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【絶好調に見えるのに営業利益、純利益ともにマイナス43%!!】マツダの戦略は間違っていないのか!?

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【絶好調に見えるのに営業利益、純利益ともにマイナス43%!!】マツダの戦略は間違っていないのか!?

 マツダのイメージは大きく変貌してきている。革新的な内燃機関テクノロジーを次から次へと発表し、クルマ好きにとってワクワクさせてくれるメーカーになっている。

 デザインにしてもオリジナリティをいかんなく発揮し、最新のマツダ3の評判も物凄く高く注目度は抜群だ。

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 しかし、2018年通期決算発表はかなり厳しい状況と言わざるを得ない。やることなすこと絶好調に見えるマツダだが、財務状況にまったく結びついていない。

 販売台数も増えているのに財務状況が厳しいのは何が要因なのか、マツダの戦略は間違っていないのかを鈴木直也氏が考察する。

文:鈴木直也/写真:MAZDA

営業利益、純利益ともにマイナス43%の衝撃!!

 5月に発表されたマツダの2018年通期決算発表は、営業利益、純利益ともにマイナス43%と予想以上に悪い数字。これを受けて株価も1300円から1100円台へと下落している。

 決算の内訳を見ると、売上高は微増しているのだが利益が出ていない。自動車メーカーの利益率は一般的に6~8%と考えられているが、マツダの2018年度はわずか2.3%にとどまっている。

5月にマツダの主力モデルであるマツダ3を発表。日本車の常識を超える質感が売り。ハッチバックもいいが、セダンのデザインの評価は高く、苦戦の続くこのクラスのセダンに風穴を開けられるか

 利益率の向上はマツダがつねづね腐心してきたポイントで、スカイアクティブ商品群が一段落したあと、値引きを抑えた販売戦略で頑張ってきたのはよく知られている。ここ最近「マツダの値引きは渋い」というのが国内市場では常識だった。

 にもかかわらずなぜこの決算かといえば、要するに北米と中国での販売が振るわなかったからだ。

 北米市場での販売台数は日本の約2倍、中国は約1.5倍のスケールだが、ここでそれぞれ3%、23%(!)のマイナス。値引きやインセンティブで相当な出血を強いられたと思われる。

マツダは高級車にシフトし活路を見出す

 この決算発表と同時に、マツダは2024年度までの中期経営計画を発表したのだが、その内容はまさに「利益率向上のために何を成すべきか」というマツダの決意表明だった。

 まずは、これまで200万台としてきた販売台数目標を、180万台に下方修正。なおかつ、売上高4.5兆円、利益率5%以上を目指すとしている。

 販売台数を1割減らしつつ、売上高を約25%伸ばし、利益率は2倍にする。これが何を意味するかといえば小学生でもわかる。すなわち、商品ラインナップの高級車シフトにほかならない。

2012年にSKYACTIVテクノロジーを発表して以降のマツダはイケイケ状態にある。究極の内燃機関であるSKYACTIV-Xに進化し、マツダ3に追加で搭載される予定。技術力でマツダは世界で注目の的

 そのための施策として、これまでひとつだったプラットフォームをスモールとラージに分けるというクルマ造り戦略が明らかになった。

 モーターショーのコンセプトカーを見れば一目瞭然で「マツダはFRをやっている」という噂はもう何年も前から流れていたが、その正体が“ラージプラットフォーム”。この決算発表でその事実を初めて公式に確認し、直6FRのラグジャリークーペ(しかも、ガソリンとディーゼル両方がある!)の商品化が発表されたのだ。

 このマツダの中期経営戦略は、論理的に考えれば「これしかないだろうなぁ」とは思う。

 マツダの経営幹部はつねに「トヨタとコスト勝負しても勝ち目はない。ウチは世界シェア2%なんだから、100人のうち2人に熱烈に愛されるクルマを目指す」と発言してきたが、一連のスカイアクティブ商品群はそれをうまく現実化したもの。

 デザインもテクノロジーも個性ある自動車メーカー。そんな立ち位置を着実に築いてきた。

 しかし、これからマツダ踏み込もうとしているプレミアムカーの市場で、同じ戦略が通用するかどうかは不透明だ。

2018年にビッグマイチェンを受けたアテンザだが、次期モデルは直6エンジン搭載のFRセダンとしてコンセプトチェンジするのも、高級車路線にシフトする戦略による

マツダが目指す方向は簡単ではない

 モーターショーに展示された“ビジョン・クーペ”コンセプトモデルから想像するに、このクラスの直6FRラグジャリークーペの価格は、どう安く見積もっても最低500万円。おそらく、中心価格帯は700万円台に到達するのではないかと思われる。

 このゾーンでは、率直に言ってマツダのブランドステイタスはゼロ。30年前にレクサスが高級車市場に参入した時には、はじめ「大衆車メーカーがなにを身の程知らずに……」と馬鹿にされたものだが、プレミアムブランドとして認知されるまでには、長く苦しい助走期間を覚悟する必要がある。

2017年の東京モーターショーでワールドプレミアとなったマツダのビジョン・クーペ。ラグジュアリークーペマーケットでマツダのステイタスはゼロゆえすぐに成功を期待するのは酷

 新たに登場する高級車商品群がきちんと利益をあげられるようになるのはかなり先の話。それまで、相当なやせ我慢を強いられるはずだ。

 その苦しい助走期間を支える大黒柱が、新しい“”スモールプラットフォーム”であり、そこに搭載されるスカイアクティブXなどの新技術なのだが、こちらも要求されるハードルはかなり高い。

 今後のスモールプラットフォーム車は、予想どおりの販売成績を達成したとしてもそれでは不十分で、同時にこれまで以上の利益率向上が求められる。

 マツダの目論見どおり、値引きやインセンティブに頼らずにすむ商品力が備わっていれば問題はないが、世の中そんなに甘いものではない。それでも利益が出せるように、スモール系にはこれまで以上のコストダウン圧力が加わってくるのは不可避だろう。

マツダの最量販車のデミオは質感の高さがセールスポイントだが、厳しいコストの制約が予想される次期モデルでも現行以上のクォリティを保てるのかに注目したい

 マツダの新しい2プラットフォーム戦略はクルマ好きにはワクワクするような期待に満ちているが、経営的に見るとリスクの高い選択。ひとつでも歯車が狂い始めると、すべてがガタガタになるような怖さを秘めている。

 それでも、こういった夢のある計画をぶち上げてくる自動車メーカーは、やっぱり日本ではマツダしかいない。ぼくら自動車メディアも、マツダのこのチャレンジには全力で声援を送りたいと思います。

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