2022年9月3日・4日、サンマリノにあるミサノ・ワールド・サーキット・マルコ・シモンチェリで開催されたMotoGP第14戦、サンマリノGPに、Team Suzuki Ecstarから参戦するスペイン人ライダー、ジョアン・ミル選手の代役として、渡辺一樹選手が参戦。MotoGPマシンはこのレースWEEKでほぼ初乗り、直前での代役決定など、ぶっつけ本番状態のなか、21位でチェッカーを受けました。
渡辺選手は、”コカ・コーラ” 鈴鹿8時間耐久ロードレース第43回大会にヨシムラSERT Motulから参戦し、総合3位を獲得。全日本ロードレース選手権でも、JSB1000クラスランキング2位(第6戦終了時点)に付けている、日本のトップライダーのひとりです。
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そんな渡辺選手にインタビュー!サンマリノGP終了直後の想いを聞いてみました。
ーMotoGP初参戦を終えた感想を教えてください。
そうですね。まずは、決勝を無事に走り切れたことに、喜ばしい気持ちです。
ただ、レース前の目標で周回遅れにはならないというのがあったのですが、ラストラップで敢えて譲らなければその目標は達成できたかもしれないけど、イタリアでイタリア人が勝つという結果を邪魔する訳にはいかないので、最後は譲る結果となり達成できませんでした。
でも、レースの中盤以降ぐらいに、今週のベストタイムを出すことができ、セッションごと、周回ごとに自分のレベルを上げることができているので、そういう意味ではハッピーなレースだったかなと思います。
ー多くのライダーにとって夢の舞台であるMotoGPに参戦してみて、走行前と後でイメージに違いはありましたか?
走る前にイメージを膨らませるような期間はまったくなくて…。この参戦が正式に決定したのが先週の全日本のWEEKの金曜日で、水曜日ぐらいには候補に挙がっていることを聞いていましたが、まさかホントに決まる訳がないと思っていたし、全日本の時は全日本のことを考えなきゃいけないし、その後もEWC(ロードレース世界耐久選手権)のテストがあったから、EWCのことを考えなきゃいけなかったので、本当にこのサンマリノに来てから、実際にオンボード映像をたくさん見たり、どういう風に走ろうというようなことを考え始めました。
ただ、ほとんど乗ったことが無いバイクだったので、実際に想像することも難しくて、いい意味で先入観がなくて良かったのかなと思います。
ーぶっつけ本番状態で世界最高峰の舞台で戦うということに、迷いはなかったですか?
もちろん、ぶっつけで結果を出せるほど甘い世界ではないことは分かっていましたが、MotoGPで走れるチャンスを断るライダーは存在しないと思います。
確かに、自分のレベルがすぐにトップのレベルに追い付かないというのはありますが、少なくともスズキというメーカーは、コイツが乗ればぶっつけでも、どうにもならないということは無いという評価をしてくれたからこそ、この機会が来たと思うので、そういう意味では非常に光栄に思うし、そもそもこのオファーが来た時点で、結果が求められるような立場での依頼ではないということが明白だったので、そういう意味ではノープレッシャーでした。
実際にチームと合流してみても、今週はお前が楽しむ為、お前がいい経験を積むためにこの舞台があるんだということを、ずっといってくれていたので、フリープラクティスが始まってもシャカリキに速く走るのではなく、自分のペースでだんだんリズムを作っていけばいいよという感じ。
そのなかでチームも2020年にジョアン・ミル選手がチャンピオンを獲った体制で、長年ミル選手のチーフメカをやっているフランキーが自分のメカニックを担当してくれて、色々と試してセットアップが必要ならセットアップをしてくれるなど、こんな環境、自分で希望したからといってできる経験ではないので、そういう意味ではライダーとして、すごくいい経験ができたと思います。
ー全日本で乗っているJSBマシンとMotoGPマシンの大きな違いは?
すごくぼんやりとした言い方にはなってしまいますが、純粋なレーシングマシンとして初めからスタートしているバイクって、実はすごく乗りやすいんです。
市販車をベースにしたバイクを無理くりという言い方も変だけど、性能を上げるためにある程度バランスを崩してレーシングバイクにしているというのが市販車ベースのJSBだったりEWCだったりのマシンなのですが、やはりその工程のなかでどこかに無理はあって、その無理をどうやってライダーがリカバーするかみたいな点にフォーカスが当たることが多いのですが、MotoGPマシンに関しては、最初から純粋なレーシングマシンとして作られているので、走ることに集中さえすれば速く走ることができるバイクになっています。
そういう意味では今までの経験のなかでMotoGPマシンは、僕は2ストロークのレーシングマシンに乗ったことはあるけど、4ストロークのレーシングマシンは初めてで、こんなにも乗りやすくて、でも乗りやすいからこそ速く走ることが難しくて、その限界がすごく向こう側にあるバイクだと思います。
久しぶりに、自分のライダーとしてのポテンシャルの限界がマシン性能のポテンシャルの限界を超えられていないという感覚を感じて、すごく新鮮というか、まだライダーとして成長できる舞台があることを改めて感じることができるマシンでした。
ーでは、今回のレースWEEKでMotoGPマシンのポテンシャルを何%ぐらい引き出せたと思いますか?
40%ぐらいですかね。レースWEEKのスタートは10%とか20%しか使えなくて、最後の最後で53%ぐらい?(笑)
チームの協力を得ながら少しずつ使える幅が広がって、すごくいい面も見れたし、良かったなと思います。
ー今回、MotoGPという舞台で走るために特別にやったことはありますか?
そんなことする暇は、全くありませんでした。
ーでは、レース当日である今日の朝ご飯は?
クロワッサンと、ヨーグルトと、よくあるホテルのレストランの朝ご飯です。普通のホテルに泊まっているので(笑)
レース前はスズキのホスピ(ホスピタリティーガーデン)でみんなに出しているものではなく、エネルギー補給という意味でパスタとチキン。
チキンはタンパク質の補給という面が強いですけど。僕は食事に対してはそこまでこだわりは強い方ではなく、こうしなきゃいけないというのはあまりないので、今もモンスターエナジー飲んでますしね(笑)レース終わったから、許して!という事で。
ーMotoGP初参戦を終えて、これからのライダーとしての目標を教えてください。
もちろんMotoGPは夢の舞台ではありましたが、自分の年齢や今までのキャリアを含め、正直乗れることはないだろうと思っていたところでこのオファーがきて今回の機会となったので、自分的には驚きの部分が大きいのですが、でも実際にMotoGPを経験することができたという事実をしっかりとライダーとして生かすために、これをそのままスーパーバイクに応用できるかというとそうじゃないので、上手く自分のなかで噛み砕いて消化して、自分の違う技術の為に生かしたいと思います。
まあ、これからのキャリアをどう考えるかというと、正直、スズキもファクトリー活動から撤退するということで、今は難しい局面ではあるのですが、ただ自分がライダーとしてまだまだ成長して行けることを改めて感じたので、そういう意味でこれからももっと速くなりたいなと思います。
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