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【ヒットの法則446】効率的なパワーの追求、パサート、アウディ A4、ポルシェ 911のパワーユニットには共通点があった

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【ヒットの法則446】効率的なパワーの追求、パサート、アウディ A4、ポルシェ 911のパワーユニットには共通点があった

Motor Magazine誌は2008年7月号の特集でポルシェ、アウディ、フォルクスワーゲングループの動きに迫っている。SUV、スポーツカーの分野の次にMotor Magazine誌が注目したのが「パワーユニット」。3つのブランドで求めるものは異なるが、パワーを追求したモデルも、燃費を重視したモデルも、燃焼効率を高めるという意味では同じということ。それぞれのブランドのパワーユニットの考え方とアプローチをパサート、アウディ A4、ポルシェ 911の3台の試乗をとおして検証している。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2008年7月号より)

燃焼効率の追求、キーワードは直噴ターボ技術
フォルクスワーゲンとアウディに搭載されるエンジンから、新しい思想と技術を見ることができる。

●【くるま問答】ガソリンの給油口、はて? 右か左か、車内からでも一発で見分ける方法教えます(2020.01.21)

パワー、トルク、燃費、排出ガス、軽量化、コンパクト化など、エンジン開発に対する要求項目は多くなる一方だ。それを解決する有効な手段として、「走り」と「効率」の性能を高い次元で両立させることができる直噴ターボを採用しているのだ。

エンジンの効率化のキーとなるのが直噴技術だ。通常のポート噴射がインテークマニホールドで空気と燃料が混合し、その混合気を燃焼室内に吸い込むのに対して、直噴は燃焼室内に直接燃料を噴射して燃焼室を冷やすことで、より多くの酸素を取り入れて燃焼効率を上げることができるのが特徴。またこれによりノッキングなどの異常燃焼を抑えることができるので、圧縮比を上げることができる。これによりさらに燃焼効率が良くなる。

しかも、直噴はアクセルに対するレスポンスを向上させることができる。ポート噴射と違って、アクセルのオンとオフに対して緻密に燃料供給をコントロールし無駄なく反応させることができるからだ。この無駄がないということが、燃費の向上につながる。

燃料噴射を細かく制御できる直噴は排出ガスのコントロールも得意とする。メインの噴射だけでなく、プレ噴射、ポスト噴射を行うことによって、きめ細かく燃焼をコントロールできる可能性を持っている。燃焼効率が良いということは、排出ガスもクリーンになるということだ。

こうした技術はディーゼルエンジンで先行して開発されたものだ。ヨーロッパでは乗用車の販売台数の半分以上がディーゼルエンジンである。そもそもは燃費に有利なディーゼルエンジンであったが、直噴とターボの技術を採用することによってスポーティなエンジンに仕上がり、大きく注目されることになった。燃費がよくスポーティに走れるから、多少イニシャルコストが高くてもユーザーを十分に納得させることができた。そのスポーティな「走り」が大きなアドバンテージになっていることも重要なポイントだ。

こうしたディーゼルエンジンの直噴ターボ技術をガソリンエンジンに投入したのが、フォルクスワーゲンとアウディのTSIやTFSIなのだ。

直噴ターボエンジンの燃費が良い理由のもうひとつに、エンジン排気量を小さくできることがあげられる。アクセルペダルを踏み込んでパワーを出す時には多くの空気を吸い込み、それに見合った燃料を噴射するものの、アクセルペダルを踏み込まない時は単なる小さな排気量のエンジンとなるわけだ。

わかりやすいのはアイドリングである。アクセルを踏まない状態のアイドリングでは排気量に比例した燃料を消費する。アイドリング時の燃料消費量という点では、エンジン排気量が決定的な要素となるわけだ。

小さなエンジンなのに低回転から大トルクを発揮
今回取材に用意した、フォルクスワーゲン パサート ヴァリアント2.0TSIスポーツライン、アウディA4 1.8TFSI、ポルシェ911ターボのうち、パサート ヴァリアントとA4は最新の直噴ターボ技術を投入した新設計のエンジンを搭載している。

パサートヴァリアント2.0TSIスポーツラインのエンジンは、2Lの排気量から200ps/5100-6000rpm、280Nm/1700-5000rpmを発揮する。これはパサートTSIコンフォートラインの1.8Lの160ps/5000-6200rpm、250Nm/1500-4200rpmをベースに排気量を増大したエンジンである。2Lエンジンでありながら、280NmというNAエンジン3Lクラスの最大トルクを、たった1700rpmから発揮するところがターボの威力だ。しかも、1700rpmから5000rpmまでという広い範囲で太いトルクを持続できるところが、新世代エンジンのキーポイントでもある。

パサート ヴァリアントの車両重量は1520kgであるが、必要にして十分以上の力を持っている。大きなラゲッジルームを持つヴァリアントだから、人と荷物をたくさん積んで走るというケースも考えられるが、必要とあらばアクセルペダルを深く踏み込むだけで登り坂でも問題なく走ってくれる。

実際に山道を走った時にも、登り坂を気にしないエンジンの力強さが感じられた。アクセルペダルを踏み込んでいった時のターボラグはないが、踏み込んでいく分だけモリモリとトルクが増していく感じがターボらしいところだ。低いエンジン回転数から力を発揮するし、そのトルク感がフラットなので、実に運転しやすい。アクセルペダルに対して過敏な反応はなく、力はあるのに品がある感じだ。

