2023年が始まりました。1年はあっという間に過ぎていくと感じる人が多いかと思いますが、40代以上のおじさん世代にとっては、残りのクルマ人生そんなに長くはありません。
そこで、クルマ好きのおじさん世代に向けて、来るべきEV主流時代の前に、おススメの最後のガソリン+MT車を紹介していきましょう。
乗るならいまでしょ! 40代以上のおじさんが最後に乗りたいガソリン+MT車3選
文/ベストカーWeb編集部
写真/ベストカーWeb編集部
■昔憧れた、昔買えなかった、昔乗っていたあのクルマが欲しい編:2代目ソアラ3.0GT
1986年1月にデビューした2代目ソアラは1991年5月に3代目にバトンタッチするまで30万台以上を販売する大ヒット車となった
前もって断っておきますが、筆者は50代半ばのクルマ好きのおじさん編集者です。しょっぱい二十歳前後の頃、1980年代~1990年代にはR30型スカイラインRS-XターボC、R32型スカイラインGTS-tタイプMやAE86、FC3S型RX-7、ワンダーシビックSi、CR-X、スタタボ、アルトワークスなど、今でいうネオクラシックカー全盛の時代に、こうしたクルマを所有している友人たちとともにリアルに走りにいってました。
その後はクルマ雑誌の編集者になって、ほぼこの世に出たクルマを乗ってきたわけですが、2023年を迎えた今、寂しく感じるのは、当時から10年ほど前までは、ネオクラシックカーの価格は今ほどバカ高くなく、ちょっと無理をして鬼ローンを組めばたいていのクルマが買えたのですが、今は絶望的値段で、よっぽどの金持ちじゃないと買えない状況です。
それでは、ガソリン車のスポーツカーの新車は簡単に買えるのかと、まったそんなことはありません。コスパ世界一のホットハッチ、スイフトスポーツをはじめ、GRコペン、ロードスター、GR86、GRヤリス、シビックタイプR、新型Zなどなど。
ちなみに新型Zは2022年7月末で受注が終了し、なんと240台限定、696万6300円のプロトスペックは、今中古車情報サイトに10台近く掲載され、1300万円を超える価格で販売されています。
シビックタイプRにしても受注が殺到して、現在では受注を停止している販売店も出てきており、中古車情報サイトでは890万~950万円で出ています。
こんな時代が来ると、思ってみませんでした。「ネオクラシックカーをあの時買っておけばよかった……」と、思っても昔は戻ってきません。
過去を思い起こせばそうでもないか、ということはちょっぴりあります。バブル崩壊後、スーパーカーの値段が爆落ちした後、70円台まで進んだ円高、リーマンショック後の暴落……。
でも、その時、買ったかといえば、買わなかった人がほとんどです。今のように高騰するとは想像できなかったからです。ハコスカGT-Rが600万円、F40が3000万円、512TRが800万円、964RSが700万円、993GT2が1600万円……と、キリがありませんが、あの時買っておけばよかったと、当時の価格が頭のなかをぐるぐる回っています。
そんなこんなで、高いから今は買えない、と思っているうちに、おじさんはいつのまにか歳をとっていき、あの時買っておけばよかった……と死んでいくのです。
こんなことにならないように、超楽しい、おもしろい、ガソリン車のMT車を、「思い立ったら今買うべき」なのです。そこで筆者が、過去に乗ったガソリン車のMTのなかから、おススメの5車種を紹介していきましょう。
50代の筆者が青春時代の昔を思い起こしながら回想しますので、ちょっと俺の時代と違うなと思ったらごめんなさい。筆者が10代~20代の頃は、ハイソカー、デートカー、六本木カローラ(E30型BMW3シリーズ)や子ベンツ、プロ野球選手が「560じゃなければベンツSじゃない!(と言ったとか)」、そんな時代でした。
昔買えなかったプレリュードXX。ボンネットが低く、ステアリングインフォメーションもダイレクトで、くいっと曲がるハンドルが懐かしい
当時20代の筆者は、3代目プレリュードのXXが欲しくても買えず、安いグレードのXLの中古をカーセンサーで探しながら「120万円か、60回ローンなら、でも無理だな」と諦めつつ、ワンダー(シビック)かEP71、初代CR-Xなど、60万円くらいまでが予算の限度でした。
当時は30代の知り合いが、「7Mのソアラ買ったぞ、乗せてやろうか」とか、ダークブルーの新車の3代目プレリュードを金持ちの親に買ってもらった友人が彼女と一緒に、これみよがしに見せびらかしに来た、そんな時代でした。
サンルーフやマルチビジョンAVシステム、デジタルメーター、さらに自動車電話などのハイクラスな装備に憧れたアラフィフ世代も多いだろう
