全日本スーパーフォーミュラ選手権で3度のタイトルを獲得した山本尚貴が、2024年最終戦の鈴鹿大会を最後にSFから引退した。
2010年、当時の全日本選手権フォーミュラ・ニッポンにNAKAJIMA RACINGからデビューした山本は、2013年に初のタイトルを獲得し、2018年、2020年と計3回王座に輝いた。
山本尚貴を撮り続けたフォトグラファーが刻んだ“最後の瞬間”【SF引退レース特別フォトギャラリー】
これまで15年のキャリアで12回のポールポジションと9回の優勝を飾り、スーパーフォーミュラでのタイトル獲得数は最多を誇る山本。そんな彼と、時にはチームメイトとして、一方はライバルとして戦ってきた各関係者から寄せられたコメントやエピソードを紹介する。
●山田美紀マネージャー(PONOS NAKAJIMA RACING)
最初のデビューのときは私も工場でバリバリ働いてた頃で、今では関わり方も変わりましたが、当時の彼はもう毎回泣いてましたよね。
本当に、レースが終わったら良くても悪くても必ず泣いてました。そう思えば、今はすごく大人になりましたよね。
最近はもう、温かく見守っています。でも強いて言うなら、他のチームではタイトル獲ってるのに、ウチではなかったなと(笑)。でも最初と最後っていうところもあって、結局はこういうかたちになりました。
いつも楽しませてもらっていましたが、面倒もいっぱいでしたよ。今年はとくにクラッシュも多かったので、そういう心配もいっぱいしました。
毎回本当に、いつも怒ってましたよ。『いい加減にしてよ、もう心配ばっかりかけないで』って(笑)。でももう、いい思い出ばっかりです。
●岡田淳チーフエンジニア(PONOS NAKAJIMA RACING)
僕は普通に、お疲れ様って。あとは、今回はあんまり上位争いできるようなクルマでもなかったので、その辺を無線で話しました。
去年彼は大きな怪我をしましたが、今年で降りるとは全然思えなかった。
なんて言えばいいのかはわからないけれど、怪我して入院してるときもすごく前向きで、やる気に満ち溢れているポジティブなところは凄いなって。
本当に、チャンピオンを何回も獲る人ってこういう感じなのかなと思っています。
●佐藤蓮
尚貴さんは、本当に綺麗なドライビングをする方でした。自分が結構勢いよく攻めちゃうタイプなので、なおさらそう感じました。
基本に忠実で、オンボード映像も参考にさせていただくのですが、それでもどう頑張っても勝てないコーナーもありました。この2年間はそこをいかに学ぶかという点で、自分に足りなかった部分を多く吸収させていただいて、自分の走りに活かすことができています。
そのほかにも、走りだけじゃなくてチーム内での振る舞いとかも含めて、プロとして完成されている選手だと感じます。メーカーやメディアの方々も含めて、関わってるいろいろな人に対してしっかりと感謝を伝えていて、人間面での学びを学ぶこともすごく多かったです。
本当に、自分の人生のなかで一番尊敬している先輩です。
●牧野任祐
僕から(言葉を)かけたというよりは、クルマを降りた時もセレモニーの時も、(山本から)『これから任せた』と。
スーパーGTで僕は一緒に組ませてもらっていて、今もいろいろなことを学ばさせてもらっている途中ですけど、来年は尚貴さんとフォーミュラで走ることはないので、本当に寂しいです。
その尚貴さんの気持ち、レースに対する姿勢とかを全部含めて、尚貴さんが今までフォーミュラで残してきた成績、功績はすごいのひと言では済ませられないくらいの結果だと思います。
少しでもそこに追いつけるように尚貴さんの想いと気持ちを背負いながら、頑張っていきたいと思っています。
(リスペクトする部分は)いろいろありますが、やっぱり人を動かす力はすごいなと思いますし、いつも全体が見えていて、チームをまとめ上げる力とか、引っ張っていく力は本当にすごいなと思います。
あと、昨日のインタビューや会見でも言っていますけど、レースでは最後まで諦めずに一生懸命、全開で走っているというのを身近で感じているので、ひとつでは決め切れませんね。
●太田格之進
