7月30~31日にノックヒルでシーズン折り返しの第6戦を迎えたBTCCイギリス・ツーリングカー選手権は、予選ポールポジションを獲得したジェイク・ヒル(MBモータースポーツ・パワード・バイ・ロキット/BMW 330e Mスポーツ)が、オープニングで王者アシュリー・サットン(NAPAレーシングUK/フォード・フォーカスST)との攻防を制して今季2勝目をマーク。しかし続くヒートではチャンピオンが意地を見せ、サットンが今季移籍モーターベース・パフォーマンスでの初勝利を記録してみせた。
また最終ヒートのレース3では、リバースポールの優位を活かした若手有望株ジョージ・ギャンブル(カーゴッツ・ウィズ・シシリー・モータースポーツ/BMW 330e Mスポーツ)が“ライト・トゥ・フラッグ”でのキャリア初優勝を手にしている。
スネッタートンで2日間のサマーテストを実施。王者サットン最速でフォードが1-2占拠/BTCC
スネッタートンで実施された7月中旬のサマータイヤテストを経て、2022年のシリーズもいよいよ後半戦へ。FF勢ではホンダ、フォード、そしてヒョンデが好調さを見せ、FRのBMWと対決構図を維持してきたが、この第6戦でもセッションごとに首位が入れ替わる混戦模様となった。
週末最初のセッションとなったFP1では、ウエット路面のなか“伏兵”アーロン-テイラー・スミス(ヤゾー・ウィズ・サフードットコム・レーシング/クプラ・レオンBTCC)がトップタイムを刻み、続くFP2では今季よりスピードワークス・モータースポーツ加入のリッキー・コラード(TOYOTA GAZOO Racing UK/トヨタ・カローラGRスポーツ)が最速と、いずれも前半戦とは異なる顔ぶれがタイムシートの上位を占める。
しかし予選セッションに入ると実力者たちがさすがのアタックを敢行し、開幕戦でもポールシッターとなっていたヒルが、ライバルより3周少ないアタック機会で完璧な仕事を披露。王者サットンを0.206秒差でフロントロウ2番手に押しやり、今季2度目の最前列を確保した。
「もう大満足さ! 2020年には(当時インフィニティQ50BTCCをドライブしていた)アシュ(サットンの愛称)に栄誉を奪われていたから、今回こうしてやり返すことにしたんだ(笑)。このBMWをノックヒルでドライブできて本当に良かったし、自分自身とチームを心から誇りに思うよ」と、その当時はMBモータースポーツのホンダをドライブし、今季から名門ウエスト・サリー・レーシングとのジョイントチームでBMWのステアリングを握るヒル。
一方で、同じく今季よりFFマシンに乗り換えたサットンは「僕以外の上位6台はすべてFRで、FF最上位は7番手以下なんだから、それって『最高の仕事をした』って意味だろう?」と、フォーカスSTで2番手獲得の戦果を満足げに振り返った。
「前回のグッドイヤーテストでは、彼らの開発プログラムを手伝いながらも、まだクルマのパフォーマンスを引き出せる余地があることを学んでいた。最終的にはその学習こそが重要な点で、僕らに有利でないトラックでも一定の成果が挙げられた。優勝できれば最高だけど、ここで後輪駆動が強いことは誰よりも僕自身がよく知っている(笑)。明日できることを最大限に発揮するだけだね」
■レース1は緊迫のテール・トゥ・ノーズバトルを制したヒルが制す
そのチャンピオンの言葉どおり、2列目セカンドロウには“4冠王者”コリン・ターキントン(チームBMW/BMW 330e Mスポーツ)とアダム・モーガン(カーゴッツ・ウィズ・シシリー・モータースポーツ/BMW 330e Mスポーツ)が並び、同じく3列目にはステファン・ジェリー(チームBMW/BMW 330e Mスポーツ)と新鋭ギャンブルが続くなど、最終的に5台すべてのBMWがトップ6に収まる結果に。
その背後では、ここが地元のロリー・ブッチャー(TOYOTA GAZOO Racing UK/トヨタ・カローラGRスポーツ)が選手権首位トム・イングラム(ブリストル・ストリート・モータース・ウィズ・エクセラー8・トレードプライスカーズ.com/ヒョンデi30ファストバック Nパフォーマンス)を抑えて、意地の7番手に滑り込んだ。
