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【なぜ撤回?】アキュラが日本上陸しない本当のワケ ブランド立ち位置、日米で違い

掲載 更新 3
【なぜ撤回?】アキュラが日本上陸しない本当のワケ ブランド立ち位置、日米で違い

15年前の日本導入発表、12年前に計画撤回

text:Kenji Momota(桃田健史)

【画像】アキュラ そもそもどんなクルマを販売中?【全ラインナップ】 全197枚

「北米、中国に続き、アキュラを2008年秋から日本でも展開する」

いま(2020年)から15年前の2005年、年末記者会見として12月20日に福井威夫社長(当時)は、明言した。

その3年後、2008年12月17の年末記者会見で、福井社長(当時)は「2010年を目途に導入を予定していたアキュラについては、昨今の環境変化に鑑み、計画を白紙に戻す」と、アキュラ日本導入を撤回した。

ここでいう「環境変化」には、大きく2つの意味がある。

1つは、2008年秋以降にアメリカを震源として起こった金融危機。いわゆるリーマンショックだ。

ホンダにとっての稼ぎ頭、北米市場での急激な販売低下が起こったことで、生産体制や今後の開発体制の大幅見直しが必要となった。そのため、日本でアキュラ導入をおこなうリソースを確保できない、ということだ。

もう1つが、日本市場での軽自動車と小型車への急速なシフトだ。同会見では、2~3年後に販売を目指す、フィットより下のスモールカーモデルの存在を明かした。これが、いまのNシリーズだ。

では今後、日本でのアキュラ導入はあるのだろうか?

レクサスがグローバルブランドとして、日本で新規市場を開拓し続ける中、ホンダはなぜ、アキュラ日本導入の可能性を示唆するようなコメントを発しないのだろうか?

「アキュラ=高級車」ではない

まず、あらためてアキュラとは何か?

筆者(桃田健史)は80年代からアメリカで活動しており、ホンダ関係者とは日米で量産車とレース関連事業を通じて定常的に関係がある。

アキュラは1986年にアメリカで生まれた。目的はホンダのアメリカ法人(ホンダ関係者間での略称:「アメホン」)主導によるグローバルブランドとして、新たなるホンダ価値の創造だ。

これは、「モノづくり」主体というより、「営業/販売/マーケティング」という、自動車事業の出口戦略を重視したものだ。

要するに、ホンダの稼ぎ頭であるアメリカで売れるクルマを「アメホン」主導で考えてみよう、ということだ。

アキュラ導入に際して、ホンダは本田技術研究所の研究/開発体制をアメリカ国内でも強化した。

その上で、そもそも「アキュラ=高級車」という発想がない。

背景にあるのが、アメリカにおけるホンダ・ブランドのイメージだ。

日本でのホンダは庶民派、小型車、レーシングスピリッツといったイメージだろう。一方、アメリカでのホンダのイメージでは、知的や先進性が優先する。

ここに、上質なスポーティ性を加えようというのが、そもそものアキュラ・ブランドの発想だ。

こうした日米でのホンダ・ブランドの立ち位置の違いによって、日本でのアキュラ導入には、そもそも高いハードルがある。

アメリカで成功した戦略 日本で通用する?

アキュラ・ブランドの普及で、「アメホン」が最初におこなったのは、インテグラ(後のアキュラRSX)やスポーツプロトタイプでのレース参戦だ。

80年代後半、カー&ドライバー、モータートレンド、ロード&トラックなど、自動車雑誌大手に、アキュラのレーシングカーの広告が頻繁に載るようになった。

「アメホン」の狙いは、こうした耐久レースが開催される全米各地の現場に、アキュラのディーラー関係者やユーザーを招き、バーべキューパーティをおこなうなどして、草の根的なブランド訴求をおこなった。

一方、インディカーではホンダ・ブランドを前面に出したが、レース開催地ではアキュラ関係者も併せて招待していた。

このような活動によって、アメリカではアキュラの認知度が徐々に高まった。

市場導入から10年ほど経った90年代後半では、一般的なアメリカ人にとって「アキュラのライバルはBMW」といったイメージが定着し始めていた印象がある。

こうしたアメリカで成功したマーケティング戦略が、果たして日本で通用するのかは、大きな疑問だ。

2005年末に2008年秋のアキュラ日本導入を示した、福井社長(当時)としても、日本ではアメリカとは違う形での、アキュラ・ブランド戦略が必要なことを、重々承知していた。

その時期に福井社長に直接話を聞いた際、そうした難しさを指摘していた。

ホンダ新体制 アキュラ日本導入の再検討は

2000年代に入り、ミドルサイズSUVのMDXが爆発的ブームとなった。また、セダンの売れ筋TLをTLX、レジェンドをベースとしたRLをRLXに改名するなど、三文字のモデル名称化によってブランドの統一性を強化した。

さらに、アキュラ・ブランドの頂点として、第2世代NSXをアメリカ生産し「アキュラはアメリカ生まれ」を社外のみならず、ホンダグループ内でも再確認した。

直近では、こうした「〇〇X」というブランド戦略の第一ステージが終わり、アキュラは次の一手に向けて力を蓄えている。そんなイメージがある。

だが、レクサスはもちろん、欧州プレミアムブランドや中国地場メーカーなど、アキュラっぽい商品イメージのクルマは世界市場で乱立している現状で、次の一手をどう打つかは、難しい経営判断となる。

そうした中、2020年4月1日から、ホンダの四輪事業は本田技研工業本社が本田技術研究所と完全融合した。ここには当然、アキュラに関する商品企画や研究開発が含まれている。

「アメホン」主導で、中国や世界各地に広がったアキュラ。

アメリカで生まれてから34年目。いま、アキュラの在り方を改めて問い直すべき時期となった。日本市場ので次世代アキュラ・ブランド展開の可能性は十分あるはずだ。

アキュラの「次の一手」に期待したい。

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みんなのコメント

3件
  • あきゅらかである
  • 同じ2005年の年末にクリオ、プリモ、ベルノとあった日本国内の販売チャンネルを翌年に一本化することも発表してるんだよね。そんな中、アキュラを3年後めどに構築ってその当時も?と思ったよ。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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