もくじ
どんなクルマ?
ー 開発責任者はポルシェ在籍経験あり
ー クーペとオープンを選べる最上位モデル
ー キャラクターが明確なインテリア
メルセデス-AMG GT Cは「GT R」と「GT S」のあいだ コンバーチブルは911を揺るがす
どんな感じ?
ー Rよりフレンドリーなマッスルカー
ー ポルシェよりアストンに近いGTカー
ー 改善されたコーナリング特性
「買い」か?
ー 熟成を極め、恐ろしいまでに万能
どんなクルマ?
開発責任者はポルシェ在籍経験あり
メルセデス-AMG GT Cクーペの開発責任者であるマーカス・ホフバァーは、ポルシェ勤務の経歴を持っている。911 GT3よりも、911ターボを好むという彼なら、このメルセデス-AMG GTに関して奥深い話をしてくれるだろう。
このクルマのキャラクターは、911ターボのそれを連想させるという。AMGに移籍する前に、ポルシェでエンジニアと共に911の車輛ダイナミクスに係る部門に従事していたホフバァーなら、それを見抜いているはずである。
911ターボのポテンシャルを知る為に、常に鞭を入れる必要はない。速いが、安定していて、余計な気遣いは不要である。今回、ホフバァーがわれわれに紹介してくれるクルマは911ターボではないが、それを思わせるようなクルマである。奇遇にも、今回、メルセデス-AMG GTレンジにCスペックが加わり、2ドアのGTレンジのラインナップがほぼ完成した。
クーペとオープンを選べる最上位モデル
足早に振り返ってみよう。GTはSLSに続き、AMGが100%造る2台目のクルマである。2シーターのクーペ、もしくはロードスターで、フロントにエンジンを搭載し、リアに位置する7速デュアル・クラッチ変速機を介して、後輪を駆動する。
503psのGTのベースモデルは、クーペかロードスターの選択が可能である。クーペのみで選択可能なSモデルでは、機械式に代わり、電子制御のLSDが備わり、パワーは522psにアップする。その上位に当たるのがCモデルだ。
ロードスターは導入済であるが、まずは500台限定のエディション50として、今回のテスト車である、£139,855(2047万円)のクーペが追加された。このモデルが売り切れた後に、557psを発揮する廉価モデルが、175万円安で導入される予定である。そして、最上位に位置するのは、584psを発揮する、クーペのみのGT Rである。このモデルは、AMGの911 GT3(又はターボ)に対する回答であり、その生産台数は限定されていない。
AMGは多分、GT Rのロードスターを造ることはないだろう。少なくとも、ホフバァーは、そう願っている。しかし、GT Cのシャシーは、クーペとロードスターで同じチューニングが施されていることを考えると、彼のアドバイスがなくとも、Rのロードスターは実現可能であることも彼は認識している。もし、それが実現したら、Sモデルが浮いた存在に映る。ラインナップの中で、唯一、ロードスターの選択ができないからである。
では、それは実現するのか? AMGは、ポルシェの新型モデルの導入の動向と、その市場の反応を、若干悔しがりながら注視しているように見受けられる。であるから、数カ月後には何らかの発表があるかもしれない。
キャラクターが明確なインテリア
話を911との比較に戻そう。AMG GTレンジは6車種を揃え、911のようにその存在を主張するのではなく、需要に則したラインナップで構成されている。ロードスターは、ライフスタイルを楽しむドライバー向けであり、Rまで昇華するモデルはシリアスにドライビングを楽しむドライバー向けに用意されており、それらはみな、同じ4.0ℓツインターボのV8エンジンと変速機を搭載する。
一方で、ベースモデルからハードコアなモデルであるRに至るにつれて、インテリアにはそれぞれのキャラクターに応じた変更が施されている。例えば、Rモデルにはハーネスが備えられ、ベースモデルの内装のフィニッシュはソフトな素材で行われている。とはいえ、その2車間に基本的に大きな違いはない。メルセデスの隙のないインフォテインメント・システムが美しく設置されたキャビンは、見栄えがいい上に、仕上げも素晴らしい。
センタートンネル上に設置されたボタンの数の多さは、若干目障りかもしれない。車輛の後方に腰掛け、郵便ポストの差入口のようなフロント・ウインドウから長いボンネットを眺めると、このGTは紛れもなくマッスルカーの雰囲気を持っていることを認識させられる。
大柄な車体にも関わらず、長身のドライバーには辛いが、このクルマのインテリアは友好的で、安らぎがあり、そして喚起してくれるものである。アルミ製の車体がそうさせるのかとも思うが、同じようなレイアウトを持つジャガーF-タイプでは、こうはいかない。
どんな感じ?
