やミンツラフCEOとの関係では以前と同様に上手くいっているとホーナー代表は言う。
「我々が迅速かつ果断に行動する必要がある時、彼らは建物の買収であれ、迅速に行なう必要がある決定であれ、絶対にそう対応してくれた」とホーナー代表は言う。
「チームという観点から言うと、基本的には何も変わっていない。レッドブル・レーシングとしては本当に何も変わっていないし、我々は自分たちのビジネスに向き合って、自分たちの仕事をしている」
「もちろん、アルファタウリに関してはチームを売却しなくないという株主の絶対的なコミットメントがあり、少し変化があった」
「だからレギュレーションの枠内で許されるシナジーを最大限活用するために、レッドブル・レーシングとより密接に連携するよう経営再建が行なわれた」
良い警官と悪い警官
今回の騒動で理解すべき重要なことは、ホーナー代表とマルコは性格が異なるが、似た性格の人物を上級職に置かないことで組織は発展するということだ。
レッドブルは時に、“良い警官”と“悪い警官”のような首脳陣の構図から恩恵を受けてきた。ホーナー代表もそこから得られたモノがあるという。
「我々は多くの点で全く異なる人間だ。しかし他と共通している部分がある。それはチームへの情熱、勝利への願望、勝利へのコミットメントなどだ」とホーナー代表は言う。
「しかし、全て進化するものだ。今のレッドブル・レーシングを見てみると、レッドブルがF1に加わった時と比べて、大きく変わっている」
「レッドブルがジャガーを買収した当時は400人強だった従業員も、今ではグループ全体で1600人以上になっている。大きなビジネスであり、進化している。私がこの仕事を始めた頃と今を比較すると、2005年に仕事をしていた頃よりもはるかに多くのことをやっている」
ホーナー代表は、レッドブルが組織としてこの1年間変化に適応してきたとして、不安を感じていないと言う。そして、チームが前進し続けるために必要なモノを彼が手にしていると考えている。
「レッドブルが主力ビジネスで成功を収め続けている通り、私にも自由と自律が与えられている。それがF1ではとても重要だ」とホーナー代表は言う。
「それが、レッドブルが過去20年以上に渡って成功を収めてきた理由のひとつだ。我々には絶大なサポートがある。新しい風洞に投資を行ない、両株主の署名も得ている」
「我々は施設とキャンパスに投資している。才能ある人材を惹きつけ、育成するための本物のテクノロジー・キャンパスにしようとしている」
「だから何も変わっていない。我々の強さと深みは常に人材である、というコミットメットは絶対だ。これまでで最も強力なテクニカルグループを手に入れられたと私は思っているよ」
「運営面でも強いと思う。組織的な弱点は見当たらない。だからといって改善できないという訳ではないと思う」
「常に改善し学ぶことはある。しかし、レッドブル・レーシングはこれまでで最高の状態にあると思う」
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愛知の将軍様がブチ切れた事件を思い出す