アストンマーチンのエンブレムはフンコロガシの羽だった
小中学生の夏休みも終了。筆者が子供だった頃(夏休み8月31日まで)は、まだ手つかずの宿題が山ほどあったな~などと思っていると、編集部から「夏休みの宿題といえば、昆虫採集が定番でしたよね。我々も夏休みが終わる前に、親父世代を代表して虫をモチーフにしたクルマを採取しに行きましょう」という、なんとも無茶振りなオーダーがあったわけで……。パッと思いつくクルマは少ないが、とりあえず虫取り網を片手にクルマの森へ向かってみることにしました。
クルマ好きのおっさん感涙! 70年代、80年代でひと際輝いたカスタムパーツ7選
・スカラベ
最初に見つけたのはアストンマーティンのエンブレム。何かの羽根だということは一目瞭然だが、元はエジプトで神格化される甲虫類の一種、スカラベの羽根がモチーフ。スカラベはコガネムシの仲間で、太陽神の象徴として神聖化され、宝石や陶器などにも好んで用いられてきた歴史がある。
このスカラベ、かの有名な『ファーブル昆虫記』に出てくるので小学生の頃によく馴染んではいたのだが、あの高級車でも特別扱いされていたんだね。
・スパイダー
スパイダーマンで知られる蜘蛛の英語名(すでに昆虫でないのは悪しからず)。クルマの世界では、軽量4輪馬車やオープンカーのことを指しており、例えばアバルト124 スパイダーやルノースポール・スパイダー、アルファロメオ 4Cスパイダーなどがおなじみ。オープンカーの畳んだ幌が”蜘蛛の糸”のように見える、のが語源という説がある。
・カブトムシ
本命といえば、やはりフォルクスワーゲン ビートル(カブトムシ)。残念ながら7月10日に生産終了となり、80年の歴史に幕を閉じたロングセラーだ。1938年に誕生した初代=タイプ1は、フォルクスワーゲン1200、フォルクスワーゲン1300というのが正式名称で、1998年に登場した「ニュービートル」までは、ビートルは名称ではなく、愛称だった。
とくにドイツ本国では、カブトムシなどの甲虫を意味する「ケーファー」と呼ばれていて、主にアメリカのユーザーがビートルと呼んでいた。日本では小学生の昆虫採集の主役はカブトムシだっただけに、ビートルの生産中止は寂しい限り。いつの日かまた戻ってきてほしい一台だ。
・テントウ虫
ドイツの国民車がビートルなら、日本の国民車構想から生まれたのがスバル360。このスバル360こそ、スバルブランドの第一号モデルで、個性的で愛らしいスタイルから、「てんとう虫」という愛称で親しまれた。RRの空冷2ストローク 360ccで、1958年から12年間で累計台数39万台を生産。日本機械学会に「機械遺産」としても登録されている名車なので、このクルマだけは”ムシ”することができなかった。
・エスカルゴ
虫そう言えば、平成元年にデビューした日産エスカルゴというパイクカーもあった……。エスカルゴはフランス語でカタツムリのこと。フランス料理の前菜メニューとして有名だが、そもそもカタツムリは陸に棲む巻貝なので、虫ではない……。
しかも近年カタツムリの数は減少しているらしく、この頃はめっきり庭先などでも見なくなった。日産のエスカルゴも1989年1月から1990年12月まで2年間で約1万600台(受注生産)作られたはずだが、ほとんど街中では見かけられない。
・番外編 ゲッコー=ヤモリ
ヤモリは爬虫類で、虫の仲間に入れるのはさすがに強引な気がするが、シロアリやゴキブリ、蛾、クモやワラジムシなどの害虫も食べてくれる益獣で、漢字では「守宮」「家守」と書き、家を守り金運をアップする存在といわれている。そのヤモリ=ゲッコーをモチーフにしたクルマといえば、アウディ クアトロ!
モータースポーツに通用する4WDとして、WRCの歴史を変えた。ヤモリのようにどのような路面状況でも吸い付いて、意のままに「走る・曲がる・止まる」ことができる特徴を、ヤモリのデザインで表している。
最後は、ちょっと強引過ぎた感があるが、結局、我々が採取したのは昆虫ではなく、ミニカーで「おじさん」らしい夏休みの宿題になってしまったことを報告しておきます。
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