自動車メーカーの大冒険
多くの自動車メーカーは「冒険」を好まない。販売に悪い影響を与えそうな、革新的すぎる設計は敬遠されがちだ。しかし、当然ながら例外もある。
【画像】世にもワイルドすぎるクルマたち【奇抜で革新的なモデルを写真で見る】 全108枚
長い歴史の中で、さまざまなメーカーが意図的(あるいは偶然)に、かなりワイルドなデザインを生み出してきた。技術的な理由から、あるいは単に時代の流行に従ったために、そのようなクレイジーな「カタチ」になったのだ。残念ながら、不幸な失敗作と言えるものも少なくない。
世界中を見渡すと、革新的でワイルドなクルマは枚挙に暇がない。ここでは、特に編集部の心を捉えたクルマを、メーカーのアルファベット順に紹介する。
アルファ・ロメオ・ディスコ・ヴォランテ
ディスコ・ヴォランテは、アルファ・ロメオの1900セダンに由来するスポーツ・レーシングカーで、1952年と1953年にごく少数が生産された。
ボディ周りの空気の流れをコントロールして走りを改善することは、以前から試みられていたが、ディスコ・ヴォランテはその「空力」の概念をまったく新しいレベルにまで高めたのだ。
3種類のボディスタイルで合計5台のみが製造されている。写真の「スパイダー」は、イタリア語で「空飛ぶ円盤」を意味する車名にふさわしいモデルである。
アルファ・ロメオSZ
アルファ・ロメオというと、美しく、曲線的なデザインが思い浮かぶのではないだろうか。クーペのSZ(写真)、コンバーチブルのRZは、そのいずれにも当てはまらない。フランス人デザイナー、ロベール・オプロン(1932-2021)のスケッチに基づいて設計されたSZは、直線的でスクエア、アグレッシブな外観だ。
イタリア人からは、承認と尊敬の念を込めてか、「イル・モストロ(怪物)」というニックネームで呼ばれる。
AMCペーサー
1970年代後半に米国で生産されたクルマとしては、驚くほどモダンなデザインで、膨大な量のガラスが使われている。
この先鋭的なフォルムは、AMC(アメリカン・モーターズ・コーポレーション)にとって、行き過ぎたデザインであったともいえる。デトロイトの「ビッグ3」とは異なり、AMCはペーサーで出した損失をカバーできるほどの余裕がなかったのだ。
ペーサーは決して優秀なクルマではなく、購入を避けるべき理由もいくつかあったが、わずか5年で生産終了となった要因の1つに、このスタイリングがあったことは間違いないだろう。
アリエル・アトム
アトムは、機能によって形状が決まるということ極端に表した例だ。無駄なスタイリングはまったくといっていいほど施されていない。
ボディはむき出しのスペースフレーム・シャシーであり、その隙間からドライバーや部品を見ることができる。非構造部材はほとんどない。
機能を追求したデザインであるにも関わらず、アリエル・アトムは一目でそれと認識できる外観となっている。これとまったく同じ姿のクルマは他にない。
アストン マーティン・ラゴンダ
英国の自動車デザイナー、ウィリアム・タウンズ(1936-1993)がデザインしたラゴンダ。1976年にデビューしたとき、ファンからは戸惑いと憤りとともに迎えられた。
それまでのアストン マーティンは、スタイリッシュで曲線的なデザインだった。しかし、タウンズのデザインは、フラットなパネルをシャープなエッジでつなげただけのものだった。保守的な伝統主義者はぞっとしたことだろう。
しかし、ラゴンダは1990年まで生産された。1987年のタウンズによる改良型でも、ラゴンダの個性は失われていない。
アストン マーティン・ヴィクター
限定生産されたハイパーカー「One-77」をベースに、サーキット専用車ヴァルカンのサスペンションとヴァルキリーのメーターディスプレイを採用したワンオフモデルが、こちらのヴィクターである。
搭載される7.3L V12エンジンは、コスワースによってOne-77より強力な、847psにアップグレードされている。
スペックもワイルドだが、外観はさらにワイルドだ。カーボンファイバー製ボディは、1977年から1989年まで製造されたV8ヴァンテージのスタイリングを踏襲している。丸型ヘッドライトとブラックの塗装から、アストン史上最もアグレッシブなロードカーの1つに数えられる。
アウディ・タイプK
アウディ・タイプKは、技術的にはかなり進んだクルマだった。しかし、オーストリア=ハンガリー帝国出身のパウル・ヤーライ(1889-1974)の手にかかるまでは、1920年代当時の他のクルマとほとんど同じ姿をしていた。
