11月3日、バーレーンのバーレーン・インターナショナル・サーキットでは、WEC世界耐久選手権の2023年最終戦となる第7戦のフリープラクティス3と予選が行われた。予選ではブレンドン・ハートレーが最速タイムを叩き出したトヨタGAZOO Racingの8号車がポールポジションを奪っている。
最終決戦を翌日に控えたバーレーンのパドックから、各種トピックスをお届けする。
連覇に近づくポールポジション。トヨタ8号車のハートレーが予選を制す。可夢偉2番手/WECバーレーン
■可夢偉の7号車には「いくつか問題があった」
トヨタGAZOO RacingはWEC世界耐久選手権で23回目となるフロントロウ・ロックアウトを決めた。ハートレーは2021年から採用されている現在のシングルドライバー方式の予選において5回目のポールポジションを獲得している。
ハートレーはチームメイトの小林可夢偉に対して0.5秒近くの差をつけたが、トヨタのテクニカルディレクター、パスカル・バセロンは「(可夢偉の7号車には)いくつか問題があった」と語っている。
「彼は予選シミュレーションを再現できなかったが、ブレンドンは非常に良いパフォーマンスを見せた」
なお、トヨタの2台はミディアムタイヤでアタックを行った。
7号車トヨタは予選後にピットレーンにおける違反のため審議対象となったが、バセロンは動じなかった。
「彼らはノーズイン・パーキング(斜め止め)をしなければならなかった。クルマが(ピットレーンに対し)平行であるべきときに、クルマをそこに長時間放置しすぎたんだ。 警告が出ると思う」
18時39分付けで発行されたスチュワードのレポートでは、「2.5mライン(ピット作業エリアとガレージ側との境界を示すライン)に対してクルマを平行に止めなかった」とのスポーティング規則違反として、350ユーロ(約5万6千円)の罰金を科すと記されている。
■「予想どおり」予選で苦戦したプジョー9X8
プジョー9X8は前戦富士での予選結果同様に10~11番手となったが、ステランティスのモータースポーツ担当副社長ジャン・マルク・フィノーは、この結果は「予想どおり」だったと述べた。
「(BoPにより)フロントアクスルを使用できない低速コーナーが7つあるため、パワーを伝えることができず、大幅にロスしている」と彼は語った。
「残念ながらそれは予想されていたことだ。 予選ではより厳しいものになる。 明日のレースペースではもっと近づくはずだ」
■予選最高位獲得のキャデラック「ロングランでも速い」
アレックス・リンが今季最高の予選結果である3番手を獲得したことを受け、キャデラックは8時間レースに向けて楽観的な姿勢を見せている。「一番重要なことは、僕らは1周でも速いし、ロングランでも速いということだ」と彼は語った。
GMのスポーツカーレース・プログラムマネジャーのローラ・ウォントロップ・クラウザーは、チップ・ガナッシ・レーシングが運営するキャデラックVシリーズ.Rにおける来年のドライバーラインナップについて「何のサプライズも予期していない」と述べ、リン、アール・バンバー、リチャード・ウェストブルックを維持することを示唆した。彼女は、今後数週間のうちに発表があると述べている。
クラウザーはまた、IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権との日程バッティングを理由に、来年のレギュラーシーズンのWECレースに2台目のキャデラックVシリーズ.Rをエントリーさせる可能性を否定している。CGRは、IMSAのクルーとともに、2023年のスパ6時間レースに は2台目のマシンを投入していた。
彼女は次のように語っている。
「スケジュールがそれを許してくれない。ル・マン前のレースで、バッティングがないのは(開幕戦の)カタールだけだが、すべてを動かすために何が必要かを論理的に考えれば、それは正気の沙汰ではない」
■来季のコルベットドライバーは?
