インテルラゴス・サーキットを舞台に開催されたF1第21戦サンパウロGP。現地11月3日(日)に行なわれた決勝レースでは、レッドブルのマックス・フェルスタッペンが勝利を手にした。3番グリッドスタートだったRBの角田裕毅は7位だった。
土曜午後の豪雨によって、日曜朝に予選が行なわれる形となったサンパウロGP。結局ウエットコンディションの中行なわれた予選は赤旗が5度も出る荒れた展開となったが、マクラーレンのランド・ノリスがポールポジションを獲得し、メルセデスのジョージ・ラッセルが2番手となった。角田は3番手と殊勝の走りを見せた。
またその予選では赤旗の影響によりレッドブル勢がQ2敗退。フェルスタッペンはさらに内燃エンジン(ICE)交換によって17番グリッドからのスタートとなった。
予選終了からわずか3時間弱……決勝レースの時刻を迎えた。予選でのクラッシュによりウイリアムズのアレクサンダー・アルボンが欠場。フェラーリのカルロス・サインツJr.がピットレーンからのスタートを選択した。
レース前のセレモニーが実施されている頃には雨が上がり、サーキット上空も明るくなってきた。ただ路面は依然としてウエット。各車はインターミディエイトタイヤをスタートで履いた。上位勢にはユーズドを使用するドライバーも多かった。
18台がゆっくりとフォーメーションラップへと走り出したが、なんとアストンマーティンのランス・ストロールがターン4でスピン。再始動したものの、今度はグラベルトラップに埋まってしまった。
これにより決勝スタート延期に。しかしポールポジションのノリスは、シグナルが赤く点滅し”スタート延期”を示しているにも関わらず、ダミーグリッドからエクストラフォーメーションラップに向けて走り出してしまったため、スタート手順違反の審議対象に。これに続けて走り出してしまったラッセル、角田、リアム・ローソン(RB)も、レース後の審議対象となった。また後方では、グリッド位置を間違えるドライバーが現れるなど、混乱が生じた。
こうした状況もあり、雨粒が再びポツポツと落ちてくる中、現地時間12時47分に改めてフォーメーションラップがやり直された。
17台が正グリッドに並び、赤く灯った5つのシグナルが消え、2周減算の69周の決勝レースがスタート。各車が一斉に飛び出した。
蹴り出しが良かったのはラッセル。ターン1までにノリスを抜き去ると首位に浮上した。角田にはチームメイトのリアム・ローソンやアルピーヌのエステバン・オコンが襲いかかったが、3番手を死守した。
後方スタートとなったレッドブル勢は、オープニングラップでセルジオ・ペレスがスピンを喫して最後尾に落ちた一方で、フェルスタッペンが猛烈な追い上げを見せて2周目には入賞圏内までポジションを上げた。
角田は自己ベストのペースで周回を重ねるも、トップ2台が一歩抜け出す格好に。ウエット宣言によるDRS使用不可の恩恵もあり、角田は3番手でオコン以下を従えて走った。
10周を過ぎると角田のペースが1分24秒台後半に低下し、オコン、フェラーリのシャルル・ルクレール、そしてフェルスタッペンがトレイン状態となった。しかしこの頃から再び雨がサーキットを濡らし始め、角田はインターミディエイトタイヤが冷えたかペースを戻すことができた。
雨脚が強まることが予想されていたものの、ウエット系タイヤは適切な雨量で交換しなければすぐに壊れてしまう可能性のあるため、各陣営とも出方を疑うレースが続いた。
最初に動いたのはルクレール。24周目終わりにルクレールがピットへ飛び込みインターミディエイトタイヤへと交換した。
首位ラッセルを抜きあぐねる2番手ノリスは、チーム側にピットインによるアンダーカット戦略を進言。ただチームは、天候の変化やトラフィックの影響を避けるべくコース上に留まるよう指示した。
雨脚が徐々に強まる中、27周目にハースのニコ・ヒュルケンベルグがターン2でスピン。縁石で“亀の子”状態となってしまった。
これによりバーチャル・セーフティカー(VSC)が宣言され、各車が続々とピットに飛び込んだが、ノリスやラッセル、角田のトップ3がピットに入ったところでヒュルケンベルグは走行を開始してVSC終了となった。
なおヒュルケンベルグは後に、マーシャルの手を借りてレースに復帰したとして、失格を意味するブラックフラッグが提示された。
オコンやフェルスタッペン、アルピーヌのピエール・ガスリーがステイアウトを選んだ一方で、多くのドライバーがインターミディエイトタイヤ2セット目に履き替えた。激しい雨となったことで、RBやペレスはフルウエットを選択した。
