この記事をまとめると
■ピレリのウインタータイヤ試乗会が行われた
■会場は北海道の千歳モーターランド
■4つのタイヤのインプレッションをお届けする
オールシーズンタイヤの3世代目が登場!
ピレリウインターエクスペリエンスと題したピレリのウインタータイヤ試乗会が北海道千歳市にある千歳モーターランドで行われた。
今回のトピックスとなるのは新型オールシーズンタイヤ=チントゥラート・オールシーズンSF3。それから昨年発売されたスタッドレスタイヤのアイス・ゼロ・アシンメトリコのふたつ。このほかにもウインタータイヤ=P-ゼロ・ウインター、SUV用ウインタータイヤ=スコーピオン・ウインターにも試乗することができたので、それぞれについてリポートしたいと思う。
■Cinturato All Season SF3(チントゥラート・オールシーズンSF3)
チントゥラート・オールシーズンSF3(以下SF3)は、オールシーズンタイヤの3世代目。特徴は新デザインのV字トレッドパターンの採用、低温性能を高める天然樹脂を配合した新トレッドコンパウンド、新モールド形状(新タイヤプロファイル≒新断面形状)などが挙げられる。
これらの変更によって、従来から備えているドライ路面での操縦安定性の高さを損なうことなく雪上走行性能の向上を図っているのが特徴だ。
また、興味深いのは、低温性能を高めているにもかかわらず、転がり抵抗の低減も実現しており、試乗した225/40R18サイズでは、欧州のタイヤグレーディングでウエットグリップA(日本のa相当)、転がり抵抗B(日本のAA相当)と優秀な省燃費タイヤとしての要件を備えている。サイズによってBEV/PHEVの特性を高める技術を搭載したElectマーク付きサイズも用意されている。
実際に試乗した印象も雪上の性能のよさが実感できるものだった。氷雪性能は、スタッドレスタイヤのレベルには届かないものの、踏み固められた雪の路面でもコンパウンドグリップを発揮している感触がある。1世代前のオールシーズンタイヤは、トレッドパターンで雪のトラクション性能を稼ぎ、トレッドコンパウンドはドライ路面の操縦安定性を重視する傾向がみられたが、SF3はトレッドパターンエッジ効果だけでなく、ゴムコンパウンドが低温でもきちんと仕事をしており、発揮するグリップとの合わせ技で雪道であれば(凍結路でなければ)、ほぼ不安を感じることなく走り切れてしまう。また、雪上でそう感じさせるレベルの安心感、安定感があった。
付け加えると、直進付近の手応えがしっかりしており、また操舵に対する応答がいいので、微細なハンドル操作にタイヤが応えてくれるのも安心感を高める要因のひとつになっていると思う。
雪上性能が上がったことで、より安心してサマーシーズンからウインターシーズンまで過ごせるようになった。品質を保証するTŪFの認証や、ドライ、ウエット、スノーのブレーキテストを行うDEKRAでの好成績も、SF3の性能を担保するものと考えてよい。
「ICE ZERO Asimmetrico」は扱いやすいスタッドレス
■ICE ZERO Asimmetrico(アイス・ゼロ・アシンメトリコ)
日本の厳しい冬に高いパフォーマンスを発揮することを強く意識して開発されたのがアイス・ゼロ・アシンメトリコだ。ウインタータイヤでは長い歴史をもつピレリだが、スタッドレスタイヤの開発は日本でスタートしている。現在は拠点を欧州に移しているが、スタッドレスタイヤの評価に関しては、依然として日本市場での評価を重視しているのだという。
それは冬用タイヤにとって、日本の冬が世界的に見ても厳しいこと、そして日本のユーザーのスタッドレスタイヤに対する感度が高いからなのだという。つまり、欧州における高速スタッドレスの要求と、日本の0度付近の氷雪路でのグリップ性能、ふたつの性能を両立したのがアイス・ゼロ・アシンメトリコだ。
特徴は、その名前のとおり氷上性能を重視したトレッドデザインとなっていること。3本の太い縦溝を基調にすることで広い接地面積を確保しているのが見て取れる。同時にオフセットして配置された太い縦溝に挟まれた幅広リブ(ブロック列)には、スクエアブロックと名付けられた四角いブロックが配置されている。これによってリブと剛性のバランスを取り、氷上性能を高めている。
