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「ラリー丹後2021」で初めてラリーをフル観戦して、コ・ドライバーの偉大さを知った!

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「ラリー丹後2021」で初めてラリーをフル観戦して、コ・ドライバーの偉大さを知った!

2021年5月21日~23日に、京都府京丹後市で「NISSHIN RALLYラリー丹後2021」が開催されました。これはJAF全日本選手権第5戦、JAF中部・近畿ラリー選手権第2戦、JMRC近畿SSラリーシリーズ第2戦からなるJAF公認国内競技でした。
今回はこれまでラリーを観る気があまりなかった私がフル観戦してみたら「そこがおもしろいやないか!」と思ったお話です。

ラリーはその昔、アーケードゲームやその後「湯川専務」のCMで一世を風靡した家庭用ゲーム機セガサターンで「セガラリーチャンピオンシップ」をプレイしたくらい。モータースポーツとしては全く興味がありませんでした。観戦場所までは山の中を歩かなければならないし、虫たちには好き放題噛まれるし、そうして苦労した割にはクルマは一度しか目の前を通らないし、しかも安全がある程度担保されている場所でしか観られないので、よくある衝撃映像的な迫力ある場面に遭遇することもないし。観たことがないくせにイメージでそう思っていました。
それではなぜ観に行こうと思ったのか?
モータージャーナリストの竹岡圭さん、清水和夫さん、国沢光宏さんが出場されること、その国沢さんがハイエースを走らせるという情報を得たからでした。この季節ならまだ気温も高くないし、虫もそんなにいないだろうから山の中にいても大丈夫やろうと思ったこともあります。ラリーの知識ほぼゼロでふらりと観に行ったら驚くことがたくさんあり、俄然興味がわいてきたのでした。
基本用語などラリーについて調べたサイトはじめ関連サイトを文末にまとめてご紹介してありますので、もしご存じない方がいらっしゃいましたらまずそちらをご覧になればと思います。私も知らないことがたくさんあったのでそれらサイトで調べました。

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来た、観た、訊いた

「コドラの何が楽しいの?」
ラリーで最も理解できなかったのがこれです。私は運転が大好きなので助手席に座ってしゃべっているだけのこの役割を担いたい人の気持ちがぜんぜん解らなかったからです。しかもちょっとミスしただけで崖から落ちてしまうようなラリーで命運を他人に委ねるなんて想像しただけでゾッとします。
頑固一徹カズ(モータージャーナリストの清水和夫さん)のコドラ(コ・ドライバー=事前に作成したペースノート(道路の曲がり具合、路面状況などを記したノート)を元に助手席から路面状況などをドライバーに伝える選手)を務めるこの道8年の山本磨美選手にこの疑問をぶつけてみました。
ちなみに彼女は2015年全日本ラリーで初優勝し、2019年にはK-one Racing山本悠太選手のコドラとしてトヨタ86で参戦しJN3クラスシリーズチャンピオンを獲得した実績の持ち主です。
答えを聞き、また質問する、ということを繰り返しているうちに徐々に考え方が変わっていき、話し終わるころには、
「コドラの仕事っておもしろい。むしろコドラの方がおもしろいんやないか?」
と、思うようになっていました。それはなぜか?短期的、長期的且つ広い視野でいろんなことを考えていることを知ったからです。クルマに乗っているのに自分では運転せず、道案内をするだけのツマラナイ仕事ではないということを。変な決めつけをしていてほんとごめんなさい。
コドラは、ドライバーをいかに気持ち良く走らせるかを考え、ドライバーを育てながら最終的には優勝に導く。そしてそれは自動的にコドラ自身も優勝することになります。もしドライバーとしては優勝できる運転技量を持ち合わせていなかったとしても、コドラならドライバーの力を借りて優勝するチャンスはある。それは他力本願ではなく、ドライバーの技量を上げるために自分の能力を使って育てる。ドライバーと二人で一人というのか、まさに二人三脚でSS一つ一つを作り、そしてシーズンを作り上げていく。そのためにはできることはすべてやる。そんな感じでした。
初めて組むドライバーなら経歴だけではく生年月日、星座、血液型を確認してある程度人柄を推定しておき、会ったら話ながら接し方を考える。クルマに乗ったら走りながらどんなことを言って欲しいのかを想像し、指示を出すタイミングや内容を考えながらアドバイスしているそうです。
とにかく、ドライバーが実力をフルに発揮して、まずは安全無事にSSを完走しつつ少しでも技量を上げて、次のSSに臨むためにはどうすればいいか? を常に考えています。
レッキという本番前の下見でペースノートの作成は、ドライバーが呟いた言葉を書き留めるところから始まるのですが、その内容が以前より細かくなったり違うことを呟いたりということがあるそうで、その時には「お、ステージが上がったな」と思うそうです。人材育成的な要素も多分にありますねきっと。
結果を出すために気を配る相手はドライバーにだけでなくチーム全体に及びます。ドライバーやテントの雰囲気を見ていて、良くないように感じた場合はすっとお茶やお茶菓子を差し出すこともあるそうです。コドラとはただの担当者でもマネージャーでもなく、大番頭? 裏で糸を引く陰のフィクサー? いずれにしても斜め後ろ上から自分、ドライバー、チームのあらゆることを客観的に見て、分析する能力に長けた人間観察の達人であることは確かでしょう。
自分が運転して勝つのももちろん爽快で楽しいでしょうけれど、コドラはコドラでキングメーカーとして一歩引いたポジションから活躍するのも楽しそうです。とにかく相当楽しい仕事であることに違いなく、話を聞くうちにドライバーよりコドラの方が断然楽しいんじゃないかと思うようになり、コドラでラリーに出場するのもいいじゃないかと思い始めました。しかし……。
インタビューの最初の彼女の言葉を思いだしました。
「裏から支えるのが性に合っているのだと思います」
客観的に自己分析をし、実践できる人はなかなかいないと思います。オレがオレがの性格では務まりません。自分をぐっと殺して抑えなければならない局面もあるでしょう。自分には無理だと確信しました。残念ですが。
自分をモロに出すコドラを雇ってしまったためにシーズン通して苦労したことがあると別のチームのドライバーに聞いたことがあります。双方の性格的相性ということもあるでしょう。優秀である以前に相性の適合も大事なのですね。いずれにしてもコドラはチームの命運を左右する重要な役割を担っていることは間違いないでしょう。

