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サムスン、自動車産業で勝機あるか 自動運転システム、各メーカー熱視線

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サムスン、自動車産業で勝機あるか 自動運転システム、各メーカー熱視線

もくじ

ー 「クルマの製造はいたしません」
ー サムスンは何を狙っているのか?
ー 自動車メーカーからの熱視線
ー 番外編1 サムスンのライバル4企業
ー 番外編2 サムスン、自動車産業参入の歴史

ロールス・ロイスCEO アストンの新ラゴンダにチクリ

「クルマの製造はいたしません」

自動運転システムを持つクルマは増加の一途をたどり、それに伴って技術力のあるメーカーが自動車産業へ進出する機会もますます増えている。世界最大のスマートフォンメーカーも、自動運転分野の覇者となるべく今や5億ドル(500億円)以上の投資を行っている。

といってもAppleの話ではない。

サムスン電子のことだ。昨年のスマートフォン・マーケットのシェアは、Appleが14%だったのに対してサムスンは19%。すなわち、この韓国企業は1時間に4万4000台のスマートフォンを製造し、1年で6億6000万台以上のコネクテッド・デバイスを販売しているのだ。

サムスン電子はシリコンバレーにある戦略イノベーション・センターにおいて自動運転と高度ドライバー支援システム(ADAS)の研究開発をひそかに進めている。センターのスマート・マシン技術部長であるデーブ・アンダーソンによれば、このビジネス・ユニットのミッションは「次世代技術への投資」である。

加えて「今シリコン・バレーでもっともホットなテーマは自動運転システムとその関連技術」なんだそうだ。

重要なのは、サムスンにはクルマ自体を製造する気はないということ。ライバルのAppleがかつて行ったように。そうではなくて、Drvlineと呼ばれるソフトウェア/ハードウェア混在のオープン・プラットフォームの開発に注力している。これによってサムスンは、メーカーが自動運転のクルマを開発する際すぐにパートナーになることができる。

サムスンは何を狙っているのか?

この18カ月間に、サムスンとハーマン(2017年に80億ドル(約8000億円)で買収した自動車技術の子会社)の1000人ものエンジニアが自動運転システムの開発を進めている。

すでにサムスンは、自動運転プラットフォームのフレームワーク開発におよそ7000万ポンド(104億円)を費やしており、同時に革新的な自動運転システムを開発している会社にも投資を行っている。

さらにアンダーソンが「パートナーのエコシステム」と呼ぶ仕組みを構築するために1億ポンド(149億円)をスタート・アップへ投資している。このエコシステムは、次世代コンピュータ、センサー、ソフトウェア、通信技術、それにUX(ユーザー・エクスペリエンス)の5分野からなる。

サムスンはまた、クルマのイノベーションに特化した2億1200万ポンド(316億円)規模のファンドを立ち上げた。自動運転システムに必要な技術を持った会社にさらなる投資を行うためである。最初に投資したのはソフトウェア・インテグレーションを専門とする会社TTTechだ。

アンダーソンはこう説明する「1社ですべてできるパートナーなんて存在しません。よくわかっていますよ。われわれも1社ではできない。ですから、この産業全体をしっかりと調査して、見つけたベストな技術をすべてつなぎ合わせてDrvlineプラットフォームを構築しようとしているのです」

オープン・プラットフォームは、選択に応じてメーカーが自由にカスタマイズしたり拡張したりすることができる。また自動運転技術の進展に従って、それ自身が進化しバージョン・アップされていく。例を挙げよう。

ハードウェアは(「ハンド・オフ」と呼ばれる)レベル2の自動運転能力を持ったベーシックなボードだとする。このベースボードは2基のサムスン製プロセッサーでクルマとやり取りを行う。これにサムスン製ないしパートナー社製のサブ・モジュールを追加することにより、プラットフォームの能力やプロセッサーのパワーを向上させることができるのだ。

