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【ヒットの法則319】プジョー207シエロは実用的かつスポーティなモデルだった

掲載 更新 1
【ヒットの法則319】プジョー207シエロは実用的かつスポーティなモデルだった

2007年3月に207GTとともに発表されたものの、やや遅れて登場することになった「207シエロ」。5ドアボディに4速仕様と実用的な設定で「207の主力」と目されていたが、その内容はどうだったのか。上陸まもなく行われた試乗テストの模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2007年6月号より)

実用域の豊かなトルクが魅力の1.6L自然吸気エンジン
大人気を博した206の後継として注目を集めるプジョー207は、3月にまずGTが上陸し、やや遅れて5月から207/207シエロが発売と、段階を経た導入が行われている。

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最初に登場したGTは3ドア、1.6Lターボエンジン、5速MTというスポーツ仕様でややマニアック。対して今回紹介する207シエロは、5ドア、1.6L自然吸気エンジン、4速ATで、幅広い顧客に向けたモデルとなる。

ちなみに車両価格は264万円で、GTとまったく同じ。ドア数やAT/MTの違いはあれど、パワーが30ps低くても同価格となれば、シエロがシリーズの豪華グレードなのは間違いない。

実際、その装備は充実している。パノラミックガラスルーフやアルミペダルなどはGTと同じく標準だし、望めばシリーズで唯一本革シートを選ぶことも可能だ。なお、もっと手頃にという向きには、前記した装備のほか、固定式ディレクショルナルヘッドライト、バックソナーなどが省かれる標準仕様の「207」が239万円で用意される。

5ドアとなるシエロだが、室内のレイアウトは3ドア同様フロントシート優先。後席はヒップポイントが高く、ガラスルーフの採用もあって閉塞感は少ないが、身長171cmの僕がドラポジを取った後の後席に乗り込むと、フロントシートバックがかなり膝に迫る。

レッグスペースに深さがあるため足の落ち着きは悪くないし、幅方向とヘッドクリアランスは206に対してかなり余裕を増している。トランクルームも拡張されているため実質の実用性は向上しているが、カップルか、ファミリーでも子供の小さい家庭にちょうど良い広さ感というBセグメント車の範囲は越えていないという印象だった。

ところで、207/207シエロで注目されるのは、やはりエンジンだろう。この1.6Lの直4DOHCは、プジョーとBMWの共同開発による新世代のパワーユニット。その点はGTも同じだが、GT用が直噴ターボなのに対し、この自然吸気エンジンはスロットルバタフライを使わず出力制御を行うためポンピングロスが防げ効率の向上が期待できる全域連続可変バルブタイミング&リフトシステム、一般にはBMWの呼び方が耳に馴染んでいるバルブトロニックを採用する。

そのパワーフィールだが、印象的だったのが中~低速域の豊かなトルクだ。ターボほどではないものの2000~3000rpmあたりから十分な力が感じられ、アクセルを軽く踏んでもスルスルと速度を乗せる反応の良さを持っている。振動やノイズの少なさも長所だろう。

高回転でイキイキとしていた以前のプジョー製1.6Lと較べると回す楽しみは薄れた感はあるが、マナーの良さにより走りの質感を高めているのは事実。さらに、組み合わされる4速ATも型式は206と同じAL4ながら、シフトスケジュールが日本の交通環境に合ったダウンシフトを抑えた制御となり、変速のクオリティも向上したことで、滑らかな走りを実現した。

このシフトレバーはゲート式で、Dレンジから左に倒すと前後操作でマニュアルシフトも可能だ。ただしマニュアル時も6000rpm手前で自動シフトアップする設定のため、ギリギリまで引っ張って上のギアに繋ぐと、自動の分と合わせて2速上がってしまうケースがあるのは残念。また、出力とシフトクオリティが向上したことで、もう1速あればさらに楽しめるのに……と、贅沢な悩みが出てくるのも事実である。

懐の深い走りを生むフロントタイヤの接地感
一方フットワークは、先に乗ったGTに非常に近い。フロントタイヤの接地性が抜群に高く、タイトターンで深く切り込んでも舵が効く懐の深いハンドリングが魅力。またリアのスタビリティも抜群で、通常のペースではオンザレールのコーナリングが楽しめる。

それでいてさらに追い込んでいくとリアが穏やかに流れるあたりは、206の楽しさを継承している。というわけでイージーかつスポーティな走りを期待する人に、207シエロは魅力的な一台になっている。

ただし、ちょっと気になる点もある。それは乗り心地だ。シエロの足まわりのセッティングは、タイヤサイズがひと回り小さくなってはいるものの、17インチのGTと基本は同じ。速度が上がってくるとフラットでしっかりとした乗り味になるが、低中速ではやや硬さが目立つ。それもゴツゴツと来る表層的な硬さではなく、背負い上げられるような挙動が目立ちフラットさに欠ける印象。これを許容できるか否かで評価は変わってきそうだ。

個人的には、あの懐の深いハンドリングが楽しめるのだから、差し引きしても十分に魅力的だと思う。しかしその一方で、さらにコンフォート性能を高めた仕様もあるのなら、それもぜひ味わってみたい。おそらくそれは、後に追加されるはずの1.4Lエンジン搭載モデルの役割なのだろう。しかしその導入には今しばらく時間が必要なようである。

当面の対応策なのか、プジョージャポンは206の1.4スタイルのみを今後も並売するのだが、性能の向上が目覚ましい207を知ってしまった後は、これも悩ましい選択肢。というわけで今後も当分は207の動向から目が離せない。(文:石川芳雄/Motor Magazine 2007年6月号より)



プジョー 207 シエロ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4030×1750×1470mm
●ホイールベース:2540mm
●車両重量:1280kg
●エンジン:直4DOHC
●排気量:1598cc
●最高出力:120ps/6000rpm
●最大トルク:160Nm/4250rpm
●トランスミッション:4速AT
●駆動方式:FF
●車両価格:264万円(2007年)

[ アルバム : プジョー 207 シエロ はオリジナルサイトでご覧ください ]

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みんなのコメント

1件
  • 当時、走りも楽しさも信頼性も完全にフィットに負けてた207

    実査、中古市場に球数ない
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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