アストン マーティンに存在するQ部門
執筆:James Attwood(ジェームス・アトウッド)
【画像】アストン マーティン Q部門が手掛けたモデルたち 最新作のヴィクターも 全81枚
撮影:Olgun Kordal(オルガン・コーダル)
翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)
映画007の主人公といえば、ジェームズ・ボンド。通称Qと呼ばれる人物だ。そんな007でボンドカーといえば、アストン マーティンが真っ先に思い浮かぶ読者も多いはず。
その社内に、「Q」と呼ばれるビスポーク(特注)部門が存在することはご存知だろうか。サイモン・レーン氏は、その責任者を務めている。
ニューポート・パグネル工場でのワークス・テーラード部門を経て、アストン マーティンは2012年にQ部門をゲイドン本部に立ち上げた。映画007のように、独創的で冒険的で、人を驚かせるようなクルマを生み出すために。
Q部門は、大胆にモディファイされた特注モデルを製造するため、ライセンスを取得。ロイヤル・カスタマーの要望へ、臨機応変に対応している。
ワンオフ・モデルも制作可能
プレミアム・ブランドの多くが、同様の顧客サービスを提供している。しかし、Q部門の特長と呼べるのが、楽しさを感じさせるアプローチだろう。サイモン氏自身も、そう考えているようだ。
「対応可能な範囲では、競合ブランドの同等部門より、限界とする領域は広いと思います。つまり完全に1台可切りの、ワンオフ・モデルも制作は可能です」
現在のQ部門には、3種類のラインが用意されている。Qコレクションは、標準のアストン マーティン向けの特注部品やオプションの製作。Qコミッションは、カラーやトリムを中心に、より自由度の高いカスタマイズを請け負ってくれる。
そして、最も自由度が高いのがQアドバンスド・オペレーションズ。「用意されているメニューとは、まったく異なるモノが欲しい、人とはまったく違うコトがしたいというお客様向けです」。とサイモン氏は説明する。
実際、完全に別注のパワートレインからボディワーク、フルカスタマイズの車両まで、領域は多岐に渡る。今回はジェームズ・ボンドも羨むような、最高レベルの6モデルを紹介したいと思う。AUTOCAR流の、特別ミッションだ。
ヴァンテージ V600
1999年に少量生産された、当時世界で最もパワフルな量産車でもあったヴァンテージ V600。そのアストン マーティンをトリビュートし、2018年に制作された特別モデルが存在する。もともとは、1人の顧客による依頼がきっかけだったという。
「当初は、オリジナルのV600をベースにしたマシンが欲しいと、彼は話していたんです」。とサイモン氏が振り返る。「われわれは、量産モデルと同等のテストを経て、特注モデルの部品制作を行います。極めて高価になりかねません」
「彼は開発費用を負担し、ほかの購入希望者を見つけるのを手伝う、と話していました。開発からテストまでのコストを、7台のクーペと7台のコンバーチブルで分割できる可能性を意味しました」
その結果、最後にVHプラットフォームを使用した特別な14台が完成した。自然吸気のV型12気筒を搭載する、最後のヴァンテージにもなった。ボディは1999年当時のV600を彷彿とさせる姿へ、大幅に作り直された。
ドアとルーフ以外のボディは特注
サイモン氏が続ける。「お客様は、カーボンファイバーを用いた特注ボディを望んでいました。通常のヴァンテージと同じボディパネルは、ドアとルーフのみ。オリジナルのV600へリンクするデザインが施されています」
「サイドシルの形状はもとのままで、本物のコークボトル・ラインが生まれました。ボンネットの膨らみは、オリジナルを彷彿とさせますね」
ブラックアウトされたフロントグリルも特徴だろう。もちろんインテリアも大幅に作り直され、カーボンのセンターコンソールと、軽量なシートが組まれている。
「最初に製作したクルマで多くのテストを実施する必要があり、非常に高コストの仕事になりました。1台のビスポーク・モデルでの実現は難しかったでしょう」
