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歴史的なクラッシュの多さで荒れに荒れたマカオGP。「ドライバーの質が落ちた」と断じるのは早計……そこにあった背景を振り返る

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歴史的なクラッシュの多さで荒れに荒れたマカオGP。「ドライバーの質が落ちた」と断じるのは早計……そこにあった背景を振り返る

 車両がF3からフォーミュラ・リージョナルとなり、新しい時代の幕開けとなった2024年の第71回マカオGP。ただそのレースは波乱に満ちたものとなり、あまりにもアクシデントが多かった点が特に注目を集めた。

 特に予選では、雨の1回目、ドライの2回目で計12回も赤旗が出された。これを受けてFIAは緊急のミーティングを開き、ドライバーたちを咎めたほどだ。その後の予選レース、決勝レースでも、クラッシュにより何度もセーフティカーや赤旗が出され、まともに周回を重ねられない状況が続いた。

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 注目ドライバーのひとりであったアレックス・ダンは、予選でTGM Grand Prixの佐藤凛太郎のクラッシュに巻き込まれる形となり、後方からのスタートに。彼もフラストレーションの多い週末だったと認めた。

「正直に言うと、この週末はかなりひどかった」

「ドライバーとしては、(マカオは)もちろんとても楽しいものだ。でも正直、今週末マカオを楽しむという意味で言えば全然だった。2周か3周しか連続して走れていないんだ」

 こういったアクシデント多発の理由を、F3からフォーミュラ・リージョナルへの移行と結びつけることは安易なことだ。車両の規格が一段階下がったことで、より経験の浅いドライバーが増えたからだ。

 確かに、マカオが自分のレース人生でかつてないほどのチャレンジだと感じたドライバーも多くいただろう。しかしながら、あの週末に起きたことの根本は、単なるドライバーの未熟さだけでは説明できない。

 まず第一に、天候が大きな要因となった。台風接近に伴う大雨で、プラクティスや予選1回目はフルウエットのコンディション。ドライバーたちがようやく初めてドライで走ることができたのは、レースでのグリッドが決する、プレッシャーのかかる予選2回目からだった。

 ドライでの走行時間がなかったことから、自信を持って攻められるような状態にはないドライバーも多くいたはず。ただアクシデントによる赤旗のリスクを考えると、ゆっくりペースを上げていくわけにもいかず、早めに良いタイムを出すためいきなりフルプッシュする必要があった……そんな状況が、難攻不落の市街地コースであるマカオでさらなるアクシデントを誘発したと言えるだろう。マカオの予選でクラッシュが起きること自体は何も珍しいことではないが、今回は多くの事故が最初のアタックラップで起きていたのだ。

 結局、予選で上位グリッドにつけたのは昨年のマカオGPに出走しているドライバーばかりであった。今回予選、予選レース、決勝レースで2位に入ったオリバー・ゲーテも、「経験のないドライバーがクラッシュしたのは、最初からプッシュし過ぎたからだろう。ここは周回を重ねながら自信を深めないといけないサーキットだけど、壁にぶつかるとそれ(自信)が崩れ去ってしまう」と話している。

 元F1ドライバーで、FIAドライバーズ委員会のメンバーでもあるエマニュエル・ピロは、現地で一連のアクシデントについて多くの調査を行なった。彼は緊急ブリーフィングでドライバーの表情を見て「彼らが“やり過ぎた”と感じていたのは明らかだった」と感じたという。

 またピロは、今回の問題の核心にあるのはドライバーの経験不足ではなく、現代のレースが若手ドライバーに植え付けた“考え方”の問題だと考えている。

「赤旗の原因をひとつひとつ見ていくと、経験のあるドライバーからそうでないドライバーまで、広範囲にわたっていると思う」

「経験の浅いドライバーはここでレースをするべきではない、というのは私はフェアとは思えない。今週末の短い走行時間ではそれを裏付けられないと考えるからだ」

「我々が取り組むべきなのは、ドライバーの心構えを変えることだ。これは大きな問題で、包括的に考えるべきことだ」

 ピッロが示唆したのは、現代のドライバーが広いアスファルトランオフエリアを持つサーキットでレースをしているということだ。ミスをしてコースを飛び出したところで、クラッシュに繋がる確率は低く、せいぜいトラックリミット違反でタイムを抹消されるくらい。つまり現代のドライバーはより安全かつ快適に限界を超えて走ることができる環境にあるのだ。

 ピロは次のように語る。

「今日のドライバーたちのマインドセットは、モータースポーツ、そしてサーキットの形が変わったことによって、毎回100%で走らないといったことが受け入れられなくなっているのだろう」

「ではどうすれば変えられるのか? 一部はチームに責任があると思う。例えばマカオのプラクティスにおいて、最速ラップは常に最後のラップであるべきで、最初のラップが最後のラップになってはいけない。ドライバーの考え方に関しては(チームにも)取り組むべきことがある」

 これについて、優勝したウーゴ・ウゴチュクが所属するR-ace GPのチームマネージャー、ベンジャミン・シュミットも、ストリートサーキットでは明らかに異なるアプローチが必要だと主張。しかし前述のようなコンディション不良により、時間をかけて自信を深めるのが難しい状況でもあったと話していた。

 またピッロ曰く、金曜の緊急ミーティングの際には運営側もコース上で起きていることに対して我慢の限界に達している様子だったが、時間が経つにつれて参加者側の心境の変化も感じ取られたという。
「時には極限状態に達することで初めて変化が起きるということもあると思う」

「金曜日(予選日)によろしくないことがあったからといって、マインドセットまでは変わらないだろうが、何かしらの変化はあったと思う。パドックを歩いていると、多くの人たちが嘆いていて、『もっと違うことをすべきだった』と考えていたんだ」

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