国産オフロード4WDの老舗モデル、トヨタ ランドクルーザーの受注が終了していたことがわかった。
当サイトの取材に、トヨタ広報部は「現行型のランドクルーザーに関しましては、販売店によって終了時期が異なるケースもございましたが、受注はすでに終了させていただいており、受注いただいたぶんの車両の生産を目下継続しております」とコメント。
現存する国産車では最も歴史が古く、約70年の歴史を誇る伝統のランクルの新型はどうなる? そして時代の過渡期を迎え、名門が抱える課題と未来とは?
文/渡辺陽一郎 写真/TOYOTA、編集部
【画像ギャラリー】今年で70周年!【計25枚】 歴代全ランドクルーザーを写真で一挙に見る!!
現行型ランクルはすでに受注終了で生産も3月に終了
日本車の最長寿ブランドとしては、1955年に初代モデルを発売したクラウンが有名だが、実際はランドクルーザーの歴史が少し長い。1951年に自衛隊の前身となる警察予備隊の要請に基づき、トヨタBJ型4輪駆動トラックが開発された。
この4輪駆動車は、通称「トヨタ ジープ」と呼ばれたが、ジープの名称はアメリカのウィリスオーバーランド社の登録商標になっていた。
そこで1954年に、トヨタ ランドクルーザーという正式名称に改めている。クラウンの登場はこの翌年だから、日本車の最長寿は、ランドクルーザーになるわけだ。
フルモデルチェンジが期待される現行型ランドクルーザー200系(販売期間:2007年~)
BJ型が登場した1951年から数えると、2021年はランドクルーザーの生誕70周年に当たる。この記念すべき年に、ランドクルーザー/200系はフルモデルチェンジを受けて、300系に刷新される予定だ。販売店に直近の情報を尋ねると、以下のように返答された。
「ランドクルーザーの受注は、2021年1月に終了した。ただし納期が長く、最後に受注した車両を生産するのは、2021年3月下旬になる」
「そうなると新型ランドクルーザーが本格的に生産を開始するのは5月頃だ。メーカーから新型ランドクルーザーの概要や発売のスケジュールは何も聞いていないが、おそらく4月中旬頃には、グレード構成や価格が分かって予約受注も開始するだろう」
「この後、5月に正式な発表と発売を行って生産も始まる。ランドクルーザーのプラドについては、今のところ通常通りの受注をしている」
5月発表!? 新型ランクルは伝統のV8廃止でエンジン刷新へ
現行型ランドクルーザーのパワーユニットは、4.6LのV8エンジン一本。新型では燃費規制強化などもあり、V8の廃止が濃厚だ
2021年3月中旬時点では、新型ランドクルーザーの概要は明らかにされていないが、悪路向けSUVの性格が変わることはない。60/80/100/200系と続くランドクルーザーの系譜を見ればわかるとおり、300系もLサイズの悪路向けSUVとして進化する。
ボディサイズは、現行型の全長:4950mm、全幅:1980mm、全高1880mm(ZXは1870mm)をほぼ踏襲する。これ以上大きくなると、取りまわし性が悪化するからだ。
逆に小さくなれば、室内も狭まり、ランドクルーザープラドとの違いが曖昧になる。現在のサイズは洗練されたものだから、大幅に変わることはない。
ボディサイズで変更を加えるとすれば、ホイールベースの拡大は考えられる。現行型の2850mmは、全長が約5mに達する後輪駆動をベースにした悪路向けのSUVとしては、少し短いからだ。そこで50mmほど伸ばす可能性もある。
新型ランドクルーザー300系(ベストカー予想CG)
フレーム構造のシャシーも刷新される。悪路走行における耐久性を保ちながら、軽量化を図り、サスペンションの取り付け剛性などを向上させる。舗装路における走行安定性と乗り心地も引き上げる。
メカニズムではエンジンの刷新に注目したい。現行型はV型8気筒4.6Lの自然吸気を搭載するが、新型はV型6気筒3.5Lのガソリンターボ、3.3Lのクリーンディーゼルターボに変更される可能性が高い。
V型8気筒エンジンは、環境性能を向上させる目的もあり、すでに新しいタイプは開発されていない。レクサスLSも、従来のV型8気筒から、V型6気筒3.5Lのツインターボとハイブリッドに変更されている。
それでもV型8気筒の人気は高いから、V8を搭載する現行型の中古車は、従来以上に高値になることも考えられる。現行型の売却価格も好条件になる。
新型ランドクルーザーのバリエーションは、現行型と同様に複数が用意され、シートの配列に、2列シートの5人乗りと3列の8人乗りを設定する。
ランクルに求められる使命は「生きて必ず帰ってこられること」
