今年1月、F1の商業権を司るフォーミュラ・ワン・マネジメント(FOM)は、FIAが承認を下したアメリカの名門レーシングチーム・アンドレッティの2025年からのF1参入を拒否。これに対して、アメリカ下院司法委員会のジム・ジョーダン委員長(共和党)が調査に乗り出した。
アンドレッティはF1参戦に向け、アメリカの大手自動車メーカーであるゼネラル・モーターズ(GM)と提携。その傘下ブランドであるキャデラックと共にF1グリッドに並ぶことを目指している。
■アンドレッティ&GMのF1参入拒否に、アメリカ国会議員が動く「競争原理を阻止する行為に対する懸念を表明」
GMは2028年シーズンのパワーユニット(PU)製造者登録を完了。アンドレッティは一度参戦が拒否されて以降も、F1に新レギュレーションが導入される2026年の参戦を目標に据え、新ファクトリーの設置やリクルートなどを進めている。
そしてアンドレッティは、参戦権獲得に向けた根回しも同時に行なっている。チームオーナーを務めるマイケル・アンドレッティの父であり、1978年のF1世界王者であるマリオ・アンドレッティがアメリカ国会議事堂を訪れてから数日後、ジョーダン委員長はF1オーナーであるリバティメディアに書簡を送付。アンドレッティの参戦を拒んだ意思決定プロセスについて説明を求めた。
アメリカのテレビ・ラジオ局NBCは、ジョーダン委員長から入手したリバティメディア宛ての書簡を公開し、F1がアンドレッティのF1参戦を拒否したことに関する文書や情報を要求していることが明らかになった。
そして書簡の中で、ジョーダン委員長は不当な反競争的行為が行なわれていなかったことを証明するために回答を求めていると記した。
「司法委員会は、独占やその他の不当な取引制限から保護するための反トラスト法の充足性を調査する責任がある」とジョーダン委員長は記した。
「F1のようなスポーツリーグは、独占禁止法上、プロダクトの創出にある程度の談合が必要とされるという注目すべき分野で運営されている」
「しかし、スポーツリーグがその規則や慣行から逸脱し、競争を排除しプロダクトに対する消費者の関心を低下させた場合、その談合は反競争的行為に相当する可能性がある」
またジョーダン委員長は、アンドレッティの参戦を拒否したF1側の説明のいくつかが受け入れられるモノではなかったと語った。
「アンドレッティ・キャデラックの参戦を拒否するために提示された言い訳は、口実が多く、恣意的で、アンドレッティ・キャデラックのF1参戦の適性とは無関係に見える」とジョーダン委員長は言う。
「例えば、F1は新チームがF1に付加価値を与えられるのは『表彰台とレース勝利を争うこと』だけだと主張した」
「しかしF1は既にアンドレッティ・キャデラックの技術的能力を分析し、現在のチームの中で競争することを認めていた。そして現在のF1チームのほとんどは、定期的に『表彰台とレース勝利を争う』というF1の基準を満たしていない」
「F1はまた、アンドレッティ・キャデラックが既存のエンジンメーカーを利用しようとしたことを非難した。しかし同時にF1は、もしアンドレッティ・キャデラックがチーム参戦初年度からGM製の新エンジンを使用すれば、新チームにとって新たな挑戦が生まれることになると述べた」
「F1は両方を手に入れることはできない。FIAのモハメド・ベン・スレイエム会長が説明したように、アンドレッティ・キャデラックの参戦拒否は『全て金のため』というのが真実だ」
司法委員会はまた、11番目のチームが既存チームの利益を損なうという論争は、反競争的行為の可能性をはらんでいるとの考えを示した。
書簡では次のように記された。
「弱小チームは、消費者の不利益になるような競争、賞金やスポンサーシップを奪い合う追加チームからの保護を望んでいる」
「仮にF1が落ち目の競争者を保護するために競争を妨げ、消費者に害を与えるとなれば、F1のモデル全体が崩壊している可能性がある。スポーツリーグの必要性に隠れて、反競争的行為を追求することはできない」
「アンドレッティ・キャデラックのF1参戦を1年でも遅らせることは、落ち目のF1チームを助けるために、アメリカの消費者を害することになる」
この件に関する委員会の調査に協力するため、ジョーダン委員長はF1に対して、何が起きたのかということに関する文書とスタッフレベルのブリーフィングを要求している。
ジョーダン委員長は、新規チーム参入とアンドレッティの評価プロセス、さらに1月31日にF1がアンドレッティ参入を拒否する決定を下したことに関連する、全ての文書とやり取りを求めている。
さらに、新規チーム参入に関するF1と既存10チームとの間の全ての文書とやり取り、コンコルド協定における新規チーム参入料や希釈化防止料に関するやり取りも求めている。
ジョーダン委員長はできるだけ早く、遅くとも5月21日までにブリーフィングを行なうよう求めている。
ジョーダン委員長の他にも、アメリカの国会議員数十名がF1に対してアンドレッティの決定をめぐり、F1の行動がアメリカの法律に抵触する可能性のある「市場競争に対する不合理な抑制」を与えたかどうかについて回答を求めている。
国会議事堂の外で記者会見を行なったマリオ・アンドレッティは次のように語った。
「求められたことは全てやってきた。私はF1キャリアにおいて、誇りをもってアメリカを代表してきた。最も誇らしい瞬間は、アメリカ国歌が流れる中、表彰台の上に立ったことだ」
motorsport.comの取材に対して、F1はコメントを拒否した。
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みんなのコメント
ムラ社会VSジャイアニズムでバトルじゃ
裏にあるのは、「ヨーロッパ勢の、アメリカ台頭の懸念からの拒絶」。
アンドレッティほどの力があると、成功するのは時間の問題。
そうなると、アメリカでのアメリカチーム人気が沸騰し、アメリカの力が増す。
これまでヨーロッパ主導で運営されてきたこのカテゴリーが、アメリカの良いようにされてしまうという懸念が出てくる。
つまり「F1がアメリカに乗っ取られてしまうという危機感」が、アンドレッティ拒絶の真相だと思われる。