ポール・スミスとMINIのコラボで誕生した"MINI STRIP"
MINIとポール・スミスとのコラボレーション。
開放感のあるグラスルーフとマットカラーが小粋なフィアットのMT限定車「500/500C Manuale+Cielo」
そして誕生した1台限りのカスタムメイド車両「MINI STRIP」を紹介しよう。
MINI STRIPは、自動車メーカーが直面する持続可能性の問題に対して革新的なアプローチにスポットライトを当てている。この車両は、「Simplicity, Transparency, Sustainability(シンプルさ、透明性、持続可能性)」という包括的なテーマの元で作られており、サステナブルなカーデザインにインスピレーションを与えてくれる。
その名が示すように、設計プロセスは、3ドアのMINI Cooper SE を完全に分解し、本質的な構造にまで削ぎ落とすことから始まった。そして、サステナビリティを前面に押し出しながら、ポール・スミスが絶対に必要だと考える要素のみを定義し、実装し、配置した。
デザイン - 完璧な不完全さ
共同開発のプロセスでは、最大限の削減という原則を適用して、新鮮で型破りな魅力を持つ、ミニマルで高級感のあるデザインを生み出した。
3ドアのMINI Cooper SE のエクステリアには、数多くの巧妙な工夫が施されており、独自の美学が表現されている。
エクステリアデザインでは、素材感を大切にしているため、ボディはカラー塗装を施さず、腐食防止のための透明な薄いフィルムを貼っただけの未完成の状態に。
亜鉛メッキ鋼板には、工場での研削痕をあえてそのまま残しており、この車両が機能的な製品、そして日常生活に欠かせない頑丈なパートナーであることを明確に示している。
この意図的な粗仕上げの手法は、ポール・スミス曰く「完璧な不完全さ」だ。
素材の持つ、本来の表現力
MINI特有のブラック・ベルトの一部は再生プラスチックから3Dプリントされており、メタルパネルのようにありのままの素材感がむき出しになっている。
外観から見えるアドオンパーツのボルトは、解体が簡単で、耐用年数が過ぎた後も原材料としてリサイクルできるようになっていることを表しており、自転車愛好家でロードバイクの各パーツを自分で交換したり改造したりすることも楽しむポール・スミスの着想だ。
機能的で特徴的なフロントとリア・エプロン・インサートも、3Dプリントで製造されており、印象的な質感を生み出している。
MINI STRIPのラジエーター・グリルとホイール・カバーは、電気自動車の特徴である空気抵抗の低減に役立ち、理論上の航続距離を向上。
グリル・カバーとホイールのエアロ・プレートには再生プレキシガラスが使用されており、軽量化と省資源を実現している。
また、再生プレキシガラスは大きなパノラマ・サンルーフにも使用されており、大部分がむき出しのままになっているボディ・シェルの内部を好奇心旺盛な目で見ることを可能にした。
ディテールへのこだわり
MINIは"twinkle in the eye(目の輝き)"、ポール・スミスは‘classic with a twist(ひねりのあるクラシック)’と表現するが、どちらもハイコントラストのカラーアクセントといった意外性のあるディテールが共通しており、デザイナーの作品を二度見、三度見したときに初めてディテールへのこだわりが明らかになるようになっている。
MINI STRIPも同様で、ドアを開けると、ポール・スミスのシグネチャーであるストライプが5色の鮮やかな構成で現れる。
また、充電用リッドを開けると、ネオングリーンの彩りが加わり、フラップにはポール・スミス自身が描いたコネクターのドローイングが施されている。
インテリアの大幅な削減
MINI STRIPの「Simplicity and Transparency(シンプルさと透明性)」というモットーは、大幅に削ぎ落したインテリアにも生かされている。
ダッシュボード、トッパー・パッド、リヤ・シェルフを除くすべてのトリム・パーツが意図的に省かれており、ボディ・シェルがキャビンの主要な視覚的特徴に。
また、ポールたっての希望により、ブルーのカラーリングが施され、一際目を引く効果を発揮している。
むき出しの基本素材と強烈なブルーの色調は、インテリアに独自の美しさを与えているため、むき出しでありながら、同時に衣をまとっているかのような美しいインテリアデザインになっている。
