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【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第11回】僚友ニコに0.5秒落ち。ケビンの走りとクルマが合わず得意の予選で苦戦

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【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第11回】僚友ニコに0.5秒落ち。ケビンの走りとクルマが合わず得意の予選で苦戦

 2023年シーズンで8年目を迎えたハースF1チームと小松礼雄エンジニアリングディレクター。第12戦ハンガリーGPでは、『Alternative Tyre Allocation(ATA)』という通常とは異なるタイヤ配分が行われた。F1の持続可能性や環境のことを考え試験的に導入されたこのATAだが、場合によってはフリー走行で“クルマが走らない”という状況を招きかねないと小松エンジニアは指摘する。

 一方予選ではケビン・マグヌッセンが自身の走りとVF-23の特性が合わずに苦戦し、ニコ・ヒュルケンベルグの後塵を拝する状況が続いてしまった。シーズン前半は残すところあと1戦だが、早急に解決策を見つけることが必要だ。ハンガリーGPの現場の事情を小松エンジニアが振り返ります。

マグヌッセン「あまり満足できる結果ではない。重要なのは辛抱してアップグレードを待つこと」ハース F1第12戦決勝

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2023年F1第12戦ハンガリーGP
#20 ケビン・マグヌッセン 予選19番手/決勝17位
#27 ニコ・ヒュルケンベルグ 予選10番手/決勝14位

 ハンガリーGPでは『Alternative Tyre Allocation(ATA)』というタイヤ配分システムが導入されました。これはF1の持続可能性や環境のことを考慮して、タイヤの本数を通常のレースウィークよりも少なくするという取り組みです。本来はドライバーひとりに対して13セットのタイヤが供給されますが、ATAの場合は11セット(ハードが3セット、ミディアムが4セット、ソフトが4セット)になります。当初はエミリア・ロマーニャGPで最初に実施予定でしたが、グランプリが中止になったためハンガリーGPで初めて実施されました。

 ATAに関していうと、個人的には特に問題はありませんでした。通常の13セットから11セットになって、全チーム合わせて40セットもタイヤの数を減らせたわけですが、これが全体としてバランスがとれていいのかどうかはいまいちわかりません。

 今回は問題なかったですが、もし予選の始めがウエットで、その後にドライで走れるような状態になると、このATAは機能しません。なぜかというとドライの時はQ3用にソフトを2セットだけ残しておけばいいのですが、Q1の始めに路面が濡れていてウエットトラックが宣告され、その後すぐに路面が乾いてドライタイヤで走り始めた場合、使用するドライタイヤのスペックは自由になるのでソフトタイヤは4セットすべて必要になります。ということはフリー走行でソフトタイヤを1セットも使えないということです。その場合、どうしてもフリー走行の走行距離は少なくなってしまいますよね。するとセッション中なのに誰も走っていないという昔のような、観客の方にはとても残念な状況になりかねません。

 FP1を1セットのタイヤで走るのは特に問題ありません。タイヤが柔らかすぎてグレイニングなどが出て破綻しない限り、しっかりと走れるからです。ただ、FP2やFP3でソフトタイヤを温存しなければならないのであまり走れない、という状況になるのは避けるべきです。本来はきちんと走れるはずのフリー走行で、いい天気なのにクルマが走らないなんてことになりかねないレギュレーションは改めるべきです。

 ハンガリーGPの予選は結局ドライコンディションになり、ATAのレギュレーションに則ってQ1はハード、Q2はミディアム、Q3はソフトでの走行となりました。ケビンは今週末、ずっと一発のタイムを出すのに苦労していて予選でもこれが改善せずQ1敗退となってしまいました。これは特にハードタイヤだったからということではなく、ケビンはどのタイヤでも一発に苦労していたということです。とにかく、今は彼のドライビングスタイルとVF-23の短所が合わずに手こずっています。

 ニコはその点、一発は比較的うまくまとめてくれます。今回もQ1でケビンに0.5秒という大きな差をつけました。今は予選の速さが拮抗しているのでチームメイトに0.5秒落ちではまったく勝負にならないので、早急に解決策を探さないといけません。

  Q2でもニコはとてもいい仕事をしてくれ、7番手でQ2を突破。Q3では最後のふたつのコーナーでアウトラップ中のバルテリ・ボッタス(アルファロメオ)の影響も少しありタイムをロスしました。これがなければ、5番手の周冠宇(アルファロメオ)の出したタイムに届く可能性がありました。

 またタイヤの使い方ですが、個人的にはやはり予選は一番速いソフトでの一発勝負が好きなので全部ソフトにしてほしいですが、特にQ1をハード、Q2をミディアムと指定すること自体に問題はありません。これが問題になるのは先に書いたように、ウエットトラックが宣言された後に路面が乾いて圧倒的にソフトタイヤ不足に陥ることです。基本的はタイヤの数だけ決まっていて、どのセッションにどのタイヤを使うかはチームに委ねるべきだと思います。レギュレーションでがんじがらめにしようとするとどうしてもそのレギュレーションで対処できない局面を増やすことになるので、その都度付け焼き刃的な対応が必要になってきてよくないと思います。

 決勝レースに関しては、ケビンが「ハードタイヤではかなりペースが遅かった」「3ストップにするべきだったのかもしれない」と言っていた通り、確かにハードタイヤは思ったよりもよくなかったです。ただケビンは1セット目のハードはよくなかったですが、2セット目では随分とよくなったので、1セット目の時はタイヤをうまく使えていなかったというふうにとらえています。

 うちはタイヤの摩耗が激しいので、ミディアムを2セット使う2ストップ戦略をするのは厳しかったです。確実に2ストップで走るためにはハードを2セット使うしかありませんでした。ダニエル・リカルド(アルファタウリ)がミディアムで40周走ったのには驚かされました。さすがですね。アレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)もよかったと思います。

 とにかく2ストップで走り切るためには最初のピットストップも14周辺りまで引っ張るしかありませんでした。8、9周目という早い段階でピットインしたドライバーたちもいましたが、うちは無理でしたね。そうなると当然アンダーカットされてしまうわけですし、抜きづらいハンガロリンクのようなサーキットでもこのようなかたちでクルマの弱さがレースに影響にしてきてしまうんです。状況は厳しいですが、現場のチームとしては今あるクルマで最善の策をとっていくしかありません。次のレースは天候の不安定なスパで、さらにはスプリントです。走行時間も限られそうですが、なんとか天候を味方につけて戦えればと思っています。

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