乗車中の緊急事態の際に助けを手配してくれる「SOSコール(ヘルプネット)」への注目が、ここ1年で軽自動車の日産「デイズ」や「ルークス」にオプション設定されたこともあり、にわかに高まっている。
メーカーによってシステムの呼び方は変わるものの、最新車両に多く搭載されているこの緊急通報システムについて、当記事ではその仕組みや疑問などについて解説していく。
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文/永田恵一
写真/編集部、TOYOTA、日本緊急通報サービス
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■そもそもSOSコール(ヘルプネット)とは何か?
SOSコール(ヘルプネット)の機械的な仕組みはカーナビに使われるのが代表的な自車位置を把握するGPSと、DCM(データ・コミュニケーション・モジュール)などと呼ばれる通信機能を組み合わせることによるクルマと外部の通信、通話である。ソフトウェア的な方は1999年に設立された、緊急事態時に救急や警察を遠隔手配してくれるヘルプネットを運営する日本緊急通報サービスという企業が行っている。
これらの基盤によりあっては欲しくない事故やクルマに乗っている最中だと本当に一刻を争う脳や心臓に代表される重篤な急病の際に、ルームミラー前方にあるSOSや救急車のボタンを押すか、カーナビの中のそういったボタンを押すとヘルプネットにつながり、車内とオペレーターとの通話が始まる。その時点でGPSにより自車の位置はオペレーターに把握されているため、自車の位置を伝えにくい遠方や寂しいところでもオペレーターとの通話により即救急車や警察を手配してもらえるのだ。
事故などの緊急事態の際に、オペレーターが直接警察や消防へ連絡を行うサービス。衝撃度合いで重傷確率を出し、ドクターヘリを要請することもある
さらにクルマによっては大きな事故の可能性が非常に高いサイド&カーテンも含むエアバッグが展開した際にはオペレーターから車内に呼びかけがある。反応がない場合には重篤な事態と判断し、自動的に現場に救急車や警察が手配され、最新のものだと事故の際のスピードや衝突の方向、シートベルト着用の有無、自車位置に代表されるクルマからの情報を考慮し、状況によっては医師が乗ったドクターヘリを手配してもらえるというものもある。
ここまでの機能が装備されたクルマで通信できれば、夜中、悪天候、クルマの通りがない道で事故に遭い意識を失ったという最悪の事態が起きても、生還できる可能性は大きく高まる。
SOSコールが市販車に搭載されたのは2000年登場のトヨタ「3代目セルシオ」のメーカーオプションのカーナビ+ディーラーオプションのDCM付が最初で、翌2001年登場の日産「4代目シーマ」のメーカーオプションのカーナビ付や2005年開業のレクサスといったところが先駆けだった。3代目セルシオが最初というのには、日本緊急通報サービスの設立が1999年に設立されたことを見ればピンと来るクルマ好きもいるかもしれない。
3代目セルシオ。日本で初めてSOSコールを搭載したモデルだった
なお3代目セルシオのSOSコールにはこの時点でエアバッグの展開に連動したオペレーターからの呼びかけも含まれており、筆者は「こういった将来につながるシステムをいち早く採用することも高級車の大きな存在意義」とよく言われる意味を深く再認識した。
またSOSコールが代表的なクルマと外部の通信、通話を基盤にトヨタの「G-BOOK」、日産の「カーウイングス」などから発展し、ここ2年ほど注目を集めているのがトヨタのコネクテッドカーを筆頭とする「つながるクルマ」である。
「つながるクルマ」ができる機能としては
・オペレーターとの通話による各種案内、それにより行き先を決めればその場所をカーナビに遠隔操作で入力してくれる
・スマホへの盗難が予想される異常事態の通知、不正侵入に対するスマホからのエンジン再始動やハンドルロックを解除不能とする
・盗難の際には自車位置の把握から走行中を含めた自車位置へ警備会社を手配してくれる
・窓の閉め忘れなどをスマホに通知
・警告ランプが点いた際の指示、対応するディーラーの手配
・スマホなどへのオーナーの関係者に向けた自車位置通知
など、最後の関係者へ自車通知は「やましいところ行くとバレるかも?」などの妙な心配をしてしまうほど、現時点でも把握しきれないほどの機能があり、「つながるクルマ」の将来や発展はいい意味で予想がつかないくらいだ。
なおSOSコールを含めた「つながるクルマ」の利用費はクルマや機能によってもかなり変わってくるが、一例としてトヨタヤリスは新車から5年間無料、6年目から年3630円となっており、このくらいならSOSコールだけでも払う価値のあるものとなっている。
■SOSコールはどのクルマに搭載されている?
