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人生アガリの車はマセラティ「3500GT」で。「ディーノ246GT」ではなく難ありトライデントを選んだ理由とは

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人生アガリの車はマセラティ「3500GT」で。「ディーノ246GT」ではなく難ありトライデントを選んだ理由とは

これぞイタ車趣味・アガリの1台!?

2023年10月22日(日)、兵庫県多可郡のセントラルサーキットで開催されたのが「西日本最大のイタリア車の祭典」といわれる「Ciao Italia 2023(チャオイタリア2023)」。イベントのサブタイトルに「第29回イタリアンカーフェスタ イン セントラルサーキット」と添えられている通り、サーキット走行がメインのイタリア車好きのためのイベントです。今回で29回目を迎えるこのイベント、イタリア車であればメーカーや車種、年式を問わず参加OK、当日の会場はさながらイタリア車ミュージアムの様でした。会場で気になったクルマのオーナーにお話を伺ったのでご紹介します。

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レーシングカー・コンストラクターだったマセラティ

晴天に恵まれた会場内パドック中央には「F40」、「F50」、「エンツォ」と3台のフェラーリ・スペチアーレが揃って展示され、来場者の注目を集めていた。また、最新のフェラーリや派手なカスタムが施されたランボルギーニ、やる気満々のアバルトたち、そして「パンダ」や「チンクエチェント」といった小さなフィアットまで、エントラントのクルマは新旧大小バラエティに富んだ顔ぶれ。イベントの性格上、それらの多くはレースや走行会にフォーカスした「体育会系」オーラに包まれたものが多いのだが、そんな中、会場の一角でその涼しげで清楚な佇まいがひときわ目を引いていた1台。それがこちらのマセラティ「3500GT」である。

それまでイタリア国内外で自動車技術について多くの研鑽を重ねてきたマセラティ兄弟が、第一次世界大戦勃発の年、1914年にボローニャで立ち上げた小さなガレージ、それがマセラティの始まりである。当初は他メーカーのレース活動とジョイントしたり、スパークプラグの生産などを行っていたマセラティだったが、初めて自らの名を冠したクルマをリリースしたのは1926年のこと。それは「ティーポ26」と呼ばれる8気筒1.5Lエンジン、オープンホイールのレーシングマシンであった。すなわちマセラティの始まりは市販乗用車メーカーではなく、レーシングカー・コンストラクターとしてだったのである。

第二次世界大戦までは、ほぼレーシングカー専業メーカー。マセラティ製レーシングカーの活躍の場はヨーロッパのみならず、1939年、1940年には「8C TF」がインディ500マイルで連覇を果たすなど、海外にも及んだ。そして、時折それらのレースカーにロードエクイップメントを加えたロードカーも注文に応じて手がける、という形をとっていた。戦後しばらくの間もそのスタンスを取り続けてきたマセラティだったが、1960年代に入ると徐々に「レーシングカー・コンストラクター」から「豪奢な高性能GTスポーツカー・メーカー」へと変貌を遂げていく。そんな同社のひとつの分岐点となったエポックメイキングなロードカーが、マセラティ3500GTだ。

難ありのマセラティを本国でレストアして輸入

「もともとクラシックカーが好きで、最終的にこのマセラティ3500GTにたどり着きました」

と語るのはオーナーの岡田勝治さん。かねてからイタリア車を中心にヒストリックカー趣味を楽しまれてきた岡田さんは、フィアット「ムルティプラ」を3台同時に所有していた時期もあるというほどの剛の者。

「それらを手放した後、ひと頃はディーノ246GTを探していた時期もあったのですが、よりクラシカルな風情が好ましいこの個体に出会って購入を決意しました」

出会った当初のコンデションは「多少難あり」だったということで、イタリア本国でレストアを終えてから輸入。以来、主にイベントやツーリングを楽しまれているとのこと。イベント当日のサーキット走行でも快調な走りを見せていた。

「国内では比較的数が少ないクラシック・モデルということで、マセラティ・ジャパンさんの新車発表会の展示協力などにお声がけいただくこともあります」

という岡田さんの3500GTは1960年式。マセラティとしては初の「量産」を前提とした高性能市販GTとなった3500GTであるが、しかしその中身は本格的。エンジンは当時のレーシング・スポーツ、「350S」の3.5L直列6気筒のデチューン版だ。

「同時代のA6 GCSやバードケージのイメージとも重なります。エンジンの回転数を上げていくと上の方でドカンと力が出る感じは、いかにもレーシング由来かな、と」

由緒正しい純血サラブレッドがそのポテンシャルを、カロッツェリア・ツーリング製の流麗なボディで覆った3500GT。オーナーの岡田さんにとってはもちろん、多くのイタリア車好きにとっても、まさに「イタ車趣味・アガリの1台」と言えるのではないだろうか。

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