1990年代、三菱自動車(以下、三菱)はさまざまなRVを市場に投入した。なかでも印象的な5台を小川フミオが振り返る。
1990年代の三菱は強かった。商品力の強い数かずのプロダクトでもって、当時、売れ行きからいえば日本車の第3位! トヨタ自動車を猛追していた日産自動車には迫れなかったものの、ホンダやマツダを突き放すほどの勢いだったのだ。
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背景にあったのは、フルラインナップのターボ化や、スポーティな全輪駆動モデルの拡販といろいろ。なかでも「パジェロ」が先鞭をつけたRV(レクリエーショナルビークル)の成功は大きい。
当時の三菱は若者文化の取り込みが上手だった。ラリーでの好成績は1967年に豪「サザンクロスラリー」でクラス優勝した「コルト1000F」いらいずっと続き、そこに、パジェロでのパリダカールラリー参戦(初戦は1983年で、総合優勝は1985年)も、自動車好きにとって、たいへん魅力的なニュースだったのだ。
並行して、ユーミンこと松任谷由実氏と組み、スポンサーしたコンサート開催や、ユーミンじしんを“パリダカ”で走らせるなど、音楽とクルマが密接に結びついていた当時のマーケットを、うまくコントロールしたのだ。市場を創出するためのオートキャンプ場もあった。
それがいまや、2020年の中間連結決算で、赤字2098億円……。当時のいきおいを知る身としては、エールを送る意味もこめて、三菱車が活気に満ちあふれていた1990年代を振り返ってみたい。
(1)パジェロ(2代目)
パジェロは、トヨタ「ランドクルーザー」など、1970~1980年代にあらわれ市場を形成していったクロカン型4WD車への挑戦であった。
レジャーブームやキャンプブームが生まれていて、そのひとたちが、いまの言葉でいうSUVを求めるトレンドが生まれていたのだ、当時、スパルタン(簡略な装備)なジープを生産していただけでは、太刀打ちできないと気づいた開発陣が企画を立ち上げ、当初”ヨンクなんて必要ない”と言っていた経営陣を説き伏せた結果が、初代パジェロの誕生であった。
当時、レンジローバーみたいなデザインがウケると踏んでいた三菱のデザイン部が、探り針の目的で開発した試作車「パジェロII」が1979年の東京モーターショーで好評。それに勢いを得て、大胆なボクシーなスタイルを採用し、はたして大当たりとなった。
1991年、9年ぶりにモデルチェンジして登場した2代目は、いわゆるキープコンセプト。初代では、エンジンやボディのバリエーションを豊富にそろえたことも販売面のプラスになっていた。そこも受け継いだ。
ショートボディ、ロングボディ、メタルトップ、ソフトトップ、ミッドルーフ、キックアップルーフ、さらに標準ボディとワイドボディがあった。エンジンも、ガソリンとディーゼル、V型6気筒と直列4気筒という具合だ。
メカニズムの特徴は、「スーパーセレクト4WD」の採用だ。初代はパートタイム式4WDであったところ、フルタイム4WDとして使えるというふれこみだった。くわえて、従来、センターデフロック時には働かなかったABS(ブレーキをかけているときロックするのを防ぐ安全装置)が作動するようになっていた。
1999年にフルモデルチェンジを受けるまで、バリエーションは増え続けた。市場の声を聞きながら、メカニズムやボディバリエーションなど、新しい提案をすることで需要を作り出す。それが奏功したのである。
(2)パジェロミニ/パジェロジュニア/パジェロイオ
三菱自動車が、ジープでないモデルの必要性を感じ、新しい”ヨンク”の企画に着手しようとしていたころ、想定した競合のなかにスズキ「ジムニー」も含まれていたとか。
パジェロが2代目にモデルチェンジしたのち、1994年に発表されたのが、「パジェロ・ミニ」。まさにパジェロがお手本にしたような、ボクシーなスタイルの2代目ジムニー(1981年~1998年)と真っ向からぶつかるモデルである。
パジェロ3ドアをそのまま小さくしたような3ドアボディで、659cc直列4気筒エンジンを搭載。4WDシステムは、「イージーセレクト4WD」と名付けられ、走行中に2WDと4WDの切り替えができた。
少なくとも日本の軽自動車市場では、当初メーカーが考えていたような本格的4WDへの評価はあまり高くなかった。そこで1996年に後輪駆動仕様が追加された。この時代の軽自動車では前輪駆動が常識。そこに後輪駆動で、パッケージ的にはやや違和感があったものの、操縦性は楽しかった。
パジェロミニ登場の翌年にあたる1995年、1094ccの「パジェロ・ジュニア」が追加された。1993年登場のスズキ「ジムニーシエラ」と真っ向からぶつかるモデルである。成り立ちもシエラに似ていて、軽規格のパジェロ・ミニがベースだった。
ただし排気量の大きなエンジンとともに、前後のトレッド(左右の車輪のあいだの距離)を拡大するなど、ていねいに手を入れたことで、走りは別ものに。よく出来たクルマだった。