「しかし、少量生産での限定モデルなら、賢明な価格でお客様に提供できます。ほかのお客様の獲得も可能だと、示した例ともいえます」
ヴァンテージ 007エディション
アストン マーティン・ヴァンテージ 007エディションは、映画007、ノータイム・トゥ・ダイのタイアップで制作された限定モデル。1987年の007リビング・デイライツへ登場する、ヴァンテージV8へのオマージュとなる。
007エディションのベースは、もちろんヴァンテージ。カンバーランド・グレーと呼ばれるボディ色のほか、多くのディテールが盛り込まれている。その中でも、メッシュグリルは特別な技術が必要な部分だったという。
「レーザーカットを用いて切り抜いたグリルで、オリジナルと共通するディテールです。ヴァンテージのグリルは小さく、取り込むべき空気の量はもともと限界の手前。かなりの技術開発が必要でした」
「エンジンへ充分な空気が送られるように、毎秒何リットルの空気が流れるのか計算してあります」。とサイモン氏が説明する。
専用オプションのスキーラック
ディフューザーのオレンジのストライプも、リビング・デイライツでの特殊装備をイメージさせる。車内を覗くと、センターコンソールに007のロゴがあしらわれている。
映画の登場マシンと同様には機能しないが、特殊装備のスイッチパネルも付いている。シートは、1987年のヴァンテージV8に似せた仕立てを採用。カーボンファイバーで作られたリアシートもある。
リビング・デイライツでは雪山のシーンで格納式スキーが活躍するが、専用オプションを設定することで、ファンの心をくすぐった。「開発予算内では、クルマから展開可能なスキーまでは難しいものでした」
「そこで、同配色のカスタム・スキーを設定。クルマの後部へ吸盤で取り付けられるスキーラックを用意したんです」。このアイテムは支持を集めた。007エディションを注文した人の60%ほどが、スキーラックのオプションも選んでいるそうだ。
V12 スピードスター
屋根もフロントガラスもないV12 スピードスターは、Q部門がこれまで作り上げたクルマの中で、最も過激な1台かもしれない。ベースとなったのは、ヴァンテージ・ロードスターとDBSスーパーレッジェーラだ。
エンジンは700psのツインターボV12で、サイモン氏ですら「孤高のクルマ」だと話す。「プロトタイプを5台制作しました。2台は衝突試験用。88台の限定ですが、製造過程が通常とは大きく異なり、(すべての台数を仕上げるのに)1年が必要です」
「工場のラインを流れるのではなく、大きな専用エリアで作られます」。と説明するサイモン氏。英国価格は76万5000ポンド(1億1628万円)。デザインは戦闘機からインスピレーションを受けたというが、仕上げは顧客に応じて変わるという。
F/A-18ホーネットにインスパイア
ジェット戦闘機のマクドネルダグラスF/A-18ホーネットから発想を得たものや、アストン マーティンDBR1を彷彿とさせるものまで、トリムの設定は幅広い。
「V12 スピードスター自体も独自性の強いクルマですが、本当に特別なオプションを用意しています。古いアストン マーティンから戦闘機まで、デザイン・モチーフは様々。われわれの想像力を、本当の意味で解き放つものといえますね」
V12 スピードスターの発表時に採用されていたテーマは、F/A-18ホーネットにインスパイアされたもの。ブラックのエグゾーストとグリル、赤いドアハンドルが見た目の特長。インテリアも、ダーククロームとマシン仕上げのアルミトリムが効果的だった。
「パッケージの設定は楽しい仕事でした。ですが、お客様はわれわれと同じくらい独創的でもあります。88名の方それぞれへ多様な選択肢を提示し、トリムパッケージを選んでいただきました」
「お客様の中には、独自のアイデアをお持ちの方もいらっしゃいます。2台とない仕立てのクルマが完成するでしょう」
この続きは後編にて。
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