当時はバブル全盛期、大ヒットした初代ソアラから引き継いだ2代目ソアラは、まさにバブルそのものでした。3.0GTリミテッドには、エレクトロマルチビジョンやエアサスなど最先端の豪華な装備が満載。
2L、直6ターボの1G-GTEUもよかったですが、やはりなんといっても2代目ソアラは7M-GTEUの3L、直6ターボのMTでしょう。蛇足ですが1JZ-GTEの2.5L、直6ツインターボも速かったなあ(280ps、70スープラ)。
2代目ソアラといえばパールツートンの240psとなった3L、直6ターボに乗ったことを思い出しましたが、野太いマフラーの排気音と、直6ならではのパワーフィールにシビれました。この時代、2代目ソアラは40代以上のお金持ちしか買っていなかったような気がします。
また、当時の猛者は7MにHKSのキットやタービン、F-CON Vプロ、マインズのVX-ROMをつけてパワーを上げていき、ガスケットが抜けるという……。
内装も「スナック」のソファにあるような豪華なモケットで、いつかは買ってみたいと、憧れていました。
現在、中古車情報サイトでは、2代目ソアラの中古車はなんと50台以上も流通しており、5万kmあたりで350万円前後、最高価格は475万円と、5MT車の個体も残っていて、これならいいかも、と思わせるものでした。
インテリアにはまるでソファのような形状。今こんな豪華なシートは輸入車の超高級車以外あまり見かけない
昔、買えなかった人は、あの時代に戻ってタイムトリップした気分で、ぜひ買ってみてはいかがでしょうか。それを抜きにしても7Mの直6ターボ+MTは貴重なので、乗ってみる価値はあるかと思います。
ちなみに『危ない刑事』の赤レンガ倉庫(昔は落書きだらけ)や山下町の横浜ロケをリアルに見ていた筆者にとって感慨深い2代目レパードのほうは、中古車流通価格は140万~399万円。当時レパードは、あまり人気はなかったですが、今のほうが専門店もあるほど人気が上がってきています。
代表的なデートカーのプレリュードですが、4代目、5代目はそこそこ残っていますが、初代、2代目は1台ずつ販売さいていました。在庫車は、1986年式17.9万km プレリュードXX 143万円、1989年式15.2万km プレリュードSi 99.8万円。あ、助手席シートのレバーが運転席側にあって、倒せることを思い出しました……。
当時は、ホンダ車はボディがヤワで10年以上は持たないという、嘘かホントかわからない都市伝説が存在していましたが、それを裏付けるかも……。
■初代インテグラタイプR
1995年10月に登場した初代インテグラタイプR。当時はFF最強のハンドリングマシンと言われていた
初代インテグラタイプRは、死ぬ前に乗っておきたいクルマの一つだと思います。ではなぜ初代インテRなのか?
ボディ剛性の面からいえば、2代目インテRのほうが上ですし、エンジンに関してもF20C型2L、直4VTECを搭載するS2000のほうが、250ps/22.2kgmと勝っています。さらにいえば、B16型1.6L、直4VTEC(185ps/16.3kgm)を搭載する初代シビックタイプRもあります。
キーを捻ってエンジンを掛け、アルミのシフトノブを介して1速に入れ、右足を踏んで加速していくフィーリングは、いまだに忘れられません。前輪が空回りし、トラクションが不足しながらの圧倒的な加速フィールは衝撃でした。
天邪鬼かもしれませんが、S2000は確かに最高のクルマでした。シャシー、ボディ、エンジンすべてにわたって完成度が高く(インパネは味気ない)、むしろサーキットじゃないと、その魅力は楽しめないと感じました。つまり、限界が高いのです。
200ps/19.0kgmを発生する
その点、1060kgの初代インテRのボディはS2000に比べるとちょっとヤワなので、限界点が低い。山坂道や大黒パーキングから首都高に出る際の360度コーナーなど、そんなに飛ばさなくてもドキドキするほどの興奮が味わえたのです。
手作業のポート研磨や専用のピストン&カムシャフトを備えるB18CスペックRは、低速から高速へカムが6000rpmほどで切り替わってからは、まるで別物のように一段とシャープさが増していき、レブリミットの8400rpmを超えても衰えない回転フィール。
今ではこれほど、怖いくらいのレスポンスを持つクルマはそうそうないのではないでしょうか。タイヤが太く、ボディ剛性が高く、車重が重いため(衝突安全性や安全装備のせいで)、素のコットンシャツがインテRだとしたら、現在の安全装備テンコ盛りのクルマは、それに革ジャンかダウンジャケットを羽織った感じで、ちょっと過剰な感じがあります。この素のコットンシャツと、身体と一体になる感覚は、ネオクラシックカーのよさであると思う。