2024年にコルベットの指名するLMGT3チームとなるTFスポーツは、まだ発表されていないファクトリードライバー2名をラインアップに起用するとみられる。そして彼らはIMSAのミシュラン・エンデュランス・カップ戦にもコルベット・レーシング・バイ・プラット・ミラー・モータースポーツから出場する可能性があるものと理解されている。
TFスポーツは、今年のうちにコルベットZ06 GT3.Rを再びテストする予定はないと、チーム代表のトム・フェリエは示唆している。彼らは2024年1月中旬となる、マシンのデリバリーを待っているところだ。この車両は、今年8月にサーキット・オブ・ジ・アメリカズで初めて姿を現したものだ。
■“アマ”が“プロ”を上回る
アイアン・デイムズのドライバー、サラ・ボビーが、LMGTEアマクラスでポルシェにとって24回目のポールポジションを獲得した。
特筆すべきは、ポルシェのカスタマーチームが獲得したGTEアマでのポールポジション獲得数が、同ファクトリー・オペレーションによるGTEプロクラスの回数『23』上回ったことである。
「GTE最後のポールポジションを獲得できて、スーパーハッピーだわ。それはとれも難しいものだった」とボビーは語っている。
■プライベーターの“ポジション”は正反対
フロイド・ヴァンウォール・レーシングチームの4号車ヴァンウォール・バンダーベル680は、エステバン・グエリエリがフリープラクティス3のインラップにおいて、ターン11へアプローチする地点でシートベルトを緩めたため、レース開始時にドライブスルーペナルティを科せられることになった。
そのヴァンウォールのラインアップに今戦から加わったライアン・ブリスコーは、過去3シーズンにわたってグリッケンハウス007をドライブした後、ヴァンウォールの異なるシートポジションに適応する必要があると語った。
「グリッケンハウスではペダルに到達するために身体を伸ばしていたんだけど、ここではその逆だ」と彼は語った。
「(コクピット内は)すべてがとても近くにある。そのため左足でブレーキを踏まなければならないんだ。もう10年くらい、やってなかったんだけどね」
ブリスコーは自分のシート・インサートを作ることができず、代わりにグエリエリと同じものを使用しているという。
「彼らのシートを試してみたんだけど、エステバンのシートは僕にとって快適だった。僕らの身体は、同じくらいの大きさだと思う」
■バレンティーノ・ロッシ、“2年前の約束”
決勝翌日の日曜日に予定されているルーキーテストに参加する数名のドライバーが、金曜日にパドックに到着した。
その中にはトーマス・プライニング、ベン・バーニコート、ジャック・ホークスワース、そして新たにヨーロピアン・ル・マン・シリーズLMP2チャンピオンに輝いたカイフィン・シンプソンらが含まれている。また、フォーミュラEのドライバーであり、WECでかつて2度優勝しているノルマン・ナトもパドックで目撃されており、彼はハーツ・チーム・JOTAと連携している。
日曜日のバレンティーノ・ロッシのLMP2テストは、チームWRTのヴァンサン・ボッセ代表が2年前にロッシと約束したものである。
「2021年に初めて一緒に話し合ったとき、私は一度彼をLMP2マシンに乗せると約束したんだ」とボッセは明かす。
「昨年はシーズン途中にシートを準備したのだが、うまくいかなかった。 これが彼をマシンに乗せる我々の最後のチャンスだ」
ロッシとショーン・ゲラエルは、WRTが来年計画しているBMW M4 GT3のシルバー・ドライバー枠の最有力候補であると考えられている。ゲラエルはFIAに控訴し、シルバーのレーティングを維持した。
彼らに見通しについて尋ねると、ボッセは「もちろんその可能性はあると思われるが、正式に確認されたものではない」と述べた。
ボッセはまた、WRTがLMGT3クラスでドライブするブロンズドライバーのテストを継続していると付け加えた。
「我々はすでに2回のテストを行っており、来週ポール・リカールでもう1回テストを行う予定だ。そうすれば決断できるようになるはずだ。我々は約10人のドライバーをテストした」
■今季初めての欠席は、タイトル決戦のため
ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツのチームオーナーである“総帥”ロジャー・ペンスキーは今週末のバーレーン戦を欠席し、アメリカ・アリゾナ州のフェニックス・レースウェイで行われるNASCARカップ・シリーズのタイトル決定レースに出席している。ペンスキーのカップ・ドライバー、ライアン・ブレイニーは“チャンピオンシップ4”へと進出している。
前戦富士にも姿を見せていたペンスキーは、今シーズン初めて、WECの現場を欠席したことになる。
■フォーメーションは2周。「富士より良いスタートを」
土曜日の8時間レースは、2周のフォーメーションラップのあと、現地時間14時(日本時間20時)にスタートが切られる予定だ。
公開されたトップ4スターティング・ドライバーズミーティング(予選日夜に実施)の資料には、「1周目のフォーメーションラップは、かなり速くなるだろう。LMGTEは隊列をタイトに保つために、最善の努力をしなければならない」と記されている。また、カテゴリー間で間隔を空けることは許されていない。
なお、富士のスタートでは混乱が生じたことを受け、今回の資料には「1周目の1コーナーでレースを失うことは簡単だ。富士よりも、良いスタートを目指そう」とレースディレクターからのメッセージが記されている。
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