ヤーライは、かの有名なツェッペリン飛行船の設計に携わった航空技術者で、空力に関する知見を活かし、自動車においても並外れたボディを生み出している。あまり知られていないドイツのメーカー、レイやディキシーでも採用された。
タイプKをベースに作られたこの開発車両は、車幅の割に背が高く、横風やコーナリングで転倒する危険があった。しかし、ヤーライの理論通り、直線では従来のボディよりはるかに速かった。
BACモノ
アリエル・アトム同様、BACモノとその後継車であるBACモノR(写真)は、見た目よりも速さを追求したモデルである。
英国のBAC(ブリッグス・オートモーティブ・カンパニー)は、レーシングカーのような軽さと最適な重量配分にこだわってモノを設計している。
また、シングルシーターとクローズドホイールを組み合わせたデザインも特徴的。この形状の利点は非常に大きく、F1をはじめとするほとんどのモータースポーツで禁止されているほどだ。
ベントレーEXP 9 F
ベントレーの高級SUV、ベンテイガは堂々としたクルマだが、当初意図されたようなワイルドさはない。2012年のジュネーブ・モーターショーでコンセプトモデルとして初めて一般公開されたベンテイガは、当時「EXP 9 F」と呼ばれていた。
大きな円形のライトユニットを垂直に積み重ねたフロントエンドのスタイリングに対する反応は大きく、そのほとんどが批判的なものだった。
ベントレーはこの反響を受けて検討を重ね、デザインからワイルドさを大幅に排除した上で、2015年にベンテイガとして発売した。
ボンド・バグ
ボンド・バグほど、当時の文化をよく表しているクルマがあるだろうか。3輪、くさび形、キャノピー、鮮やかなオレンジ色の塗装を施したバグは、1970年から1974年にかけて生産された。
ヒッピーの「フラワーパワー」が影響力を失い、パンクが登場してすべてを変える。そうした時代の移ろいに一石を投じるような、社会的な存在といえるかもしれない。
ブガッティ・タイプ57S
1930年代の超高級車といえば、専門のコーチビルダーが製造したボディを装着するのが一般的だ。しかし、1936年に登場したタイプ57Sは、ブガッティが自ら設計、製造したものである。
通常のタイプ57も十分にドラマチックなクルマだが、タイプ57Sは、ホイールベースを縮小し、車高を低めたバージョンである。少量が製造され、最後の2台(写真は唯一の現存車)はエアロクーペと呼ばれ、最もワイルドで、最も美しいボディを誇っている。
キャデラック・エルドラド
キャデラック・エルドラドは、1950年代の華やかな米国車デザインの申し子として、他のどのクルマにも負けない存在である。その意味で、エルドラドのピークは1959年であった。
この年のモデルイヤーは、4灯式ヘッドライト、宝石のようなフロントグリル、巨大なテールフィンが特徴的である。1960年になるとテールフィンは小さくなった。
少なくとも1970年代後半までは、エルドラドは人目を引く存在であったが、59年モデルほどワイルドなクルマは二度と現れなかった。
カパロT1
カパロ・ビークル・テクノロジーズが唯一生産したT1は、まだ存在しないモーターレースのために設計されたようなクルマであった。
公道走行可能でありながら、公道で使うには少々過激であるとの評価もある。しかし、テストコースでは抜群の性能を発揮している。
しかし、英国のテレビ番組の撮影中に炎上し、評判はガタ落ちとなった。
シボレーSSR
シボレーSSRは、コンセプトモデルに非常に近いクルマでありながら、戦後間もない頃のアドバンス・デザインを踏襲した本格的な市販ピックアップトラックである。
写真は2003年インディアナポリス500の公式ペースカーとして使用された個体。SSRは同年末に発売されたが、その魅力的なルックスにもかかわらず、ほとんど買い手がつかなかった。
2006年3月に生産が終了してしまったが、現在でもカルト的な人気を誇っている。
クライスラー・エアフロー
1934年に発表されたクライスラー・エアフローは、空気を押し流すのではなく、空気を説得して動かすように設計された最初の市販車の1つである。
今でこそ空力による燃費や性能の向上などはよく知られているが、パウル・ヤーライのような人物は、エアフローが登場する前からそのことを理解していたのである。
