1月15日、ゼネラルモーターズ・ジャパンは、キャデラック初のコンパクトSUVである「XT4」の日本仕様を発表した。実車を見た今尾直樹の感想は?
ライバルはレクサスNXなど
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2021年1月15日土曜日、都内某所でGMジャパンがキャディラックの新型車3台の日本仕様を披露した。繰り返しになるけれど、一挙に3台も。大型SUVの新型「エスカレード」、「CTS」の後継の「CT5」、そしてキャディラック初のコンパクトSUV、「XT4」である。これら3台を眺めながら、いよいよもってこれまでのキャディラック像、アメリカ車像というものを変えなければならない、と筆者も思った。
ま、筆者の描いているキャディというのはテールフィンであり、アメ車というのは大きくて豪華で派手で……というふた昔以上も前のイメージなのですけれど。
で、GMジャパンが発表した3台のなかでもっとも売れると見込んでいるのがXT4であることは当然だろう。「オータムメタリック」というオレンジ色に輝くXT4はご覧のようにスタイリッシュで、しかもひと目でキャディラックとわかるデザインをまとっている。
ちなみに、セダンをCT、SUVをXTのアルファベットの組み合わせで示し、その後ろの数字をくっつけて大・中・小であらわす新しいネーミングは、フロント・マスクの両サイドを細くてシャープなデイタイム・ラニング・ライトで飾る、キャディラック共通のデザイン言語とともに、2015年発表の「CT6」と「XT5」から始まった。これらに続いて2018年早々にSUVの最小モデルとしてデビューしたのがXT4で、同じ年の秋から本国で発売されると、たちまち人気モデルのひとつになった。
「GMオーソリティ」というブログによると、米国市場では「ラグジュアリーCセグメント・クロスオーバー」に分類されており、2020年の第3四半期の販売台数は、第1位のメルセデス・ベンツ「GLA&GLB」、2位のアキュラ「RDX」、3位のレクサス「NX」、4位ビュイック「エンヴィジョン」、5位アウディ「Q3」、6位リンカーン「コルセア」に続いて、第7位に数えられている。すぐ下にはBMW 「X1」、「X2」の名前があり、GLAとGLBがどうして同一モデルと数えられているのか、なのになぜX1とX2は別々なの? などの疑問もあるけれど、あくまで参考としてこの統計を見るならば、筆者も知らないモデルがいくつか混じる競争激甚なマーケットにおいて、XT4はなかなか健闘しているといえるのではあるまいか。
成功の要因のひとつは、そのサイズにあると思われる。全長×全幅×全高=4605×1875×1625mmと、同じエンジン横置きのプラットフォームで比較すると、ボルボ「XC40」よりは大きいけれど、「XC60」よりはちょっぴり小さい。2775mmのホイールベースは、XC40の2700mmとXC60の2865mmの中間に位置する。
全長に比してホイールベースが長いのが特徴で、それはレクサスNXと較べると一目瞭然だ。XT4はNXより35mm、ボディが短いのに、ホイールベースはNXより115mmも長い。ま、NXのホイールベースが短い、ともいえるわけですけれど。
エンジンは新設計の2.0リッター直列4気筒ガソリン直噴ターボで、最高出力230ps、最大トルク350Nmを発揮する。これはレクサスNX300やメルセデス・ベンツGLB250 4MATICなどと同等の数値だから、スポーティなユニットであることが期待できる。燃費対策として、2気筒お休みする可変気筒休止システムを備えてもいる。
ギアボックスは9速オートマチック。駆動方式は、本国ではFWDもあるけれど、日本仕様はAWDのみとなる。このAWD、状況に応じて後輪へのトルクの伝達をカットし、燃費削減に貢献する。
日本仕様の詳細
見たところ、ま、見ただけですけれど、ボディ内外のクオリティはきわめて高い。展示車両はグリルとルーフレール等が黒塗りとなり、20インチのホイールを履く「スポーツ」だったけれど、とりわけ内装の出来栄えに筆者は正直、驚いた。オーソドックスではあるものの、いや、だからこそ、ヨーロッパのラグジュアリー・ブランドのようなオーセンティシティを感じさせる。雑駁なつくりだったアメ車のイメージはどこにもない。