また、このスクエアブロックを構成する中部と溝は、ダブル・サイドトゥサイド・グルーブとも名付けられている、横方向に効くエッジ成分を増すことでスノー性能を高め、縦溝の増加によるウエット性能の向上も図っている。
コンパウンドには、新リキッドポリマーというトレッドコンパウンドの柔軟性を高め、寿命末期まで柔軟性を保つ材料が配合。利きの長もち性を延ばしている。
試乗車はFIT、アルファード、ボルボXC40、カローラスポーツ(いずれも4WD)と、多彩な車種が用意されていた。
試乗した印象は、コンパウンドゴムが柔軟で凍結&圧雪路面を自信をもって走れるグリップ性能をもっていた。それと同時に、速度レンジTの高速スタッドレスならではのブロックの強さとかエッジの利いた感触が感じられた。たとえば、カローラスポーツでは横方向にエッジの利いた、軽快な操縦性が印象的だった。身のこなしが軽く、軽々と走る感覚がる。
軽量なFITでも、横方向の踏ん張り、トラクションのかかり具合ともに明瞭で走りやすかった。
重心が高く重いアルファード、ボルボXC40では、ブロック剛性、トレッド面剛性の強さが感じられ、ブロックのゆがみ感が少なくクルマの重さを受け止めている感触があった。ハンドルの手応えもクリアでマッチングがよかった。
キャラクターとしては、ライバルと絶対性能を競うというよりは、インフォメーション性、コントロール性を磨き込んで、誰にでも扱いやすいスタッドレスに仕上げていると感じた。
このほかにもピレリのウインタータイヤシリーズに試乗することができた。欧州初のスノータイヤは高速操安性を重視される傾向にあり、また日本のスタッドレスほど氷雪上でのグリップ性能を求めていない。そんなピレリのウインタータイヤを試乗してみたのだが……。
冬用の「P ZERO」はコントロール性に優れる
■ScorpionWinter(スコーピオン・ウインター)
おもにライト/ミドルクラスレンジのハイパフォーマンスSUVをターゲットにしたヨーロピアンウインタータイヤがスコーピオン・ウインターだ。
トレッドデザインは、極太の2本の主溝とV字パターンで構成されており、サイプも縦、横、斜め方向に刻まれ、特定の方向からの入力には剛性を発揮し、あるいは柔軟性を示すことで、剛性と柔軟性を両立している。
3PMSF(3ピークマウンテンスノーフレークマーク=通称スノーフレークマーク)を取得しており、スノータイヤ規制時に高速道路への乗り入れが可能。
スタッドレスタイヤほどの氷上性能は備えていないが、低温でも柔軟性を保つコンパウンドが搭載されており、ドライバーに不安を感じさせないレベルのグリップ性能は備えている。試乗コースでも水分の多い圧雪路面でもタイヤが路面をとらえている感触がしっかりと感じられた。
コンパウンドグリップとともにブロック及びサイプのエッジの効いた感触もあり、かなり滑りやすく磨き込まれた雪上でも安心感が高かった。
マカンにはNコード付きが装着されており、バランスのいい操縦性、コントロール性を見せてくれた。専用設計のマッチングのよさも体感できた。
■P ZERO WINTER(ピー・ゼロ・ウインター)
自動車メーカーとの共同開発によって専用設計されているのがピレリのウインタータイヤシリーズのフラッグシップともいえる、P ZERO WINTERだ。名前のとおり冬用のP ZEROという位置づけ。
左右非対称デザインでアウト側に斜め溝が刻まれた大型ブロック、イン側にブロックパターンが配置され、ドライ路面でのパフォーマンスを考慮したデザインとなっている。
もちろんコンパウンドは低温時のゴムの硬化を抑えたウインターコンパウンドで、スノーフレークマーク付き。国内では冬用タイヤ規制にも対応している。
BMW5シリーズ(FR)、アルピナD3S4WD、ポルシェ911カレラ4Sに試乗することができたが、いずれも際立っていたのはそのコントロール性のよさ。
滑りやすい路面で(もちろんそれに見合った速度で)思いどおりにクルマがコントロールできるのだ。限界性能の高さもさることながら、そこに至る過渡領域のインフォメーション性やコントロール性を作り込んでいるように感じられた。
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