第3世代へとアップデートを受けたゾエ
text:James Attwood(ジェームス・アトウッド)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
多くのフランス産モデルと同様に、2012年に誕生したゾエも最先端ファッションを備えたモデルだった。誕生当時はかなり個性派だったが、クルマとしての楽しさや環境への優しさ、少し見慣れないエクステリアデザインは受け入れられ、人気者になった。
時代が変わり、2019年には多くの新しいモデルが発表され、ゾエのトレンドに追いつく。純EVのゾエに対する注目も高まる一方で、最先端という存在感は薄まりつつあった。
ルノーはこれまでにもゾエに何度か手直しを加えてきたが、台頭するライバルを抑えるべく、今回大幅なアップデートを与えた。新モデルとも充分に渡り合えるだけの中身を備えたのだ。
ルノーが第3世代と表現する今回のゾエだが、マイナーチェンジ前からプラットフォーム自体にも大々的な見直しが加えられた。エクステリアデザインも新しくなり、ルノーのロゴも大きくなって主張を強めている。ロゴマークを持ち上げると、充電ソケットが隠れている。
バンパーまわりのデザインやヘッドライトもリニューアル。全体の雰囲気はスタイリッシュさを増し、新しいルノー・ルーテシア(クリオ)とも遠くないアピアランスになった。
インテリアにはさらに多くの変更が加えられ、第2世代のゾエから大きな進化を遂げている。メーターパネルには10インチのモニターが配され、ダッシュボードの中央には大きなインフォテイメント・システム用モニターをレイアウト。最新のルノー・イージーリンク・システムに対応する。
バッテリーは52kWh、航続距離は394kmへ
視覚的にも触覚的にも品質は向上。モニターと物理的なボタンとの組み合わせで、操作性も良好だ。遮音性も高められ、高速走行時のロードノイズは静かとはいい難いが、EVらしくエンジンノイズから開放された静かな走行を楽しめる。
ボディの内側に施されたアップグレードは、競争力確保のうえで一層重要だろう。バッテリーの容量は41kWhから52kWhへと拡大。航続距離は32%も伸ばされ、WLTP値で394kmと公表されている。日産リーフに迫る距離だ。
価格で比較すると、間もなく発売が開始されるプジョーe-208やオペル(ボクソール)e-コルサ、フォルクスワーゲンID.3などのエントリーグレードと真っ向勝負となる。
今回試乗したゾエR135の価格は、バッテリーも一緒に購入する場合は2万7620ポンド(375万円)、バッテリーを別途リース契約とすると2万620(280万円)となる。ちなみにすべての価格は、英国での補助金が適用された数字。
低出力のゾエR110の場合は2万5760ポンド(350万円)で、バッテリーの別途リースで1万8670ポンド(253万円)となる。バッテリーのリース料金は未定だが、月額49ポンド(6700円)前後からと見込まれている。
ゾエR110でも、R135でも、22kWhの容量で充電できるAC充電ポートを標準装備。クルマの価格には7kWhの家庭用充電器が含まれている。30分で145km分の電気が充電できる50kWhのDC急速充電器は、英国の場合は750ポンド(10万円)のオプション。中級グレード以上で選択が可能となる。
日産リーフのようなワンペダル操作も可能
エントリーグレードとなるゾエR110には、マイナーチェンジ前と同じ107psを発生するモーターを搭載。今回試乗した、追加となったハイパワー版のゾエR135には、134psのモーターが搭載される。
新しい強力なモーターのおかげで、0-100km/hの加速時間は11.4秒から9.5秒へと短縮。最高速度も135km/hから140km/hへとわずかに増えた一方で、航続距離は少し犠牲となった。最大トルクはどちらのモーターも共通で、24.9kg-mとなる。
R135のパワーの増加分は、実際に運転してみると明確に体感できる。基本的な印象はマイナーチェンジ前と変わらず、決してハイパフォーマンスになったわけではない。だが従来以上に太いトルクを即座に利用でき、高速巡航時でもその力強さを味わえるようになった。
操縦性や乗り心地は、マイナーチェンジ前のゾエと大きな違いは感じられない。小気味良く軽快ながら、ドライバーへのフィードバックが濃いわけではない。低速域では全般的に乗り心地は良好だが、高速域になると不安定さを感じることもある。
第3世代のゾエには、日産リーフと似たワンペダル操作を可能とする、積極的な回生ブレーキの機能が追加された。「Bモード」と呼ばれるもので、キアe-ニロほどの包括性はないものの、アクセルペダルだけでクルマの運転を可能としながら、航続距離を伸ばすことにも有効だ。
依然として実力の高いルノー・ゾエ
回生ブレーキの強いBモードは特に、ゾエが前提環境としている都市部での走行に適している。軽く機敏なステアリングの操舵感と、少し高めの着座位置、全方向に優れた視界など相まって、クルマの魅力を引き立てている。ちなみにゾエの乗車定員は5名で、荷室容量は338Lとなっている。
都市部を中心に利用し、走行距離もそれほど長くないドライバーにとって、ルノー・ゾエは理想的なEVハッチバックだといえるだろう。第3世代へのアップデートによって、EV化の勢いが増す中にあっても、実力は一層高められたと感じた。
車両価格と航続距離という、純EVの選択時に重要視される基準で見た場合でも、ルノー・ゾエはライバルとの優位性を保っている。2020年に登場してくるライバルモデルとの比較までは結論を出すのは難しいが、やや古株なゾエながら、充分な実力が備わっているといえそうだ。
準備が整い次第、EVのライバルモデルを揃えたグループテストを行いたい。
ルノー・ゾエR135 ZE 50のスペック
価格:2万7620ポンド(375万円・英国の補助金適用後)
全長:4084mm
全幅:1730mm
全高:1562mm
最高速度:140km/h
0-100km/h加速:9.5秒
航続距離:394km(WLTP)
CO2排出量:0g/km
乾燥重量:1502kg
パワートレイン:交流同期モーター
バッテリー:52kWhリチウムイオン
最高出力:134ps
最大トルク:24.9kg-m
ギアボックス:シングルスピード
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