必ず訪れる、ヘルメット購入のタイミング
ヘルメットを買い替えるタイミングは人それぞれ違います。わたし(筆者:伊藤英里)もそれなりのバイク歴の中で何度か買い替えてきたのですが、今回は想定外の買い替えでした。
【画像】『SHOEI Gallery TOKYO』を画像で見る(15枚)
趣味で参加したミニバイクレースでちょっと頑張り過ぎて転倒し、そのとき使用していたSHOEI「X-Fourteen」を思いきり地面に打ち付けてしまったのです。
衝撃を受けたヘルメットは「使用不可」になってしまったため、新しいヘルメットを購入することにしました。購入の模様をお届けする前に、『SHOEI Gallery TOKYO』で取材させていただいた、SHOEI商品企画部の田上紗織さんの話をご紹介しましょう。
ヘルメットは、どう選ぶ?
SHOEIにはたくさんのモデルが存在しています。フルフェイスやシステム、ジェット、オフロードなど、タイプも様々です。ヘルメットを選ぶポイントについて、田上さんは次のように語りました。
「SHOEIのラインナップはわかりやすいのが特徴です。重視されることと、使用目的が選ぶポイントになります。レース参加も含めたサーキット走行にフォーカスしたいなら、X-Fifteenがおすすめです。時々走行会に参加するくらいなら、普段の使い方を重視していただいたほうが良いと思います」
「ツーリングメインの場合、ベンチレーションと重さを重視するのなら、Z-8がおすすめです。重さとの兼ね合いはありますが、X-Fifteenもありです。空力性能がいいので、高速道路を長時間走っても疲れにくいんですよ。GT-Air3はインナーサンバイザーつきで、必要なときにサンバイザーを下せるので利便性が高いです」
「GlamsterとEX-ZEROは、ネオクラシックラインと呼んでいます。Glamsterは非常に人気の高いモデルで、パーツが少ない分、コンパクトで軽いんです。ただ、ベンチレーションがあまりついていない分、機能はZ-8ほど充実していません。シールド着脱機能や換気性能は劣るので、夏はZ-8に比べると暑いとは思います」
ベンチレーションがあれば涼しさは増しますが、ベンチレーションを持たないモデルならばコンパクトで軽いヘルメットになります。軽ければ体に負担がかかりにくい、という点で、ライダーの快適性につながります。
インナーサンバイザー付きのモデルは走行中のまぶしさを手軽に軽減しますが、前頭部にサンバイザーが格納されているため、その部分にベンチレーションがなく、「Z-8」などに比べると、全体的と言うより部分的な換気性能が劣ります。
どのヘルメットにも強みがあり、他のモデルを比べると劣る部分があるわけです。
なお、空力性能については、全てのモデルについて、SHOEIが持つ大型の風洞設備で風洞実験を行ない、検証されたうえで作られているのだそうです。
ヘルメットを選ぶときに大事なことは、「自分がヘルメットに何を求めているのか」を理解したうえで選ぶ、ということかもしれません。
日本向けと海外向けのモデルの違い
SHOEIは、例えば「X-Fifteen」など世界中で展開しています。一見同じようですが、内側は国や地域によって全く違うのだそうです。
「X-Fifteenは、ヨーロッパでX-SPR Proというモデル名です。見た目は一緒なのですが、シェルを作っている素材や配置は、仕向け地とサイズによって全く違います。中の発泡スチロール、つまり衝撃吸収ライナーの部分も、それぞれの規格、衝撃試験などに適合するように硬さを変えて作っているものです」
「内部形状も、その地域の人の頭に合わせて変えています。欧米仕様だと卵型になっていて、アジア仕様だとラウンドシェイプの内部形状になっています。ただ、国やルーツによって頭の形が全く違い、大きいくくりだけでは合わない方もいらっしゃるので、SHOEIでは内装調整サービス、P.F.S.(パーソナル・フィッティング・システム)を行なっています」
見た目は同じでも、内側はその国あるいは地域に合わせたものだということです。海外向けのヘルメットは、日本国内では使用できないので、注意が必要です。
SHOEIの「パーソナル・フィッティング・システム」を体験!