SOSコールの機能を
[1]ボタンかカーナビから助けを呼べる
[2][1]+エアバッグの展開時のオペレーターからの呼びかけ
とし、現行車で選べるものを挙げると
●トヨタ
[1]
メーカーオプションかディーラーオプションのカーナビの選び方によってほとんどのモデル
[2]
ヤリス、アルファード&ヴェルファイア、グランエース、カムリ、セダン&ツーリング&スポーツの3ナンバー幅となるカローラ、センチュリー、ランドクルーザー、ランドクルーザープラドなど
●レクサス
[2]全車
●日産
[2]デイズ、ルークス
※プロパイロット2.0が着くスカイラインハイブリッドには、プロパイロット2.0を使用中ハンドル操作がないなどの異常事態の際にはクルマがドライバーに緊急事態があったと判断、クルマを自動停止しオペレーターが呼びかけ、反応がない場合には自車位置に救急車を手配してくれる機能がある
●ホンダ
[1]メーカーオプションかディーラーオプションのカーナビの選び方によって、軽自動車以外のほとんどのモデル
[2]フィット
●マツダ
[2]マツダ3、CX-30
こちらは2019年12月時点で発表されていたヘルプネット搭載車リストになる。現在は新たにトヨタ「ヤリス」、日産「ルークス」が追加され、2020年2月に登場した新型アコードにはSOSコールは搭載されていないため除外される
大まかな傾向としてトヨタ、日産、ホンダ、マツダの最新モデルで何らかのSOSコールが装着できることが多い。では日本メーカーの他社のモデルになぜないかと言えば、答えは簡単でヘルプネットに前述の日本メーカーとスバルしか入っていないからである。
そのため現在SOSコールを使えるスバル車はないが、年内に登場する次期レヴォーグからSOSコールが使えるようになる可能性は非常に高い。その反面、日産「デイズ & ルークス」と三菱「eK」は同じクルマなのに、三菱eKにはSOSコールが着けられないということがあるのだ(それだけにデイズ&ルークスはSOSコールがある唯一の軽自動車というアドバンテージにもなっているわけだが)。
軽自動車として初めて「SOSコール(ヘルプネット)」を設定した日産「デイズ」。走りだけでなく、これからの時代に求められるシステムとして、いち早く軽自動車に採用した
SOSコールは見方を広げれば有効な安全装備のひとつだけに、早期に日本の全メーカーが足並みを揃えて普及を望みたい。
またトヨタは3代目セルシオのSOSコールやG-BOOK以前の90年代最後の時点でMONETと呼ばれた、カーナビと当時の携帯電話を接続によるクルマとの通信からこの種のことを始めていた。この点を思い出すとSOSコールや「つながるクルマ」に限らずAT、5ドアセダン、デジタルメーター、ハイブリッドなどと同様に「将来性があると判断した技術は時間が掛かっても大事に育てて必ずモノにする」というトヨタのよきDNAを再認識する。
■SOSコールで気になるQ&A
いくつか挙げると
●あおり運転にあった場合には使っていいのか?
これはイエスとしているメーカーが多い。こういった場合には走行中でも自分で携帯電話を使って助けを呼んでもいいが、SOSコールがあればオペレーターを介して自車位置を含め警察などに取り次いでくれるのでよりリスクは減る。
●困った時には何でもSOSコールをしていいのか?
それはノーである。レクサスのSOSコールを使っていい線引きのようなものをまとめると、救急、消防、警察の出動が必要な場合となっている。そのため例えば「脱輪した」というような場合にはJAFなどに連絡することが優先だ。
●SOSコールを間違えて発信したら?
マツダのQ&Aによると「間違えて発信した旨をお伝えください」とのことで、押し間違えはしないようにしたい。
●SOSコールはどこからでも通じるのか?
初歩的ながら契約が必要なのに加え、オペレーターとの通信の基盤になっているのは携帯電話の電波網だけに、携帯電話が通じないところではSOSコールも通じないということは残念ながらあり得る。
SOSコールも安全装備や運転支援システムのようなものであり、通じないこともあり得るにせよ「もしもの時の備え」として、着けられるクルマなら装着、契約を強く薦める。
またSOSコールにはボタンにカバーがあるものがあるのもあり、万一に備え同乗者にも存在や使い方を伝えておくといいだろう。
いずれにしてもSOSコールを含めた「つながるクルマ」は進化や発展も含め、今後大いに注目したい分野だ。
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