そして1998年、パジェロ・ジュニアがモデルチェンジして出来たのが「パジェロ・イオ」だ。ホイールベースが初代の2200mmから2450mmへと拡大し、ボディ全長も3500mmから3950mmへ。なにより4ドアボディの設定が特徴だ。
1834ccエンジンは130馬力の最高出力と、これもジュニアの1094cc・80馬力から大きく変わった点だ。ヨンク性能も上がり、パジェロ(本家)と同様のスーパーセレクト4WDまで載せられた。価格も200万円ちかくに。パジェロで成功した、フル装備化はここでも実行されたのである。
(3)RVR(初代)
1991年にデビューしたトールタイプ(全高1680mm)のクロスオーバー。当時、クロスオーバーという言葉は使われていなかったので、まさに「RVR」の車名のとおり、RVとひとくくりにされた。
シャシーは2代目「シャリオ」のものを流用。初代「ランサー・エボリューション」にも搭載された1997ccのターボエンジンに、センダーデフを持ったフルタイム4WDシステムを組み合わせた高性能モデルも設定された。
右側は運転席がわのみにドア。左は後席用にスライドドアが設けられた3ドアというデザインもユニークだ。ドアを開けたとき、足もとのスペースも大きく、乗降性も考えられていた。
当時の三菱の“イケイケぶり”は、この初代RVRで発揮された。はたしてどれだけ売れたかわからないものの、前席のルーフ部分を電動で格納できる「オープンギア」というユニークなグレードもあった。
1997年に登場した2代目は、スライドドアを持ちながら、スポーティな雰囲気の台形シェイプ。おもしろいけれど、コンセプトをいじりすぎたかなと思われた。でも家族を乗せるクロスオーバー車としたら、いまでも通じそうなコンセプトだ。三菱車を語るとき、往々にして”いまだったら”と書き足してしまう。そこがおもしろい。
(4)デリカ・スペースギア(初代)
三菱のモノボリュウム(ワンボックス)といえばデリカ。1994年に「デリカ・スペースギア」と名づけられて登場したモデルは、コンセプトをひねって、4WD化がはかられた。なにしろシャシーに使われたのはパジェロのフレームなのだ。
強く傾斜がつけられた短いノーズに変型ヘッドライトの組み合わせ。スタイリッシュなボディだ。全長がちがう(乗車定員がちがう)2つのタイプが用意されていた。
ショートボディは最大8人乗り、ロングボディは10人乗りだった。個人とともに、送迎などに使う法人も重要なターゲットだったのだろう。2列目シートのアレンジは多様。真横を向くよう設置できる仕様もあった。
ドライブトレインは、ビスカスカップリング式センターデフをもったスーパーセレクト4WD。バリエーションとして、後輪駆動も選べた。走行中に2WDと4WDを切り替えられるシステムで、ウィンタースポーツなどを楽しむユーザーにはありがたかったのだ。
仕様は豊富で、とりわけスキーが好きなユーザーをターゲットにしたような「シャモニー」や、アグレッシブともいえる雰囲気の「エアロ4WD」など、印象に残るバリエーションがあった。
(5)レグナム
8代目三菱「ギャラン」のステーションワゴン版として登場したのが、1996年の「レグナム」。当時、世界ラリー選手権にも挑戦していたスポーツモデル、ギャランのイメージを色濃く持っていたのが特徴で、アウディ・アバントのようなスポーツワゴンである。
トップモデルは280psの2498ccV型6気筒ガソリンターボ・エンジン搭載の「VR-4」だった。特徴は「アクティブ4」と三菱が名づけた技術を搭載していたこと。それは4-valve(DOHCエンジン)、4WD(フルタイム)、4WS(4輪操舵)、そして4ABS(前後にアンチロックブレーキ)である。
全長4710mmのボディに、前後長の長いルーフ。前輪より前の部分であるフロントオーバーハングの長さがプロポーションを壊しているようでやや気になったものの、スポーツワゴンというメーカーの意図は十全に達成したと思う。
イメージリーダーは上で触れたとおり、スポーティなVR-4だったいっぽう、荷室が重くなったときのためのセルフレベリング機構など、レクリエーションに使えるステーションワゴンとしても機能は考えられていた。
が、1996年に日産が直列6気筒に後輪駆動を組み合わせた「ステージア」をだしたことでスポーティ志向の客を奪われた。1997年にトヨタ自動車が「マークIIワゴン・クオリス」を出したため、快適志向の客が多くそちらに流れた。
パジェロやデリカ・スペースギアのようにニッチ(市場のすきま)ねらいの商品では強みを発揮した三菱自動車も、大手と真っ向勝負するには、いろいろな意味でやや力が足りなかった感がある。それが惜しい。
文・小川フミオ
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