コースのそこかしこで水煙が上がる中、ノリスはラッセルのオーバーテイクを完了。角田をはじめフルウエットタイヤを履くドライバーが一気にペースを上げた。特に角田のペースは凄まじく、ノリスやラッセルとの差を急激に縮めた。しかし雨量の急激な増加によって、30周目にはセーフティカー出動となり、角田が前を行くマシンを攻略するチャンスは潰えた。
そのセーフティカー中にインターミディエイトタイヤに履き替え、コースに戻ったばかりだったウイリアムズのフランコ・コラピントが、アクアプレーニング現象に見舞われたかターン14で激しくクラッシュ。即座に赤旗中断となった。
この時点でオコン、フェルスタッペン、ガスリー、ノリス、ラッセル、角田というトップ6。赤旗中断はタイヤを交換することが許されているため、ステイアウトを選んでいた上位3台にとっては非常に美味しい状況となり、勝利を手中に収めようとしていたラッセルは、ステイアウトすべきだったとチームに怒りの無線を飛ばした。
レース再開に向けて、各車とも新品もしくは比較的周回数の少ないユーズドのインターミディエイトタイヤを履いた。
セーフティカー先導で1周を周り、34周目からのローリングスタート。オコンを先頭にレーシングスピードへと戻っていた。隊列を組む段階ではハースのオリバー・ベアマンとザウバーの周冠宇がコース外に飛び出すというシーンもあった。
ただ、赤旗中断の間にコース上には水が溜まっており、インターミディエイトタイヤの排水能力では厳しい状況。至る所でコースオフが相次ぎ、角田はリスタートでルクレールとマクラーレンのオスカー・ピアストリに交わされて8番手にダウン……その後もなかなかペースが上がらず、メルセデスのルイス・ハミルトンから攻撃を受けた。
すると39周目にレース2度目のセーフティカー出動。13番手を走っていたサインツJr.がターン8でスピンを喫してウォールに激突したのだ。サインツJr.はレースを諦めざるを得ず、マシン回収が行なわれた。
43周目からレース再開。オコンから再びレーシングスピードへと戻っていったが、フェルスタッペンが虎視眈々……ターン1でイン側に飛び込み、首位に浮上した。
トップに立ったフェルスタッペンは1分22秒台前半から1分21秒台のハイペースで周回。2~3番手のアルピーヌ勢以下を圧倒的な速度差で引き離していった。
リスタート時の混乱の中で、ノリスはピアストリの後ろ7番手にダウンしたものの、フェルスタッペンとドライバーズタイトルを争っていることからチーム内入れ替えを実施した。
再開後も8番手をキープしていた角田は、51周目のターン12でコースオフを喫したピアストリに一時急接近したものの、抜くには至らず。乾いていく路面ではマシンパフォーマンス差もあり、周回を重ねるごとに再び離されていった。
リスタート時に2台抜きを見せた9番手ローソンには後方からペレスとハミルトンの2台が迫った。55周目のターン1でペレスが仕掛けたものの、ローソンは一歩も引かないディフェンスを展開。勢いを失ったペレスは逆にハミルトンの先行を許した。
先頭のフェルスタッペンに目線を戻すと、レース終盤は1分20秒台までペースを引き上げてファイナルラップへ突入。2位以下に19秒という大差をつけてトップチェッカーを受けた。
シーズン中盤以降は苦戦も続いたフェルスタッペン。決勝ではスペインGP以来11戦ぶり、しかも17番手からという驚きの展開で優勝を掴み、ここ最近では珍しく雄叫びを上げた。
2位にオコン、3位にガスリーと、フェルスタッペン同様、VSC出動時にステイアウトを選択したアルピーヌがダブル表彰台を獲得した。シーズン開幕時点ではグリッド最後尾を走っていたが、ここへ来てコンストラクターズランキング6番手まで一気に浮上した。
角田はレース序盤はオコンの前を走り表彰台圏内をキープしていたものの、VSC中のピットストップ判断が運命を分けた。リスタート時にポジションを下げたこともあり8番手でのフィニッシュ。7番手フィニッシュのピアストリには、レース前半にローソンとの接触の原因を作ったとして10秒のタイム加算ペナルティが科されていたため、7位に繰り上がった。ただ1回目のセーフティカー出動や赤旗のタイミングが違っていれば、角田を巡る展開は大きく異なり、もっと上の順位でフィニッシュできていたかもしれない……。
ローソンはチェッカーまでハミルトンとペレスからポジションを守りきり9位入賞。スタート位置からはポジションこそ落としたが、RB勢は2台でポイントを掴むことができた。
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