エンジンをかけよう
フォードのスモールブロックV8、ロータスのツインカム、ポルシェの空冷フラット6など、市販自動車には素晴らしい「エンジン」が数多く搭載されてきた。1年に1度、その中から最高のエンジンを決めるべく、インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤーが開催されている。
【画像】優れたエンジンが評価された市販車【インサイトやポロGTI、488 GTBなどを写真で見る】 全85枚
各国の評論家やジャーナリストが審査員となり、さまざまなメーカーの市販車に搭載されるエンジンを吟味し、特に優れたものを選び出す。厳密に言えば、内燃機関に限らずテスラの電動パワートレインも受賞歴がある(部門賞)。
自動車史を振り返れば、称賛に値するエンジンは枚挙にいとまがない。そこで、今回は1999年から開催されているインターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤーの受賞歴を振り返る。
トヨタ 1.0L(1999年)
1999年、記念すべき第1回インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤーで、晴れて総合賞と「サブ1.0L」部門を受賞し、頂点に立ったのはトヨタの1.0Lエンジン、1SZ-FEだ。
ヤリス(ヴィッツ)に搭載された排気量998cc、最高出力68psのエンジンは、約20km/lの低燃費とパフォーマンスが高く評価された。ある審査員は「もっと大きなエンジンのような性能を持ちながら、信じられないほど効率的だ」と評している。1999年10月には、このエンジンの1.3L仕様も登場した。
ホンダ 1.0L IMA(2000年)
ホンダ・インサイトの1.0L IMA(インテグレーテッド・モーター・アシスト)ハイブリッドは、フェラーリの5.5L V12、アルファ・ロメオの2.5L V6、BMWの3.0L直6と4.0L V8ディーゼルを抑え、2000年の王冠を手に入れた。日本勢としては2年連続の受賞である。
審査員の一人、スティーブ・クロプリー(AUTOCARの英国編集長)は、このユニットを「普通の人が買えるエレガントなソリューション」と表現した。995ccの3気筒エンジンは、右足を軽く動かすだけで、最高40km/lもの燃費を達成することができた。
BMW 3.2L直列6気筒(2001年)
3回目のインターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤーの頂点は、ドイツに奪われた。栄冠を手にしたのは、BMWの3.2L直列6気筒。E46 M3にベストフィットするエンジンで、最高出力348ps/7900rpm、最大トルク40kg-m/4900rpmを発揮し、最高速度は250km/hに達する。
当時のAUTOCARはこう書いている。「アイドリング時のクワッドエグゾーストの不機嫌な唸り声は、レッドラインに近づくにつれて、鋸歯状の慟哭へと変わる」
BMW 4.4L V8(2002年)
BMWはN62型4.4L V8エンジンで二冠を達成した。こちらはバンク角90度のオールアルミニウム製V型8気筒エンジンで、可変バルブリフト・システムであるバルブトロニックなど、技術的な進歩を遂げている。BMWの745i、X5 4.4iスポーツ、545i、645Ci(写真)などに搭載された。
AUTOCARの英国記者アンドリュー・フランケルは、X5 4.4iスポーツへの採用について、「魅力的なパフォーマンス」を実現すると述べている。N62型4.4Lは4.8Lへと発展し、ヴィーズマンGTやモーガン・エアロ8など他社モデルにも採用されている。
マツダ 1.3L レネシス(2003年)
マツダRX-8の中古車ガイドでは、ロータリーエンジンについて「調子が良くても維持費が高い」という趣旨の記述をよく見かける。確かに、ガソリンよりもオイルを消費する能力は印象的だ。しかし、いくらデメリットを書き連ねても、ロータリーの美点が損なわれることはない。
エンジン・オブ・ザ・イヤーの審査員は、「ワンケルの形式を追求し、成功させたマツダの勇気」を賞賛するとともに、「スムーズで力強く、クリーンでコンパクト」なエンジンであると評した。1.3Lレネシスに代わるユニットは、ロータリーエンジンしかないだろう。
トヨタ 1.5L(2004年)