自動車メーカーからの熱視線

自動運転のクルマはコネクテッド・デバイスでなければならないので、ビジネス上サムスンに有利だとアンダーソンはいう。

「クルマはソフトウェア・ベースのモバイル・デバイスになりつつあります。四輪のスマートフォンですね。一方、自動運転という文脈においては、機能的に安全であるよう基本設計しなくてはなりません。これが大前提です。これはわれわれが携帯電話で取り組んできた問題と同じなのです」

最近、クルマの技術に対する要求が多大になってきたことで、自動車産業は素早い対応とリードタイムの削減を迫られている。スマートフォン・メーカーと同様に。アンダーソンは言う「ここ10年ですね。テクノロジー企業が参入してきたのは」

「テクノロジー企業であるサムスンの考え方は、自動車メーカーにはとても刺激的なようで、われわれが何ができるか多くの企業が見学にきます。われわれは関係するビジネス分野すべてでリーダーです。スマートフォンを最初に発明したのはわれわれではありませんが、すぐさまそのトレンドに追いつき一番になりました。冷蔵庫、洗濯機、乾燥機、テレビなどの家電でも同じです」

「自動車産業でサムスンが行おうとしていることは、エンジニアリング的な意味でも製造能力的な意味でも「可能性の芽」をつなぎ合わせることです。これによってやがては自動車産業の創造的破壊がもたらされるでしょう」

Drvlineを搭載したレベル4の自動運転能力(「マインド・オフ」と呼ばれ、ドライバーはクルマの運転に全く注意を払わなくてよい)を備えたクルマは、現在韓国とカリフォルニアで路上試験を行っている。この新しいシステムの最初の製品は正面自動ブレーキ・カメラのようだ。2020年には発売されるとアンダーソンは語った。

番外編1 サムスンのライバル4企業

アプティヴ

デルファイ・オートモーティヴがアフターマーケット・ビジネスをデルファイ・テクノロジーに外だしして社名変更した会社。

この自動車部品の専門企業は、ライドシェア企業のリフトと組んで自動運転技術を開発中で、先月のCESでBMWの自動運転タクシーを展示した。

NVIDIA


コンピュータ・グラフィックスのチップメーカーであるNVIDIAは、NVIDIAドライブと呼ぶ自動運転プラットフォームを開発している。自動運転専用のCPUを搭載している。今までのところNVIDIAはフォルクスワーゲン、奇瑞汽車 、百度、Aurora、それにウーバーと協業している。

コンチネンタル・オートモーティブ


おそらくタイヤでもっとも有名な、ドイツの自動車部品メーカー。コネクテッド・カーと自動運転技術に投資を行っている。BEE(バランス・エコノミー&エコロジー)と呼ぶ自動運転のコンセプト・カーを発表したことで注目されている。コンチネンタルは自動車メーカーとの協業を目指している。

Auroraイノベーション


シリコン・バレーの小さなスタートアップ。自動運転技術の開発でフォルクスワーゲン・グループ、ヒュンダイ、バイトンと協業している。この協業は創立者の一人でグーグルの自動運転プロジェクトのヘッドだったクリス・アームソンに寄るところが大きい。

番外編2 サムスン、自動車産業参入の歴史

サムスンが自動車産業に参入するのは全く初めてではない。コングロマリットであるサムスンは、1994年に自動車メーカーであるサムスン・モータースを立ち上げている。

初期のクルマはほとんどが日産のバッジ・エンジニアリングだった。1998年に発売されたが、ちょうどアジア通貨危機が勃発し、破綻したサムスン・コーポレーションは自動車部門の株式の80.1%を3億5000万ポンド(522億円)でルノーに売却した。残りの19.9%は、グループのクレジット・カード部門であるサムスン・カードが現在も所有している。

社名はルノー・サムスン・モータースと改名され、今ではルノーと日産のモデルをベースにしたクルマの販売で利益を上げている。韓国市場が中心だがルノーと日産の名前で海外でも販売している。

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