アウディA4 1.8TFSIに搭載されているエンジンは、パサートTSIに搭載される1.8Lと基本は同じだが、アウディ流の味付けによってスペックは若干異なり、160ps/4500-6200rpm、250Nm/1500-4500rpmになる。トランスミッションはパサート ヴァリアントがトルクコンバータを使った6速ATなのに対して、アウディA4 1.8TFSIはマルチトロニックと呼ばれるCVTと組み合わせている。このあたりのマッチングも見ているのだろう。

A4の車両重量は1510kgでパサート ヴァリアントと大きな差はないが、1.8Lと2Lの差はあまり感じなかった。2.5LのNAエンジンに相当する最大トルク250Nmをたった1500rpmから4500rpmまで発揮するのだから、不満が出ることはないはずだ。低いレシオから高いレシオまで幅広く使えるCVTとの組み合わせも威力も発揮しているようだ。アクセルペダルを踏み込んでいくとエンジン回転が上昇しながら加速していく。CVT特有のエンジン回転が一定のままスピードが上がる感覚はあまりないので違和感もない。しかも、加速感も大きい。

さらに床までアクセルペダルを踏み込んでいくと、タコメーターは5000rpm付近に上昇したままで加速していく。その回転数をスピードが越えそうになると、再びエンジン回転数が上昇。Dレンジから左に倒してマルチトロニックのマニュアルを選ぶと、MTのようにエンジン回転数とスピードが比例するようになる。スムーズに走らせれば、この直噴ターボエンジンの魅力をさらに引き出せるだろう。

911ターボのパワーも燃焼効率追求から実現
フォルクスワーゲンとグループを構成することになったポルシェは、1982年から始まったグループCカーによる、WEC(世界耐久選手権)においてターボエンジンを搭載したレーシングカー「ポルシェ956」で大成功を収めた。

そのエンジンは2.7Lの水平対向6気筒で、左右に2つのターボチャージャーを装着していた。コンパクトなエンジンから大きなパワーを絞り出すことがターボ装着の目的だったが、この時すでにダウンサイジングの考え方があったとも言える。

実際、ポルシェ956は極めて燃費が良く、当時の耐久レースをまさに席巻する存在だった。速くて、しかも燃費がいいから、ライバルは手がつけられなかった。ポルシェのあくなき燃焼効率への追求が生んだ勝利と言ってもいいだろう。

現在の911ターボやGT2などもターボを装着しているが、そのパフォーマンスからどうしても「走り」に振っているように見えてしまう。しかし、ポルシェ956同様、そのパワフルさは燃焼効率の追求から生まれたものであり、それはすなわち燃費にも大きく貢献することになっているのだった。

911ターボは3.6L水平対向6気筒に、可変タービンジオメトリーのターボを始めとした究極のテクノロジーを投入し、480ps/6000rpm、620Nm/1950-5000rpmという大きなトルクを発生する。さらにスポーツクロノパッケージプラスをオプション装着すれば、標準より0.2バールもオーバーブーストして公表最大トルクを上回る力を発揮することもできる。これにより10秒間だけ680Nm/2100-4000rpmというトルクを使えるのだ。

GT2は911ターボをさらにパワーアップして、530ps/6500rpm、680Nm/2200-4500rpmを発揮する。3.6Lだから、リッター当たり147psを越える。

ところが、燃費データを見ると、911ターボは12.9L/100km、GT2は12.5L/100kmという数字がカタログに記載されている。日本風に直すと、それぞれ7.8km/L、8.0km/Lとなる。4WDとRRという差を考慮する必要はあるが、GT2の燃費がよいことがわかる。

一見すると、フォルクスワーゲンとアウディの直噴ターボのあり方とポルシェ911ターボのあり方はまったく異なるように見えるが、燃焼効率の追求という点では共通する。パワーと燃費は必ずしも矛盾しないのだ。(文:こもだきよし/Motor Magazine 2008年7月号より)



フォルクスワーゲン パサートヴァリアント 2.0TSIスポーツライン 主要諸元
●全長×全幅×全高:4785×1820×1515mm
●ホイールベース:2710mm
●車両重量:1520kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1984cc
●最高出力:200ps/5100-6000rpm
●最大トルク:280Nm/1700-5000rpm
●駆動方式:FF
●トランスミッション:6速AT
●車両価格:426万円(2008年)



アウディ A4 1.8TFSI 主要諸元
●全長×全幅×全高:4705×1825×1440mm
●ホイールベース:2810mm
●車両重量:1510kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1798cc
●最高出力:160ps/4500-6200rpm
●最大トルク:250Nm/1500-4500rpm
●駆動方式:FF
●トランスミッション:CVT
●車両価格:419万円(2008年)

ポルシェ 911ターボ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4450×1850×1300mm
●ホイールベース:2350mm
●車両重量:1580kg
●エンジン:対6DOHC
●排気量:3600cc
●最高出力:480ps/6000rpm
●最大トルク:620Nm/1950-5000rpm
●駆動方式:4WD
●トランスミッション:6速MT
●車両価格:1858万円(2008年)

[ アルバム : フォルクスワーゲン パサート、アウディ A4、ポルシェ 911ターボ はオリジナルサイトでご覧ください ]

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