コドラを中心に観るラリーのススメ

そんなこんなでいつの間にか興味はコドラに移ってしまいました。カズさんが自身の動画サイトのためにベテランチームのドライバー、コドラにインタビューしているところを横から盗み聞きしたらこれがまたおもしろかった。
そのチームのペースノートは、回すステアリングの段も多く、奥で急になっている、水たまりがある、上りなのか平坦なのか下りなのかなどより細かい情報も書き込まれているようです。上りならアンダーステアが出にくいからつっこんで行けるけれど下りならそれはだめ、コーナーのあと長い直線がある場合は立ち上がり重視の走りでコーナーにアプローチしてなどなど、タイムを刻んでいく(縮めていく)走りのための情報がより多く詰まっているようでした。上級者のペースノートになるほど読み上げるコドラの言葉を聞くだけでコースレイアウトがより詳細に目に浮かぶ、そんな感じがしました。
コドラを中心にしてラリーを観ればよりおもしろいのではないか、より深くラリーを知りたくなったらコドラに注目すれば良いのではと強く思ったインタビューでした。

数々アップされているオンボード映像を見ながらコドラが発する言葉を聞いてみたらいろんなことが見えて楽しめました。いくつかご紹介いたします。

ラリー丹後
http://rallytango.com/

ラリーとは?用語などはこちらへ
https://www.jrca.gr.jp/guide/whats
https://toyotagazooracing.com/jp/wrc/glossary/

圭ラリープロジェクト
http://www.kei-rally.com/
今回注目したペースノートについてやラリー豆知識がわかりやすく解説されている動画
https://www.youtube.com/watch?v=PKW2nCgnbYE

国沢光宏さんのサイト
https://kunisawa.net/

コドラとペースノートについてのインタビュー動画は清水和夫さんオフィシャルサイトのこちらにあります
https://www.startyourengines.net/movie/159310/
山本磨美選手仕事がわかる過去動画
https://rallytube.net/tag/%E5%B1%B1%E6%9C%AC%E7%A3%A8%E7%BE%8E

(取材・写真・文:大田中秀一)

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