トヨタ・プリウス(2代目)に搭載されたハイブリッドシステムが総合優勝と3部門を制覇。プリウスはさらに、同年に北米カー・オブ・ザ・イヤーを、翌2005年には欧州カー・オブ・ザ・イヤーを受賞した。欧州では58人の審査員のうち、37人がプリウスを最優秀賞に選んだ。
BMW 5.0L V10(2005年)
1999年以来、BMWはエンジン・オブ・ザ・イヤーで合計62のトロフィーを獲得し、その技術力の高さを見せつけている。そして2005年の優勝は、四冠の幕開けとなった。
F1にインスパイアされた5.0L V10は、史上最高のエンジンの1つとされ、「ノーマル」モードでは400ps、「M」モードでは507psを発揮する。このエンジンを積んだM5は、最後の自然吸気モデルであり、個性的なスタイルでワイルドに走り去っていった。
BMW 5.0L V10(2006年)
BMWの5.0L V10が2年連続のトップに輝いた。このエンジンについて、当時のAUTOCARはこう書いている。
「V10はギアを噛み砕き、8200rpmのリミッターが非常に悲観的なものに感じられる。メカニカルの洗練性は素晴らしく、それがこのクルマ(M5/M6)の日常的なポテンシャルを引き出すカギとなる」
「0-100km/h加速4.7秒、0-200km/h加速15秒、最高速度250km/hの制限を解除すれば330km/hまで加速できる。こうした宣伝文句にもかかわらず、このクルマはまったく大人しいもので、先代よりもその幅広い能力を引き出せるシャシーを持っている」
BMW 3.0Lツインターボ(2007年)
2007年はBMWにとって嬉しい年だった。3.0Lツインターボが総合優勝を果たし、2.5L直6(ベスト・ニュー・エンジン)と5.0L V10(ベスト・パフォーマンス)がそれぞれ部門賞を獲得したのだ。
BMW 335iに搭載されたエンジンのレビューで、AUTOCARはこう述べた。「実に例外的なものである。あらかじめ知らされていなければ、このエンジンがターボチャージャー付きであることは、ほとんど分からないだろう」
BMW 3.0Lツインターボ(2008年)
3.0L直列6気筒ツインターボが2年連続で首位を獲得。また、4.0L V8(3.0L~4.0L)、5.0L V10(4.0L以上)、2.0Lツインターボディーゼル(ベスト・ニュー・エンジン)とBMW-PSA 1.6L(1.4L~1.8L)がそれぞれ部門賞に輝いた。当時、BMW-PSAの独仏共同開発ユニットは、ミニ・クーパーSとクラブマン、プジョー207と308に採用されていた。
フォルクスワーゲン 1.4L TSI(2009年)
2009年のインターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤーでは、フォルクスワーゲンの1.4L TSIが栄冠に輝き、BMWの独占は幕を閉じた。ガソリン直噴エンジンにターボチャージャーとスーパーチャージャーを組み合わせた「ツインチャージャー」と呼ばれる機構を採用。高回転域でも低回転域でもパワーを発揮しつつ、効率を高めるというものだった。
ツインチャージャーは総合優勝に加え、ベスト・グリーン・エンジンと1.0L~1.4Lの部門でベストエンジンに選ばれた。写真は、フォルクスワーゲン・グループのガソリンエンジン開発責任者であるリュディガー・ツェンゲル博士の受賞の様子。
フォルクスワーゲン 1.4L TSI (2010年)
2010年もフォルクスワーゲンのツインチャージャーが受賞。スーパーチャージャーとターボチャージャーを併用することで、通常のパワーデリバリーの「山」と「谷」を巧みに回避し、パワフルな自然吸気エンジンのようなフィーリングを実現している。
当時、このユニットはフォルクスワーゲン・ポロGTI、セアト・イビサFRやクプラ、スコダ・ファビアvRSなどに搭載されていた。なお、この年、フィアットの1.4Lマルチエアがニュー・エンジン・オブ・ザ・イヤーに選ばれている。
フィアット 875cc ツインエア(2011年)
フィアットの0.9Lツインエアエンジンは、2011年の受賞にふさわしいユニットである。バーチカルターボの2気筒エンジンで、わずか1900rpmで最高出力85ps、最大トルク14.8kg-mを発揮し、心地よいサウンドとともに躍動感あふれるパフォーマンスを実現する。
しかし、1つだけ問題があった。フィアットは約30km/lという非常に楽観的な燃費数値を謳ったが、多くのドライバーはその半分を達成するのでさえ苦労している。
フォード 1.0Lエコブースト(2012年)