一方、世界恐慌の最中に、このようなびっくりするようなボディデザインの市販車を投入するのは、勇気ある戦略であった。兄弟車のデソート・エアフローは1936年に、クライスラー・エアフローはその1年後に生産中止となったが、非常に大きな影響力を持つデザインであった。
シトロエン・アミ
2CVがシトロエンのデザインの中で最もワイルドなものだと思っている人は、アミを見たことがないはずだ。
四角いヘッドライトと逆勾配のリアウインドウを持つ、贅沢で奇妙な小型セダン。いたるところに奇抜なスタイリングが施され、大衆車としてはとても奇妙な外観となっている。
発売から7年後の1968年、アミはモデルチェンジを行い、一応の完成を見た。奇抜さはまだ残るものの、オリジナル版と比較すると、小麦のように普通のクルマになったのである。
シトロエンDS
DSは、デザインの傑作として広く知られている。1955年のデビュー当時は信じられないほどモダンなデザインだったが、20年後に生産が終了した時点でも非常に珍しい存在だった。
DSは当初からハイマウントのリアウインカーを備えており、1967年以降はステアリング連動の指向性ヘッドライトを採用した。ハイドロニューマチック・サスペンションと並ぶこれらの装備は、今日では普及しつつあるが、まだ一般的とはいえない。
1999年12月のカー・オブ・ザ・センチュリーでは、フォード・モデルT、ミニに次いで、フォルクスワーゲン・ビートルとポルシェ911を抑えて第3位にランクされた。
ダッジ・チャージャー・デイトナ
モータースポーツでの成功を目指して、ワイルドな市販車が生まれることがある。ダッジ・チャージャー・デイトナは、その典型的な例である。
風を操るノーズコーンと巨大なリアウィングを備え、1969年と1970年にNASCARに参戦。ダッジと並ぶエアロウォリアーは、プリムス・スーパーバードである。
優れたレーシングカーは、その登場から間もなく出場禁止になることが多い。しかし、NASCARの主催者は、もっと巧妙だった。1971年からは、競争力を失うような比較的小さなエンジンを搭載しなければ、参戦を許さなかったのだ。
ダッジ・ロイヤル
1950年代半ばから後半にかけて、3世代にわたって6年間だけ生産されたダッジ・ロイヤル。このモデルだけを見ても、この時期の米国車のスタイリングの変遷を知ることができる。
最初の2世代はまだ1940年代の雰囲気が残っている。3代目では、完全に「ジェットエイジ」に突入する。この長くシャープなテールフィンがないと、当時の米国ではほとんど売れなかったのだろう。ロイヤルは1959年モデルで生産中止となった。
エドセル・コルセア
コルセアは、フォードの新ブランド、エドセルが最初に手がけたモデルである。物議を醸したエドセルのスタイリングは、ブランドをわずか3年で崩壊させた原因の1つとなっている。当時、タイム誌はこのクルマを「レモンを吸ったオールズモビル」と評した。
たった1度のモデルイヤーで、デザイナーはコルセアにオリジナリティを追求することを諦め、59年モデルでははるかにオーソドックスなクルマとした。1958年の急激な景気後退により、戦後の長い好景気が一挙に終わりを告げ、エドセルは1960年初頭に姿を消してしまった。
フェラーリ・モンツァSP1
ロングシリーズのフェラーリ・モンツァの最新モデルであるSP1とSP2は、最新鋭の技術と、少しレトロでドラマチックなスタイリングが融合したモデルである。
SP1はシングルシーターであるため、より異彩を放っている。モンツァはフロントエンジンで、シャシーの中央にプロペラシャフトが通っている。
このため、ドライバーズシートは左側にオフセットされており、ドライバーをプロペラシャフトの上に座らせるよりも良いレイアウトとなっている(ただし、これはフェラーリがF1に参戦していた頃の常識であった)。
フィアット8Vスーパーソニック
フィアットがデザインした8Vは、一風変わったスポーツカーだった。いくつかの独立系コーチビルダーが独自のバージョンを製作したが、いずれもさまざまな方法でドラマチックに仕上げている。
なかでも飛び抜けて美しいのは、ギア社のジョバンニ・サヴォヌッツィ(1911-1988)が手がけたスーパーソニックであろう。サヴォヌッツィは航空産業での経験を生かし、最低でも10年はモダンに見せるフォルムを作り上げた。
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