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アンバランスなパワフルさ スマート#1 ブラバスへ試乗 筋肉増強剤を飲んだ小動物

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アンバランスなパワフルさ スマート#1 ブラバスへ試乗 筋肉増強剤を飲んだ小動物

小動物が筋肉増強剤を飲んだようなクルマ

スマート#1 ブラバスへ初めて試乗したのは、2022年9月。まだプロトタイプの状態だったとはいえ、少しまとまりが悪いかもしれないな、というのが率直な印象だった。

【画像】アンバランスなパワフルさ スマート#1 ブラバス 競合クラスのBEVと写真で比較 全131枚

時流に即したバッテリーEVのコンパクト・クロスオーバーでありながら、最高出力は428ps。ブラバスという銘柄を裏切らない、0-100km/h加速3.9秒という鋭いダッシュ力を秘めつつ、シャシーは快適志向で焦点が定まっていないように思えた。

その後、タイヤはダンロップ・スポーツマックスへ置き換えられている。しかし、サスペンションは改良されておらす、引き締まった操縦性を得たわけではないようだ。

#1 ブラバスは、可愛らしい見た目でありながら、荒々しく加速する電動クロスオーバー。小動物が筋肉増強剤を飲んだような、そんなクルマだ。

スマートについておさらいしておくと、メルセデス・ベンツとジーリー・ホールディング・グループによる合弁事業が立ち上がり、新たなバッテリーEVメーカーとして再始動したのが2019年。この#1は、新体制下での量産車第1号となる。

製造を担うのは中国の工場。丸みを帯びたボディの内側には、ボルボEX30も採用する、バッテリーEV用のプラットフォームが隠れている。

英国価格は、前輪駆動で271psを発揮するベーシックな#1で3万5950ポンド(約650万円)から。エントリー・グレードは、プロ+と呼ばれている。

航続距離は399km サイズ以上に車内は広々

今回試乗したのは、パワフルに仕立てられた#1 ブラバス。ツインモーターの四輪駆動で、英国価格は4万3450ポンド(約786万円)から。従来のスマートと同様に、特別な高性能仕様となる。

#1 ブラバスの場合、リア側の駆動用モーターに加えて、フロント側にも156psの駆動用モーターが積まれる。ただし、駆動用バッテリーの容量は62kWhで変わらず、航続距離は399kmがうたわれる。

急速充電能力は、DCで150kWまで対応。ACでは22kWまで許容する。ミドルグレードの#1 プレミアムと同じく、エアコンはエネルギー効率に優れたヒートポンプ式が採用される。

ブラバスのインテリアは特別仕立て。車内空間は、全長4270mm、全幅1822mmというサイズを考えると広々。着座位置は低めで、ルーフラインが高く、頭上空間にはかなりゆとりがある。

リアシートは、背もたれがリクライニングするだけでなく、スライドも可能。荷室は、テールゲートの開口部が狭め。床面も高い。充電ケーブルをしまうのにちょうどいい、収納が設けられている。

ダッシュボード上に据えられる、12.8インチのインフォテインメント用タッチモニターと、ドライバー正面の小さなメーター用モニターのグラフィックは見やすくカッコいい。スマートフォンとのミラーリング機能も備わる。

ステアリングホイールにはヒーターが内蔵される。ただし英国仕様の場合、後日のソフトウェア・アップデートで利用可能になるという。

完全には煮詰められていないシャシー

最新モデルとして、ドライバー監視機能も実装されている。ところが、集中して運転していたにも関わらず、警告が表示されることが何度かあった。監視機能はオフにもできるが、#1 ブラバスを始動するたびに、デフォルトでオンになる。

タッチモニターを操作中に、誤ってシートヒーターをオンにしたことも。メニューのレイアウトには、改善の余地がありそうだ。

ドライビング体験には、好ましい部分とそうではない部分が混在している。クイックなステアリングが与えられ、活発に走る背が高めのクロスオーバーという点で、ミニ・クロスオーバーにも近い雰囲気がある。

ただし、シャシーが完全には煮詰められていない。路面からの入力をしなやかに吸収し、外界との隔離感に優れるわけでもなく、コーナーをダイナミックに駆け抜けられるわけでもない。どちらかといえば、パワーの低い#1の方がバランスは良いと思う。

#1ブラバスでは、アクセルペダルを軽く踏んでも、濡れた交差点での加速時にはホイールスピンしかける。スタビリティ・コントロールが直ぐになだめてくれるものの、落ち着きのない振る舞いへ、追いかけるように対処するに過ぎない。

コーナリング中に路面の隆起部分などを通過すると、負荷の変化へサスペンションが耐えきれず、衝撃とともに姿勢が乱れることもあった。運転が楽しいとまでは感じられないだろう。

アンバランスなパワフルさという魅力

筆者はパワフルなクルマが好きだ。しかし#1 ブラバスは、メルセデス・ベンツCクラスのノーマル・シャシーへ、強力なメルセデスAMGのV8ツインターボエンジンを搭載したような印象。メーカーとして目指した方向性が、しっかり定まっていないように思う。

とはいえ、そのアンバランスなパワフルさが、不思議な魅力も生んでいる。正直なところ、筆者は嫌いではない。

スマート#1 ブラバス(英国仕様)のスペック

英国価格:4万3450ポンド(約786万円)
全長:4270mm
全幅:1822mm
全高:1636mm
最高速度:180km/h
0-100km/h加速:3.9秒
航続距離:399km
電費:6.4km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:1900kg
パワートレイン:ツイン永久磁石同期モーター
駆動用バッテリー:62kWh
急速充電能力:150kW(DC)
最高出力:428ps
最大トルク:55.2kg-m
ギアボックス:シングルスピード(四輪駆動)

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