田上さんが触れた「パーソナル・フィッティング・システム」は、ヘルメットの内装を頭の形に合わせるサービスです。SHOEIのテクニカルショップやSHOEI Galleryで、基本的に新品購入するとサービス(有料)を受けることができます。
「独自の計測機器を使って、頭の前後の長さと横幅、それから耳から頭頂部の部分の高さを測ります。それぞれのモデルでプログラムが組まれていますので、まずは推奨のヘルメットサイズを割り出し、そこからパッドで調整していきます」
「SHOEIに入る前のことですが、わたしもヘルメットを買ったとき、なんとなくの感じでMサイズを被っていたんです。でも、SHOEIに入社してフィッティングしてもらったら、Sだったんですよ。調整してもらったものを被ったら全然違っていたんです」と田上さんは明かし、自分の頭に合ったヘルメットを被る重要性を語りました。
「自分で試着して決めるサイズは、大き目を選ぶ方が多いんですね。小さいときついですから。ただ、大きいヘルメットになってしまうと、走行中に風の抵抗を受けてしまいます。例えば横に隙間があれば横にぶれるし、前後にすきまがあれば縦にぶれることが起こり得るんです」
「横にすきまがあって前後は当たっていると、前頭部と後頭部だけでヘルメットを支えていることになるので、負荷が集中して痛くなってしまいます。頭全体でヘルメットの重さを支えるという意味でも、ちゃんと頭にフィットさせることが重要なんです」
今回、わたしはSHOEI Gallery TOKYOでヘルメットを購入する際、このパーソナル・フィッティング・システムを実際に体験してきました。選んだヘルメットは「X-Fifteen」です。時々サーキットを走って、レースにも参戦するし、空力性能によって高速道路を楽に走りたかったので、あまり悩まずに済みました。
まず、頭の計測をしていきます。ここで重要なのは横幅と前後の幅で、外周も計測されます。わたしのサイズはSで、ここからパッドを追加して頭に合わせていきました。
何度もヘルメットを被っては感触を確かめ、スタッフの方がつきっきりで、どういった感触がベターなのかを教えてくれます。個人的にはこれが安心でした。と言うのも、素人の感覚による曖昧な情報では、「この感覚がヘルメットを被ったときのベストかわからない」からです。
「きついようにも感じるけれど……」と、不安なところをどんどん伝え、その結果、パッドの硬さを変えるなどとても微細な調整をしてもらうことができました。しっかりと自分の頭に合ったヘルメットは、軽さを感じやすいというメリットもあるのだそうです。
パーソナル・フィッティング・システムを受けていると、購入したばかりのヘルメットに、じわじわと愛着が湧いてくるのを感じました。スタッフの方と一緒にヘルメットを自分に合ったものにしていったからでしょう。
1時間でフィッティングを終えるころには、心の中ですっかり「馴染みの装具」の仲間入りをしていました。そんな素敵なメリットも、あるのかもしれません。
SHOEIヘルメットのコンセプト
パーソナル・フィッティング・システムを受け、自分の頭に合ったヘルメットを使用する重要性を認識しました。では、そんなSHOEIのヘルメットは、どんなコンセプトを持っているのでしょう? 田上さんに尋ねました。
「コンセプトとしては3つあります。ひとつは安全性。これは、ヘルメットとして必ず持っていなければならないものです。もうひとつはコンフォート(快適性)、最後はパッション、感動を届けるということです」
「コンフォートについては、商品を被って快適にライディングをしていただく、ということなのです。ベンチレーションやインナーサンバイザーなど、快適に走るための性能を追求し、そういうものを作り上げることによって、バイクに乗る楽しみ、感動をお客様に感じていただく。それが、パッションです。この3つが、ものづくりの上で、大事な思想になっています」
コンセプトのひとつであり、必須の「安全性」について、SHOEIが考えるヘルメットの安全性とは?
「アクティブ・セーフティと、パッシブ・セーフティ、このふたつを掲げています。パッシブ・セーフティは、各国の必要な安全規格に適合し、安全性能を持たせるということです。アクティブ・セーフティは、万が一のことを引き起こさせないための性能です。例えば、換気性能をつけることでライダーが涼しく快適にライディングできるようにして、暑くなってぼうっとしてしまい、集中力が低下してしまうのを防いだり、インナーサンバイザーで眩しさを防ぎ、きちんと視野を確保しながらライディングをしてもらう。シールドもそうです。ゆがみをできるだけなくして、クリアな視界を確保します」
「重さをできるだけ軽くし、空力性能によって空気抵抗を少なくすることでライダーの疲労を軽減すれば、ライダーはよりライディングに集中できます。そういうことで、事故を起こしにくくするんです。それが、アクティブ・セーフティです」
アクシデントが起こった時の頭部の保護はもちろんのこと、そのアクシデント自体を防ぐ。それが、SHOEIが考えるひとつのセーフティ(安全性)ということでした。
最後に、SHOEIが考える「ヘルメットの今後の進化」について聞きました。
「どんどん機能が追加されています。例えば、NEOTECはIIになって専用設計のインカムをつけられるようになりました。インカムの普及率も上がっていますし、アクセサリーにあたる部分もすごくライダーの間では当たり前になってきたことを踏まえ、専用設計のコミュニケーションシステムをつけよう、ということになりました」
「さらに先進的なものは、ヘッドアップディスプレイ付きのOPTICSONです。いま表示されるのはナビのみですが、この先もっと表示される情報が増える、などが考えられると思っています」
ヘルメットの使用期限である3年後、次のヘルメットを購入するとき、また新しい機能を持ったヘルメットが登場しているかもしれません。
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