■車の「オイル交換」ってなぜ必要? そもそもオイルの役割って?
エンジンオイルはクルマのエンジンを潤滑させるなどの役割を持ち、しばしば人間でいう「血液」に例えられます。
あまりクルマに詳しくない人でも、定期的にカー用品店や整備工場へ愛車を持ち込んで「オイル交換」を依頼する人も多いでしょう。では、そんなエンジンオイルを交換しなかった場合は何が起こるのでしょうか。
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エンジンオイルは、クルマの動力源であるエンジン内部に満たされているオイル(油)です。
エンジンオイルの役割として「潤滑作用」があることは比較的よく知られていますが、ほかにも6つもの役割を持っており、だからこそ定期的な交換が必要なのです。
よく知られている「潤滑作用」はピストンやクランクシャフトなどと呼ばれる、エンジン内部に用いられる多くの金属パーツの表面に油膜を作ることで、パーツ同士の摩擦を減らし、スムーズな運動を手助けします。
2つ目は「冷却作用」。常にエンジン内部は燃焼が行われ、高温にさらされますが、エンジンオイルは循環しながらその熱を吸収し放熱を行います。なお、エンジンの冷却は冷却水(クーラント)によっても行われています。
3つ目は「緩衝作用」。エンジンオイルは粘り気を持っており、クッションの役割を果たすことから、高速で動く内部パーツから発生する衝撃を吸収します。
4つ目は「防錆作用」。燃料が燃えると酸と水分が生成され、エンジン内部が腐食していきます。これに対してエンジンオイルが油膜を形成することで、空気や水分を遮断し錆から守ります。
5つ目が「密封作用」。ピストンとシリンダーの間には隙間があり、そのまま燃焼させると圧力が逃げてしまいます。その隙間に粘性を持ったエンジンオイルが浸透し塞いで密封することで、燃焼時の圧力を動力として伝達します。
6つ目が「洗浄作用」。金属パーツ同士の摩耗による金属粉や、不完全燃焼によって生じるカーボンやスラッジ(燃えカス)などをエンジンオイルが取り込み、オイルエレメント(オイルフィルター)まで運んで濾過することで、汚れが堆積することを防ぎます。
そして、7つ目が「中和作用」です。燃焼によって窒素酸化物などの強い酸性物質が発生し、水蒸気と混じることで酸性の液体となります。エンジンオイルの油膜により直接酸性物質がエンジン内部に触れないようにするとともに、オイル内に取り込むことで中和する作用も持っています。
このように、エンジンオイルは7つもの作用を担うことで、高温かつ高速、大パワーで動くエンジンをスムーズに動かすことを支えています。
では、交換しなかった場合はどのような影響が及ぶのでしょうか。自動車整備士は以下のように説明します。
「交換しなければエンジンオイルはどんどん汚れていきます。そうするとスラッジなどがたまって摺動部の動きにスムーズさが失われると音や振動が大きくなり、燃費も悪化します。
さらに、油膜が切れてしまえば摩擦が大きくなるため内部パーツが損傷し、最悪の場合は焼き付きというものを起こし、エンジンブローを招きます」
エンジンオイルを交換しないままクルマを使い続けると、その影響は徐々に蓄積されていき、最終的にはエンジンの深刻な故障を招くようです。
そのため、定期的なエンジンオイルの交換が必要となります。
■乗らなくても交換必要? 高いオイルは長めの交換でも大丈夫?
エンジンオイルは7つもの役割があり定期的に交換しなくてはなりませんが、クルマに乗らなければエンジンオイルは交換しなくても良いのでしょうか。
また、エンジンオイルも高価なものと安価なものがありますが、高価なものを使えば交換頻度は減るのでしょうか。
これについて、先出の自動車整備士は以下のように話します。
「エンジンオイルはもちろん、エンジンを始動して走行を重ねれば汚れますし、徐々に本来の性能も発揮できなくなります。
しかし、実はほとんど乗らない状態であっても劣化は避けられません。エンジンには多少なりとも隙間があるために、外気と触れて酸化するほか、温度差により水分が発生し『乳化』が起きます。これによって徐々に劣化が進み、乗らなくても性能は低下していくのです」
乗らずに置いていれば交換しなくても良いというわけではなく、ある程度の期間を目安に交換するほうがエンジンにとっては優しいようです。
では、交換頻度についてはどうなのでしょうか。近年のクルマでは、整備手帳やメンテナンスノートに1年・1万kmごとの交換を推奨していると示されているようですが、自動車整備士は早めの交換が望ましいと言います。
「推奨される交換頻度としては、5000kmに1回または半年に1回のいずれか早い方が一般的には推奨されています。
近年のエンジン・エンジンオイルは、ともに性能はかなり向上してはいますが、交換しない限り汚れが溜まっていく一方なので、長く乗るためにはやはり早めに交換するほうが望ましいです。
また、低燃費性能やクリーンな排出ガスを実現するために、『直噴エンジン』や『リーンバーンエンジン』などが採用されているクルマもありますが、これらは仕組み上エンジンオイルが汚れやすい傾向にあるので、最近のクルマでも早めの交換をするほうが長持ちします。
とはいえ、一般的な乗り方では2、3000kmでかなり汚れが溜まることは少ないので、早すぎる交換はあまり意味がないと思います。走行距離を重ねたクルマやエンジン内部が汚れているクルマであれば、3000km程度の交換を繰り返すと堆積したスラッジの洗浄効果を発揮できるケースもあります」(自動車整備士)
定期的なオイル交換を行うことは大切ですが、オイル代金や工賃、さらに手間を考えると極力効率的に行いたいものです。
そんななか、カー用品店や販売店などへ行くと、高性能で高価なオイルが販売されていますが、交換サイクルも伸ばして良いものなのでしょうか。
「高性能オイルは100%合成された精製油であることが多く、レースなどでエンジンの高負荷・高回転が続く状況で、耐熱性能に優れていたり、オイル分子が細かいなどで耐摩耗性に強いなどの効果があります。
サーキット走行をする方や日常のドライビングで高回転型のエンジンを楽しみたいという方にはレスポンス向上などの効果を実感できるかもしれませんが、日常的なクルマの乗り方ですと、あまり効果を実感できないため、『普通のオイルをこまめに交換』のほうが望ましいでしょう。
高くていいオイルだからと言って何万kmも無交換で良い、などということはありえません」
なおエンジンオイルにも種類があり、オイルの粘度や温度特性を表す指標やオイル成分が鉱物によるものか合成油かなど、多岐に渡っています。
同じエンジンであってもクルマの乗り方により選び方も変わってくるようなので、オイル交換時に自分の乗り方にあったものを選ぶというのも面白いかもしれません。
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エレメントは、毎10,000km交換で絶好調
>5000kmに1回または半年に1回のいずれか早い方