■NHKが受信できるなら、カーナビも受信契約の対象に
受信料によって運営されている日本放送協会(NHK)。
「テレビを持っているかどうか」で受信料を支払う義務があるかどうかが決まると思われがちですが、実際にはそうではなく、場合によってはカーナビでも受信契約の対象となるようです。
ただ、そこには大きな問題があるようです。では、受信料を支払うべき「対象者」とはどのように規定されているのでしょうか。
放送法に基づいて設立された日本放送協会(NHK)は、企業などからの広告料をメインの収入源とする多くの民間放送局とは異なり、対象者から徴収する受信料によって運営されています。
放送法第64条では「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない」と定められています。
ここでいう「受信機」について、これまでは基本的にはテレビを指しており、テレビを所有していればNHKの番組を見るかどうかにかかわらず、受信料を支払う義務が発生することになります。
しかし、最近ではテレビ以外でも契約義務が発生するとされており、NHKの訪問営業が配布するチラシでは「テレビ・TVチューナー付パソコン・ワンセグ(スマホ)・TVチューナー付カーナビ」はNHKの放送を受信することのできる受信設備とされています。
実際にNHKの受信契約窓口担当者は「世帯ごとの受信契約となります。すでに自宅のテレビなどで契約している場合は、カーナビなどにおいて改めて契約する必要はありません。しかし、受信契約をしていないようであれば、カーナビなどでも受信契約をしていただかなくてはなりません」と説明しています。
このように、NHKの受信契約は世帯ごとにおこなわれるため、すでにテレビを所有しており、それに対して受信料を納めていれば、テレビが受信できるカーナビに対して受信料を納める必要はありません。
しかし、近年増加しているという「テレビを持たない家庭」の場合、テレビを所有しなくてもテレビが受信できるカーナビや携帯電話を保有していればNHKの受信料を支払う義務があるといいます。
つまり、NHKの受信料を納める義務については「テレビを持っているかどうか」で決まるのではなく「テレビが受信できる機器を持っているかどうか」で決まるということになります。
これを裏付ける例として、2020年には「NHKが受信できないテレビ」に対しては、受信料を支払う義務はないという判決が東京地裁より出されています。
■「クルマを買う」=「NHKを受信する意思がある」のか?
もちろん、放送法で規定されている以上、NHKを受信できる機器を所有している限りは受信料を支払う義務があります。
NHKも受信料については「自由意思で受信機を設置した人に対して、NHKの放送を含む放送を受信する意思があると認めて放送受信契約をしてもらうというもの」と説明しています。
ただ、NHKを受信できるカーナビが備わっているクルマを手に入れることが「NHKの放送を含む放送を受信する意思がある」ことを意味するというのは、やや無理があるようにも思います。
また、そもそも近年のクルマは、フルセグ機能付きのカーナビが標準装備されている場合も多く、ユーザーが本当に「NHKの放送を含む放送を受信する意思がある」かどうかの判断が難しくなっています。
たしかに、ユーザーはNHKを受信することのできないクルマを選ぶことはできます。
ただし、その場合、現実的な選択肢として挙げられるのは、カーナビが標準装備されていないクルマやトヨタ「カローラ」のようなディスプレイオーディオが装備されているクルマ、あるいは一部のマツダ車のようにTVチューナーがメーカーオプションとなっているクルマなどを選ぶことになります。
逆にいえば、高機能なカーナビが標準装備されている国産の高級車やほとんどの輸入車は選ぶことができません。
またカーナビメーカーの担当者は「現在ラインナップしている多くの商品では、テレビチューナーが付いており、いまや定番機能となっています。そのため、今後のテレビチューナー機能を外すかどうかの対応は慎重に検討していきます」と話しています。
たしかに、高級車を選ぶような金銭的に余裕のある層であれば、月額2000円程度の受信料は大した負担ではないかもしれません。
しかし、放送法で規定されているとはいえ、受信料はあくまで自由意志による契約によって支払われるものであり、国民全員が納める義務のある税金とはそもそも性質が異なります。
現在はまだ顕在化していませんが、「クルマの購入」がすなわち「NHKの放送を含む放送を受信する意思がある」ことを意味するのかについては、今後多方面からの議論が必要になる課題のひとつといえます。
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