ダッシュボードは、従来の複数のパーツで構成されたデザインではなく、スモークガラス仕上げの大きな半透明のコーポネントのみで構成。
MINIの伝統的なデザインである円形のエレメントを参考に、形状を大幅に簡素化し、よりグラフィカルに表現している。
そして通常のセンター・メーターパネルはなく、代わりにドライバーのスマートフォンが中心的な役割を果たします。スマートフォンは通常のセンター・ディスプレイの位置に設置され、自動的に車両に接続され、メディア・コントロール・センターとなる。インテリアで唯一の手動操作する個所は、センター・スタックの下にあるパワー・ウィンドウとスタート/ストップ機能のトグルだ。
革新的な素材で資源を大切にする
インテリアのミニマルな幾何学的デザインと平行して、MINI STRIPは環境に優しいリサイクル素材を使用しており、車両そのものがサステナビリティへの取り組みを実証している。
インテリアにはレザーやクロームが一切使用されておらず、シートはニット・テキスタイルが張られている。
シート・カバーは完全な単一素材で構成されているため、パイピングも含めて完全にリサイクル可能で、材料の循環性を確保できる。
フロア・マットには再生ゴムを使用しており、テラゾ(人造大理石)のような模様は、リサイクルと製造プロセスの副産物であり、新たな素材の一部として第二の活躍の場が与えられたことになる。
ダッシュボードのトッパー・パッド、ドア・パネル、リヤ・シェルフも、非常にシンプルな形状で、再生コルクを使用。
ここで使用されているコルクは、合成結合剤を含まず、完全にリサイクル可能なものです。ほどよい強度と柔らかな感触を持つコルクは、将来的には発泡プラスチックの代替品になるかもしれない。
また、コルクはリサイクル可能で再生可能な素材であり、製造時に排出する二酸化炭素量を結合することから、温室効果ガスの削減にもつながる可能性がある。
また、ニット素材やコルクは、どちらも開孔性の素材であるため、室内の音響効果を高めることができるというメリットも。
ミニマムで機能的なディテール
インテリアの中心となるステアリング・ホイールは、必要最小限の機能に絞り込んでいる。
ステアリング・ホイール・リムはハンドルバー・テープで巻かれ、ロードバイクのようなスタイルを意識しています。3本のアルミ・スポークがホーン・パッドと接続されており、ホーン・パッドはメッシュ状のカバーに覆われ、エア・バッグが見える仕様だ。
車両の外側と同じように、ここにもボルトが見えており、最終的にはステアリング・ホイールを容易に分解してアルミニウムを再利用できることを示している。
ステアリング・ホイールの1時の位置にあるPaul Smithの小さなファブリック・ラベルは、インテリアにおいてコラボレーションを象徴する証のひとつだ。
ドア・パネルは、エア・バッグを覆うメッシュ素材と同じものを使用。メッシュパネルフレームの後ろは、ドアの構造がはっきりと見えるようになっており、見る角度によって編み目の透明度が変化し、インテリアの表情をさらに豊かにしている。
ドアショルダー部のプル・グリップは、クライミング・ロープを巻いて作られており、シートベルトと合わせて鮮やかなオレンジ色でインテリアを彩っている。
アルミ削り出しのドア・オープナーは、プル・グリップと同様にコルク製のパネル部分に設置されており、ドア周りの高級感を演出。
さらにドアの上に視線を移すと、ルーフ・フレームにむき出しのエアバッグ・カートリッジが設置されている。
これは、室内のケーブル経路が見えるのと同様に、通常では表に出ない機能に意図的に目を向けさせ、美的に組み込まれている。
より持続可能な未来のためのアイデアを生み出す
MINI STRIPに組み込まれたすべての独創的なディテールは「フォルムは機能に従う」という考えに基づいている。
シンプルさ、透明性、持続可能性がデザインプロセスの中心テーマとなり、車両のあらゆる側面に反映。
またMINIの信条である”Creative Use of Space(クリエイティブな空間の使用)”を、MINI STRIPは、特にインテリアの抜本的かつ根本的なリデザインに反映させることができた。
MINI STRIPが、今後の自動車デザインにおける持続可能な資源活用をさらに推進させていくことを期待しているという。
構成/ino.
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