しかも、装備類の充実ぶりには目を見張る。スポーツ・レザー・ステアリングはステアリング・ヒーター付きで、本革シートには前後共にシート・ヒーターが付いている。運転席と助手席は8ウェイの電動で、ベンチレーション・システムにマッサージ機能まで標準装備している。
ナビゲーションはつねに最新の地図情報を正規ディーラーでストリーミングできるそうで、センター・コンソールにはワイヤレス・チャージング機能も備わる。BOSEの13スピーカー・システムも標準だし、「お・も・て・な・し」はいまや日本だけのお家芸にあらず。世界中のラグジュアリー・ブランドが共有していると考えるべきなのかもしれない。
もちろんアダプティブ・クルーズ・コントロールやレーン・キープ・アシストといった運転支援システムも充実している。
日本仕様のXT4は前述したようにすべてAWDで、左ハンドルのみ。装備等の違いで3モデルがあり、価格は「プレミアム」という名のベース・モデルが570万円、「スポーツ」が640万円、最豪華仕様の「プラチナム」が670万円と発表されている。
変革の結果
たとえば、ボルボXC40のAWDは499万円から、XC60は639万円からで、キャディラック陣営としてはそのニッチを突く、という戦略なのだろう。レクサスNX300のAWDの最豪華仕様“version L”は548万3000円だから、それよりちょっと高いけれど、同じエンジンを積むRX300、AWDの“version L”の642万円となら、価格競争力も十分ある。
それにしても、あのキャディラック、富の象徴がレクサスNXとかアキュラRDXとかのライバルをつくるようになるなんて……。思えば、遠くにきたものである。
あれは4代目「セヴィル」に4.6リッターV8“ノーススター”エンジンが搭載されたときだから、たぶん1993年のことだ。アメリカはモンタナ州のイエローストーン公園で開かれた試乗会にたまさか参加させてもらったのが、筆者の初キャディラック体験で、思い出すなぁ、夕食にバイソンの肉が出てきたことを。
「これは夕べ、交通事故に遭ったヤツなんだ」とGMのひとが楽しそうに言っていた。バイソンが保護の対象であることを筆者は知らなかったので、なにが面白いのかわからなかった。
印象的だったのはキャディラックのエンジニア諸氏が真摯に日本からやってきたジャーナリストたちの声に耳を傾けていたことだ。1902年創業の名門キャディラックは、1990年代の初めにはメルセデス・ベンツやBMW、そしてわがニッポンのレクサス等にマーケットを侵食されており、大いなる危機感を抱いていた。「“ワールド・クラス”のクルマをつくる」と何度も語り、技術と威信を保つために積極的に輸出をしようとしていたのだった。
あれからはや30年近い歳月が流れ、いまや世界市場で通用するコンパクトSUVをつくるにいたった。これが日本でも成功するかどうかはさておき、筆者は次の一節を贈りたい。
「むかし聖ドゥニ〈パリ最初の司教。西暦272年に首を切られたー訳注〉が切り落とされた自分の首を手にかかえて6kmの道を歩いたという伝説がある。これに関してデファン侯爵は、距離など問題ではない。むずかしいのは第一歩を踏み出すことなのだと評した。これと同様に、ミニマイナーについて評すべきことは、それが1959年6月以来100万台以上も生産されたという数ではなく、それがとにもかくにも生産に移されたという事実なのである」(『ミニ・ストーリー 小型車の革命』(ローレンス・ポメロイ著/小林彰太郎訳/二玄社)の序章の冒頭より)
キャディラックはとにもかくにもむずかしい第一歩を踏み出した。XT4について評すべきことは、それが生産に移されたという事実なのである。ということを申し上げたかった。
文・今尾直樹 写真・安井宏充(Weekend.)
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みんなのコメント
この記者も、少なくとも50代半ば以上の年齢だろうに、20代のバイト記者レベルとの区別つかんよ。