「このような3気筒エンジンは、これまで誰も作ったことがない。当社がこれまでに設計したエンジンの中で、最も技術的に進歩し、最も効率的なエンジンの1つです。このエンジンには、将来のフォードエンジンのDNAの一部となり得る多くの新技術を導入しています」
フォードのグローバル・パワートレイン・エンジニアリング・チーフ、ジョー・バカジは、2012年にこのように語った。エコブーストは、フォード史上最小となる1.0Lのガソリンエンジンで、Bマックスから市販車に導入された。
フォード 1.0Lエコブースト(2013年)
エコブーストは2013年も勝利を収めた。この1.0L 3気筒ガソリンエンジンは、インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー賞の歴史上、最高得点を獲得している。当時、フォードは需要に対応するため、同エンジンの生産量を倍増させると発表した。
フォード 1.0Lエコブースト(2014年)
3年連続の受賞。インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤーの共同議長であるディーン・スラブニッチは、「1.0Lエコブーストエンジンはパワートレイン工学の最も優れた例の1つ」と述べている。
その数年後、数百のエコブーストエンジンがオーバーヒートしたことをきっかけに、メディアの調査により異常加熱する不具合が発覚。実際に火災を引き起こすケースもあった。フォードは影響を受けた数千人の顧客に対して返金することになった。
BMW 1.5L 3気筒(2015年)
BMWは2015年、ツインパワー・ターボ3気筒が総合優勝を果たし、再び注目を浴びることになる。1.5L 3気筒のハイブリッドユニットもベスト・ニュー・エンジンに選ばれ、1.4L~1.8Lの部門賞も獲得した。また、メルセデスAMG、テスラ、フェラーリ、マクラーレンが部門賞を受賞したほか、フォードのエコブーストが1.0L部門で受賞している。
フェラーリ 3.9L V8(2016年)
2016年から、フェラーリの3.9LツインターボV8エンジンの4連覇が始まる。パフォーマンス・エンジン、ニュー・エンジン、3.0L~4.0Lの各部門賞、そして総合賞と、4つの受賞となった。インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤーの共同議長を務めるグラハム・ジョンソンは、「効率、性能、柔軟性の面で、ターボエンジンの大きな飛躍となる」と述べている。
フェラーリ 3.9L V8(2017年)
ジョンソン共同議長はこう続けている。「現在生産されているエンジンの中で最高のものであり、歴代の名機の1つとして永遠に記憶されるだろう」
AUTOCARは、認識できるようなラグがなく、通常は自然吸気ユニットに限られるレブハングリーな性質を持っていることを賞賛した。このエンジンは最高出力670psを発生しながら、10.5km/lという公式複合燃費を達成している。
フェラーリ 3.9L V8(2018年)
このようなエンジンは、もっと詳細に説明する価値があるだろう。488 GTBに搭載されるF154 CBは、90度のバンク角、フラットプレーンクランクシャフト、オーバースクエアシリンダーデザイン、各シリンダーバンクに1基ずつ、計2基のIHIツインスクロールターボチャージャーを備えた3.9L V8である。6200rpmから8000rpmで670ps、3000rpmで最大77.5kg-mを発生。0-97km/h加速は3.0秒、0-240km/h加速は13.3秒と、驚異的な速さを誇る。
フェラーリ 3.9L V8(2019年)
当時のAUTOCARはこう書いている。「488 GTBを現時点で最高のターボエンジン車にしたことは、フェラーリの大きな功績である。最近、複数のメーカーが自然吸気からターボに移行したが、その中でも488のエンジンはラグが少なく、中速域を過ぎたと思ったら8000rpmのリミッターに突入するなど、トップエンドに向かって抜けるように回るのが特徴だ」
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みんなのコメント
F355に搭載された5バルブのV8エンジン。
抜群のフィーリングと甲高いサウンドが素晴らしい。
XR型は純正マフラーでも炸裂をみせる。
あんな市販車エンジンがあっていいのか!と嬉しくなる。