アメリカ・デラウェア州に位置するドーバー・モータースピードウェイで開催された2023年のNASCARカップシリーズ第11戦『ウルト400』は、土曜予選から日曜決勝まで雨に翻弄される週末となり、カップ決勝は4月28~30日の日程を飛び越え月曜順延による勝負に。
そんなイレギュラーなレースウイークは、ここを「準地元」と称する“トゥルーエクス・ファミリー”が席巻する展開となり、今季開幕前エキシビジョンを制していたマーティン・トゥルーエクスJr.(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)が、実に54戦ぶりの今季初優勝。そして土曜に辛くも開催されていたNASCARエクスフィニティ・シリーズ第10戦『A-GAME 200』でも、弟のライアン・トゥルーエクス(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタGRスープラ)が勝利を挙げるなど、兄弟で“ホームトラック”を制覇する感傷的な週末となった。
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土曜予選が降雨により早々のキャンセルとなり、独自の計算式を用いて日曜のグリッドを確定したカップシリーズは、前戦タラデガ勝者で今季2勝を挙げているカイル・ブッシュ(チチャード・チルドレス・レーシング/シボレー・カマロ)がポールポジションを獲得。そのまま夕刻のエクスフィニティ決勝が実施できるかどうかも危ぶまれる状況だったが、なんとか定刻にグリーンフラッグが振られた。
その200周勝負で主役を演じたのがニュージャージー州メイエッタ出身のライアン・トゥルーエクスで、両方のステージを制覇する勢いを見せ124周を支配。最終的にジョシュ・ベリー(JRモータースポーツ/シボレー・カマロ)に4.8秒差をつけ、エクスフィニティ・シリーズでのキャリア初優勝を飾った。
「すべてのファン、チーム、両親や家族とガールフレンド……僕を支えてくれた全員に感謝している」と、過去9シーズンと同様に今季2023年もパートタイム参戦のプログラムで臨んでいる31歳のライアン。
「残り20周で何かが起こるのを誰もが待っていたような気がした。ただただ神に祈ったよ『どうか、このまま何事もなく終わらせてくれ』ってね。トヨタGRスープラは本当に素晴らしいクルマだった。フラッグをくぐった瞬間はもっと感情的になると思っていたけど、ラジオで話すことさえできなかった。僕は感情的な男ではないけれど……この勝利は僕を疑ったすべての人に捧げたい」
■2本交換で逆転に成功
明けた現地月曜に、ファンもまばらなスタンドを前にスタートを切った36台のカップカーは、序盤を牽引したポールシッターのブッシュがまさかのピットエントリー速度違反を犯し、早々に隊列後方へと下がることに。
代わってステージ1を制覇したウイリアム・バイロン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)が決勝最多の193周をリードし、同じく98周で主導権を握ったロス・チャスティン(トラックハウス・レーシングチーム/シボレー・カマロ)がステージ2を獲り、この2台を先頭に最終ステージへ突入する。
ここで戦略面で動いたのがJGR陣営で、最終コーションでのピット作業を右側“ツータイヤ”としたトゥルーエクスJr.は、残り69周の時点で4本交換でフレッシュを装着したチャスティンを逆転。17番手スタートからついに首位浮上に成功する。
残り15周を切って王者ジョーイ・ロガーノ(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)が2戦連続でウォールの餌食になると、リスタート以降の7周で最後のバトルが勃発。しかしライアン・ブレイニー(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)とチャスティンを従えたトゥルーエクスJr.は、グリップに勝るライバルを抑え切りキャリア通算32勝目、2021年のリッチモンド戦以来となる勝利を手にした。
「信じられないような気分だ。僕らは集団に近づいていると感じていたし、それは確かだった。そこで何が起こるかを感じ、相談の上で“ツータイヤ”を選択してかなり良いリスタートを切ることができたんだ」と、待望のカップ戦勝利を手にした2017年チャンピオン。
「ここは特別な場所だし、僕の家族にとって良い日であり、ライアンが土曜日に勝つのを見ることができたのは本当に特別だった。彼は良い機会を得るために長い間懸命に働いてきたし、それをモノにしたのは真に素晴らしいことだ」と、弟とのビクトリー・サークルを共有した喜びを語ったトゥルーエクスJr.。
「一緒にいてくれたみんなにただ感謝している。僕らはこれができることを知っていた。僕らはラップをリードし、レースを支配できることを示してきたが、そのすべての要素が揃う必要があった。考えすぎず、今までやってきたことをやり続けなければならない、ってことだね!」
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