尚貴さんといろいろ関わらせてもらうようになったのは結構最近で、短い間でした。ですが、一緒にセパン(マレーシア)に行ったり、普段からLINEでいろいろ教えてもらったり、本当にいい先輩です。
懐が広いというか、後輩思いなところを普段から感じていて、変な気を遣わせないところも憧れるなと。
スーパーフォーミュラで3回もタイトルを獲っているというのも、もちろん現役最多で、ドライバーとしてはもう間違いなく全員がリスペクトを送らないといけない選手だし、僕もすごくリスペクトを持っています。
ただそこだけじゃなくて、人としてリスペクトできる部分が本当に多くて、これからもいろいろと教えてもらうことが多いんだろうなと思います。
今日は、『スーパーフォーミュラを去る最後レースが尚貴さんにとって幸せな1日になったらいいな』と思いながらすごしていましたし、引退セレモニーでの花束も、すごく感動しました。
●坪井翔
僕は、トヨタとホンダでメーカーも違いますし、世代もちょっと違うので、接点としてはあまりありませんでした。
ですが、僕が下のカテゴリーでやっているときにチャンピオンを獲っているのを見ていて、やっぱりドライバーとしてすごい選手だなと感じていました。
そんな選手と一緒にスーパーフォーミュラのレースに出ることができて本当に嬉しかったですし、その偉大な選手がいなくなってしまうのは何か喪失感みたいな、寂しいですね。
何より、本当に人間ができた人で、先輩面もしないですし、みんなを平等に見ていてくれて。
このスーパーフォーミュラを盛り上げるためにも、陰で動いてくれたりとか、ずっといろいろなことをしてくれていました。
周りのことも見ながら動ける人ってなかなかいないと思うので、本当にドライバーとしてもすごいし、尊敬できる人だなとすごく感じます。
なかなか彼のような人になるのは難しいと思いますが、あんな人になりたいなとみんなが思う方だと思うので、そういう人がいなくなっちゃうと思うと寂しいですね。
●福住仁嶺
本当に寂しいなと改めて思いますし、僕がスーパーフォーミュラにデビューした年もチームメイトが尚貴さんで、トータル3年間一緒にやらしてもらって……。あの人は、ちょっとずるいんですよね(笑)。
僕と組んでるときに2回もタイトルを獲って、最後のチャンピオンのときも、一緒に写真撮りながらも僕はちょっとうらやましいなと思ったりして。
ドライバーとしても速いですし、人としてもしっかりしています。初めてスーパーフォーミュラに上がって、ああいったすごい先輩に伸ばしていただいたことで、学ぶことしかなかったと思います。
そこから僕自身も、山本選手が言ってくれたことがあって今の自分があるっていうことをすごく思いましたし、いろんなレース以外の話でも相談に乗ってくれました。プライベートも含めて今の自分があるのは山本選手のおかげなので寂しいです。
自分もああいう存在になるために、結果はもちろんですが、どういうふうにスポンサーさんやファンの方々に声をかけていくのかっていうところも教わったと感じています。それは僕だけじゃなくて、スーパーフォーミュラのドライバー皆がそうだと思っています。
僕があと何年間、このスーパーフォーミュラでレースを続けることができるかはわからないですが、ああいうふうに皆さんに祝福されながら、幸せな引退ができるといいなと改めて思いました。
●野尻智紀
本心としては、やめる必要はない。
やっぱり僕は彼がいたから頑張って来れたので。彼を越えたくて頑張ってきたので……(号泣)。
いろいろな想いが……はい。僕もドライバーなので、もちろんすべてをわかっているわけではないですけど、彼がこの競技をどれだけ愛しているかを知っているので。
だからこそ、まだまだ戦えるのになと、すごく……思いますね。もっと彼の背中を追っていたかったなという気持ちです。
結果としては越えたかもしれないですけど、やっぱり、彼の背中は偉大すぎます。
彼が辞めたからと言っても、彼の影を追って走るだけだと思います。
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