今後の発展としては、ハイブリッドの搭載も考えられるが、すべてのランドクルーザーに、このような環境対応のモデルを用意することは難しい。なぜならランドクルーザーは、海外では過酷な使われ方もしているからだ。
例えばデコボコが激しく、雨季には完全な泥道に変わるような場所では、究極的な悪路走破力が必要とされる。そこは一般的な乗用車との大きな違いだ。
新型ランドクルーザーに乗り替えて、いつも通っている悪路のどこかで立ち往生すれば、乗員に生命の危険が及ぶこともあるからだ。この重大性に比べれば、乗り心地、操舵感、エンジンの吹き上がりなどは些細なことだ。
ランドクルーザー70系(国内販売期間:1984年~2004年/2014年に期間限定で復活)
1984年に登場したランドクルーザー70系は、今でもオーストラリアなどで販売されている。これも同じ理由だ。開発者は次のように述べている。
「海外には、ランドクルーザーしか移動手段として成り立たない地域がある。このような用途で最も大切な使命は、必ず帰ってこられることだ。このような地域には、トヨタの販売店もなく、お客様が自分で修理機材や交換用の部品をそろえている場合も多い。だからランドクルーザー70系の生産を続けている」
必ず帰ってくるには、今までの実績が重要だ。フルモデルチェンジして機能が新しくなると、舗装路の走行性能、安全性、快適性などが向上する替わりに、帰ってくること、即ち生還が困難になる心配も生じる。
しかも、ユーザーが自分で点検や修理を行うとすれば、フルモデルチェンジされると、修理機材を刷新するなどの手間とコストも必要になる。そのためにランドクルーザー70系は、40年近くを経過した今でも生産を続ける。
70系に限らず、ランドクルーザーにはこのような性格があるから、一般の乗用車のようにすべてを刷新させるフルモデルチェンジは難しい。
そうなるとランドクルーザー300系の開発も慎重になるだろう。例えばエンジンは、基本的には前述の通りV型6気筒のターボとディーゼルに刷新するが、世界同時に変更するのは難しい。
過酷な使われ方でも故障を発生させない信頼性が重視される地域では、従来型のV型8気筒エンジン(地域によってはV型8気筒4.5Lツインターボディーゼルも採用されている)を使い続ける可能性もある。
クルマの使用環境は、乗用車でも地域によってさまざまだが、特に悪路向けのSUVは幅広い。ランドクルーザーでなければ生還できない用途から、4輪駆動システムすら必要とされない街中まで幅広い。ランドクルーザーは、そのすべてに対応する必要がある。
そうなるとパワーユニットも、地域に応じて異なる。日本のように際立った悪路が少ない地域では、次期型は発売当初からV型6気筒に切り替えて、将来的にはハイブリッドも用意できる。
海外の過酷に使われる地域では、パワーユニットは前述の信頼性が高い現行型を踏襲する。そうなるとプラットフォームは新旧両方のパワーユニットに対応する必要があるから、造り変えるといっても大幅な刷新はできず、それは過酷な用途に使われる地域のニーズに合っている。
過渡期迎える名門ランクル 日本では電動化も海外仕様とは棲み分け視野に
過酷な使われ方でも壊れないランドクルーザーの耐久性は、日本のみならず世界中で高い評価を受けている。世界累計販売台数は1000万台を超えた(2019年集計時点)
以上のようにランドクルーザーは、環境対応という意味では、遅れたクルマになるだろう。
もちろん環境対応は大切だが、それ以上に重要な「必ず帰ってこられる使命」を果たさねばならないからだ。それは使われる地域や国のライフラインであり、生活権を守ることにも繋がる。
日本では実感の沸きにくい事情だが、軽自動車を思い浮べればわかりやすい。税額、燃料代、価格の安い軽自動車は、公共の交通機関が未発達な地域において、生活権を守るライフラインとして機能している。
年金で生活する高齢者が、通院や買い物のために軽自動車を使うから、税金を今以上に高めることはできない。同じようなことが、過酷な生活の中で使われる海外のランドクルーザーにも当てはまる。
日本で見かけるランドクルーザーは、立派で豪華で格好良いが、この商品の本質はまったく異なる。
だからこそ、フルモデルチェンジや今後の発展も、前輪駆動ベースのシティ派SUVとは違ったものになる。日本ではハイブリッド、海外では電動機能や過給器を省き、故障因子を減らしたノーマルエンジンを搭載する発展も考えられる。
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