98年1月のマイナーチェンジで登場した98スペック
初代インテRは年式によって3つのモデル、96スペックと98スペック、00スペックがあります。96スペックRは1995年10月に登場した前期型で、その後、1998年1月のマイナーチェンジで195/55R15サイズの4穴114から215/45R16サイズの5穴114に変更されたのをはじめ、最終減速比が4.400から4.785にローギアード化され、エキゾーストマニホールドがスチールからステンレス製に。
さらにブレーキキャリパーの大型化&ローター径1インチ拡大、モノコックの剛性強化などが挙げられます。エクステリアもヘッドライトがハロゲンからHIDになったり、リアバンパーやテールレーンズの形状に若干の違いがあるなど細かいところにも違いはあります。
なんの飾り気のないスパルタンなコクピット。モノコックの高剛性化、足回り、ECUの見直し、ファイナルギアレシオのローレシオ化などの変更が行われた。1999年12月には00スペックといわれる最終型が発売された
00スペックは基本的には98スペックと変わりはありませんが、法規制に対応するため、型式がE-DC2からGF-DC2に変更されています。細かいところではセンターコンソールにシリアルプレートが装着されたり、スポーツペダルや電動格納式ミラー、カーボンパネル、キーレスエントリーなど装備が充実しています。
最終型である00スペックは1999年12月に登場
初代インテRの中古車価格帯は158万~889万円と、爆上がり中です。889万円の個体は整備記録簿13枚付きの走行距離1.6万kmで飛び抜けて高い。次に高いのが走行距離1.3万kmの96SPECが529万円、以下400万円代は5万km以下の極上車、300万円以下は10万km代が多くなってきます。
個人的にはいいなと思ったのは98スペック R、走行距離2.8万kmの個体。ただし価格は416万円。つい2、3年前は250万円前後で買えたのに……。
では96スペックか、98スペック、00スペック、どれがいいのかですが、性能と価格のバランスを考えると、98スペックとなりますが、そこはやはり20年以上前の中古車ということを考えると、“程度重視”になるでしょう。
■スカイラインR32GT-R
レースで勝つために生まれたR32スカイラインGT-Rは、正式発表から32年たった今でも色あせていない
続いて、R32GT-Rです。これはもうあえて語り尽くされていますので、多くは語りませんが、このR32GT-Rが出た時の衝撃は計りしれないものがありました。
4000rpmからの官能的に盛り上がっていく280ps/36.0kgmのRB26DETT、電子制御トルクスプリット4WDのアテーサE-TS、スーパーHICAS……。
プレス向けのサーキット試乗会で、R32GT-Rを試乗した際には、これまで体感したことのないぶっちぎりの速さだったことをいまだ身体が覚えています。圧巻のエンジンレスポンス、シャシー剛性の高さ、スタビリティの高さ……、これは後にR35GT-Rを初めて試乗した時に感じた衝撃よりも上でしたね
R32スカイラインGT-Rのエンジンルーム。「平成」を代表する名エンジン、RB26DETT
さて、気になる中古車価格です。R35GT-RのVスペックIIニュルはいまや5000万円を超えています。さすがにそこまではいっていませんが、R32GT-Rもなんと4950万円の個体が売りに出ています。走行970kmのワンオーナーのR32GT-R NISMOです。
続いてワンオーナー車の1万kmの個体は1950万円。それ以降の程度のよい個体は800万円代から1000万円前後となっていて、最低価格も走行距離15万kmオーバーで500万円前後になっています。
ステアリング形状やインパネのデザインも新たな時代が来たと感じさせた。当時はスポーツ系のクルマを買うと、ハンドルをすぐに換えたがR32系は換えなくてもカッコよかった
今回、選りすぐりの3車種を選んでみましたが、もちろんこれ以外にもたくさんあります。ざっと頭に浮かんだものを挙げてみると、2JZの80スープラ、1JZのチェイサーツアラーV、S2000、初代シビックタイプR、ランエボV、VIおよびトミマキネンエディション、NAロードスター、FD3S型RX-7(280psのMT)、NSXなどキリがないのですが今回はこれまで!
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ポートの手作業研磨は最初期の生産ロットだけ。公式じゃ無いけど95スペックって言われるやつ。
この記事を書いた記者、こんなんで稿料貰えるのか。楽な商売。