自転車を構成する部品の中で、もっとも身体に接する場所
エンジン(内燃機関)などを搭載するクルマやバイクと比べると、自転車の構造は圧倒的にシンプルです。基本となる「走る・曲がる・停まる」という機能を支える仕組みも直接的で分かりやすく、骨格となる「フレーム」、走行に必要な「車輪」、操作に必要な「ハンドル」、停まるための「ブレーキ」など、誰に教わったわけではなくても直感的にどのような働きをするかイメージできると思います。
【画像】形状もさまざま。自転車の「サドル」を画像で見る(5枚)
そんな自転車を構成する部品のなかでも、「サドル」はさらに分かりやすく、「お尻を乗せる」という機能をそのまま形にしたような部品です。「それ以外に何かあるの?」と思われるかもしれませんが、「サドル」は乗り心地だけではなく、人力を効率よく前へ進む力に変えるためにも重要な役割を果たしています。
自転車の起源については諸説ありますが、現在は1813年にドイツのカール・フォン・ドライス男爵が子供のおもちゃであった木製の車輪つき木馬に、舵を切れるハンドルを取り付けた足蹴り式の2輪車「ドライジーネ」がはじまりだと言われています。
ドライジーネには現代の自転車のようなサドルは無く、かろうじて「ココにお尻を乗せるのかな」と推測できる湾曲した木製の板が取り付けられています(振動が直接響いて痛そうです……)。
その後、サドルがどのようにして現代の形になったのかは定かではなく、車体の各部が同時多発的に進化する中で、1870年代の後半に「ブルックス」がサドルの制作を手掛けるようになったことは、大きな転機のひとつだったようです。
「ブルックス」は、現在でも高級革製サドルが代名詞の人気ブランドです。創業者のジョン・ボルトビー・ブルックスが友人の自転車を借りた際に、木製サドルのあまりの乗り心地の悪さに、馬の鞍をベースに革製サイクリング・サドルを開発したそうです。
サドルはさらに進化を続け、工業技術の発展に合わせてコイルスプリングが組み込まれたり、座面にスポンジ素材などが使われるようになり、現在のような衝撃を吸収し、身体を安定させる形へと至りました。
快適な乗り心地を求めて進化してきたサドルですが、同時に、ペダルを漕ぐ力を効率よく推進力に変換するという点でも大きな役割を担うようになりました。安定して体重を支え、お尻が痛くないということは、力いっぱいペダルを漕ぐことに専念できるため、一般的なシティサイクル(ママチャリ)の発展に大きく貢献したと言えるでしょう。
一方で、スピードを追求するロードバイクなどのスポーツタイプの自転車では、軽量化や足の動きを邪魔しないよう、その形状は細く、固い素材が使われることが多くなっています。
ちなみに、座面が広く安定感を信条とするママチャリのサドルですが、高さを変えるだけではなく、その取り付け角度を調整することで、乗り心地の違いを分かりやすく体感できます。
好みや乗り方にもよりますが、少し前下がりに調整することで、足の動きが楽になり、漕ぎ出しがスムーズになることもあります。もし、いま乗っている自転車の出足が悪いと感じているなら、サドルの高さだけでなく角度も調整してみると良いでしょう。
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