迎えた日曜最初のヒートから早速ヒルvsサットンの攻防が本格化し、スタート直後からサイド・バイ・サイドの勝負を繰り広げた2台は、オープニングラップをほぼ横並びでクリアした最終シケインで、2番手サットンがBMWに並び掛ける。
そのままスタート/フィニッシュラインを駆け抜けた2台は、バトルの引き出しに勝るサットンがターン1を制して首位浮上。しかしここから、タイヤの内圧上昇に伴いトラクションが増したヒルが執拗にフォードへプレッシャーを掛け、緊迫のテール・トゥ・ノーズが続いていく。
5周目には最終シケインでサットンのリヤを突つき、一時はヒルが前に出るも、続くラップで再びチャンピオンがポジションを奪還する勝負を経て、10周目のターン1ではついにインサイドを抑えたBMWが先行。これで2番手サットンは、背後に迫るターキントンに対する徹底したディフェンスを迫られることに。結果、そのままリードを拡大したヒルが3.640秒のマージンを築いて“ポール・トゥ・ウイン”を決め、2位サットン、3位ターキントンの表彰台となった。
同じくヒルとサットンの最前列でスタートしたレース2は、先頭のBMWが堅実なスタートを切ったものの、シケイン出口でワイドになり早々に首位から陥落。セーフティカー導入を経て再びアタックを試みたヒルだったが、ここで2度目のミスを犯してWSRのエースにも先行されてしまう。
しかし双方のドライバーがレース後に語ったとおり「後半はリヤタイヤのドロップが大きく、ミスしないことに集中した」というBMWのコンディションにより、今度は“4冠王者”がターン1でワイドに。この結果、ヒルを0.141差で抑え切ったサットンが薄氷の今季初優勝を挙げ、ターキントンが連続の3位表彰台を得る結果となった。
■「信じられない気分だ!」最終レース3では26歳のルーキーが初勝利
「最初のヒートでは、スタートからとにかく必死だった。序盤の数周はいつもタイヤグリップの発動で苦労するし、アシュはターン1で素晴らしい動きをした。でも、彼に付いていくうちにペースが戻ったんだ。ヘアピンで彼に突っ込むつもりはなかったけど、アシュは早めにブレーキングした。レース2ではチームメイトのコリンと良い勝負ができたと思う。2位には満足だし、選手権でも14点しか離れていないのは大きなボーナスだね」とヒル。
一方のサットンは、フォード移籍後初優勝の安堵とともに、そのBMWに仕留められたオープニングヒートに関して、ライバルを皮肉混じりに祝福する余裕を見せた。
「(追突されて)何て言えばいいか、このあと体がムチウチになっていないか、カイロプラクティックの専門医に診てもらう必要があると思うね! ともあれジェイクが最終コーナーで大打撃を与えてくれたことでダメージを追ったが、その後は最善を尽くしてコリンを抑え込めた。それにレース2はジェイクがシケインでミスしたことで、少し楽になったからね(笑)。彼はそこに焦点を合わせていたし、僕らもここを凌ぐことに集中した。NAPAレーシングUKで初勝利を収めることができてうれしいよ!」
そして最終レース3は、序盤にイングラムとゴードン・シェドン(ハルフォーズ・レーシング・ウィズ・カタクリーン/FK8型ホンダ・シビック・タイプR)が絡むアクシデントもありつつ、リバースポールのギャンブルが首位を堅持すると、背後ではフロントロウ発進のブッチャーが猛烈な勢いで躍進してきたヒルにも捉まり、前を追うことができず。26歳のルーキーが初勝利を収め、2位ヒル、3位ブッチャーの表彰台となった。
「信じられない気分だ! 僕は数年間レースから離れていたけど、ここへ戻ってくるのは本当に長い旅路だった。ジネッタJr.を戦った14歳のときから、このBTCCで勝つことを夢見ていたんだ。それがこんな完璧な形で叶うなんて……チーム、スポンサー、これを実現させてくれたすべての人に感謝の気持ちでいっぱいだ」とギャンブル。
この週末の結果、3位、3位、4位とレースウイークを通じて高い一貫性を披露したターキントンが新たなポイントリーダーに浮上し、イングラムを挟んでサットンが3位に躍進。続くBTCC第7戦は、2週間後の8月13~14日にスネッタートンで争われる。
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