Rよりフレンドリーなマッスルカー
Cモデルは、GTレンジにおける上位に位置するモデルである。このモデルはRモデルのように、ワイド化されたリアトレッドを収める為にワイドボディを纏う。しかし、サスペンションへの変更は基本的に行われず、ワイドなホイールを装着することで対応している。そして、Rモデルにならいアクティブ・リアステアリングを装備し、多くの実戦装備を施している。
以前のほとんどのAMGは、直線では元気だが、コーナーでは若干の洗練をみせるに過ぎなかった。AMGは、ドイツ車のホットロッド・メーカーともいえたが、今日のAMGは変貌を遂げている。もちろん、直線では相変わらず快音を轟かせ元気一杯である。大人しくなったのではと心配する必要はない。
AMGのターボエンジンへの移行は、そのサウンドを犠牲にはしていない。低回転域では、パワートレインを伝わり突き上げるような感覚があり、積極的なドライビングモードを選択した時に、それは予測の付かない轟きを上げる。それは、アクセル全開時のアメリカン・マッスルカーのように高揚し、花火大会の大詰めのようなクライマックスを演出する。
ポルシェよりアストンに近いGTカー
これがGT Cの魅力の全てだとしても十分過ぎるくらいであるが、そうではない。このクルマが何であるかを教えてくれる序章に過ぎないのである。
フロントアクスルから比較的離れた後方にある着座位置に収まると、前方からの距離感を感じるだろう。しかし、この位置なら、コーナーの立ち上がりで一気に加速に移ることができる。フロントの様子をみながらリアを徐々に、というわけではない。
端的にいうとCモデルは、911というよりも、大きなアストンマーティンである。スポーツカーというよりも、グランドツアラーである。これは批判ではない、なぜなら、そういうクルマを造り、そう呼んでいるからである。
改善されたコーナリング特性
GTが導入された時、軽量ではあるが、軽い操舵感と長いフロントエンド、どこに行ってしまうかわからないリアサスペンションを抱えていた。このことをより明確に表現する人々は、ロール剛性に欠けると表現する。つまり、コーナリングの際、リアエンドは沈み込み、コーナリングの姿勢を保つことがままならないのである。リアが不安定であり、神経質なのである。
今年に入って、この問題を解決する為に、全てのGTモデルの後方のロールセンターを下げている。ベースモデルとCモデルをテストした限りでは、この対策は効果を得ているようだ。油圧式のステアリングは依然軽い。しかし、意識を集中させれば、そこから伝わってくるものもある。ギアレシオは高いが、長く、比較的重いこのクルマを俊敏に操舵する為には、仕方がないのだろう。
より自信を持ってコーナーに飛び込むことができるが、車体への攻撃性を危惧するのなら、ダンパーはソフトなモードがベストである。そして、これは、幅が広いクルマであり、更に今は、どっしりとした頼りがいのあるクルマでもある。Cモデルに装着された、絶大なグリップを保障するワイドなタイヤや、電子制御のLSD、そしてリアステア機能は、このGT Cをこれまで以上に、痛快なコーナリング・マシンへと変貌させている。
「買い」か?
熟成を極め、恐ろしいまでに万能
このクルマをおすすめする多くの理由があるが、AMG設立50周年を記念して造られるエディション50の生産終了後に導入される、通常モデルのGT Cを待つことをすすめる。言ってみれば、AMG GTの輝きが増す時がきたのである。
このクルマは、911のようなクルマではない。特にGTシリーズの持ち合わせているようなキャラクターではないが、それを目指しているわけでもない。このクルマには独自のキャラクターがあり、華やかであるが、落ち着いたスタイルで、物事をこなすのである。洗練度に磨きを掛け、熟成されたこのクルマは、魅力的であり、恐ろしいほどに万能でもある。
メルセデス-AMG GT Cクーペ・エディション50
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